ストーリーに興味が失せる何でもありの展開。ギャグと下ネタを逃げ道にするシナリオ。打越鋼太郎はもう仕事に飽きたのでは?『AI: ソムニウム ファイル』レビュー

打越鋼太郎によるシナリオのゲーム「AI: ソムニウム ファイル」。プレイ途中でギブアップ、…というかプレイする価値がないと感じてゲームを終えました。

生きている間に左目をくり抜かれて殺されるという一連の事件を捜査する警視庁特殊捜査班の一人が主人公です。

パートナーは主人公の左目に義眼として入っているAI。このAIのおかげで主人公は左目が見えたり、左目の映像の上にAIによる映像を重ねられます。このAIと掛け合いをしながら事件を追っていくことになります。

基本的には選択肢を選んでいくゲームですが、たまにクイック・タイム・イベントが入ったりします。

楽しめた度

ストーリー進行がロックされていて事件の核心に迫る前に飽きた

エンディングには4つほど到達したものの、事件の核心に迫れませんでした。というのもストーリー進行にロックがかかっているからです。

他のサブストーリーのエンディングに到達しないと本筋のルートには先に進めません。それぞれのキャラクターの個別ルートのエンディングを見て回ってから、やっと本筋に入れるらしい。

この種のロックがあるゲームはサウンドノベルなどで見かけますが、ストーリーの全容を知るまでにとても時間が掛かるため、ストーリーが魅力的で無いと途中で飽きてしまいます。

ということで飽きてしまいました。

脳にダイブするゲーム部分がストーリーを歪ませている。全員嘘つき

このゲームの世界では人の脳にダイブでき、その人の夢の中に入れます。その行為を「Psync(シンク)」と読んでいます。

ゲーム中では「夢の中に入る」という言い方ですが、脳にダイブされている側は「夢」を覚えていないとのことなので、夢なのかよく分かりません。

「Psync」はこのゲームのゲーム性のある場面で、通常時のテキストを読んで選択肢を選ぶのとは変わります。夢の中に入り込んで移動してアイテムに対してアクションを起こせます。

まぁそういうことができるのは良いのですが、これがあることによってストーリーが歪んでいます。

登場するキャラクターたちが全員嘘つきなのです。

キャラクターたち全員が真実を言わず嘘をついていて、「Psync」で心の深層を確かめるというパターンとなります。

このゲームの特徴である「Psync」をさせたいが為のシナリオ展開になってしまっています。

実にアホらしい。

会話が嘘ばかりなのだから会話は無駄で、「やぁこんにちは」と挨拶をした直後に麻酔銃で眠らせて「Psync」すれば良いじゃん。

ちなみに「Psync」で見えたものは「夢」という前提なので全て不確実です。正しいのか分かりません。証拠としての能力は持ちません。

ゲーム部分の「Psync」は選択肢を総当たりする必要があり、ゲームとして不成立

「Psync」で人の夢の中に入った後は、6分という制限時間で、夢の中の探索と記憶を呼び起こす障壁になっているモノを解く作業となります。

夢なので何がどう作用するか分からない。現実世界と同じ物理的・化学的な因果関係などがありません。

例えば上のスクリーンショットの場面では遊園地が舞台で、写真に刺さっているアイスピックを引き抜くと、スピーカーが付いている柱が上に伸びていくという関係です。

他にもパンダの乗り物の頭が回転していて、目の前にあるメリーゴーラウンドの回転と速度が同じという関係。パンダの頭を抜くなどして回転を止めるとメリーゴーラウンドの回転も止まります。

このように因果関係が分からないので、「Psync」の夢の中で何をどうすれば良いのかプレイヤーはほぼ判断が付きません。ここはゲーム部分なので選択肢によって残り時間が減っていくのですが、なんとも理不尽なデザインです。

夢の中で起こすアクションには選択肢が大抵3つあるのですが、1~2つはギャグです。

ギャグみたいな選択肢が正解の選択肢であることもあり、プレイヤーにはどれが正解か分からないため、片っ端から選んでいく総当たりになります。失敗したら最初からやり直し。

これはもはやゲームでは無いです。

シリアスな場面でのギャグと下ネタが興醒め。ピンチは下ネタで切り抜ける何でもありの展開

ゲーム中は打越鋼太郎によるくだらないギャグと下ネタが満載です。下ネタはエロい言葉を言わせる系や、エロを匂わせるネタが多い。

これは「Zero Escape」シリーズのレビューでも書きましたが、気分が明るい場面なら多少は許せますが、シリアスな場面では興醒めです。本当に。

「極限脱出」第1作目は緊張感があって脱出を楽しめたが、第2作目はプレイを続けるのが苦痛『Zero Escape: 9時間9人9の扉』『善人シボウデス』レビュー
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打越鋼太郎氏は昔からシリアスな場面でギャグや下ネタを繰り返しています。これが本当にくだらないことに気付いていない。周りの人は誰か諫言した方が良いんじゃないでしょうか。

知り合いが死んだ後の事故現場でやっと緊迫感が出てきて面白くなってきたのに、そこでギャグや下ネタを発せられると急に興が醒めます。打越鋼太郎さんは「興醒めシナリオライター」を目指しているのかもしれません。

例えば、銃を持った人たちに囲まれるシーンがあります。友人が死んだ後の捜査です。

主人公は一人なので普通に考えればもう死にます。

そこに助けが入ります。

わー、知り合いの子供が鉄パイプを持って突っ込んできた。鉄パイプで大人をなぎ払っています。この子供は身体能力が優れているという設定です。キックで木を倒せます。

既におかしな設定とはいえ、銃にはかなわないはずです。何で死なないんだろう…? 普通なら一瞬で撃たれて死ぬはず。

主人公は「エロ本」と叫んで高速移動。エロ本のことを考えると人間の限界を超え、3.6倍の速さで動けるらしい。

なんだこれ? 何でもありならストーリーを見ていく必要は無いなぁ。

友人が死んだ後の捜査シーンですけど、これ笑えます? 面白いですか? そういう人ならこのゲームを楽しめると思いますが…。

マルチプレイのゲームでチートをする人がいますが、あれと同じですね。制約・仕組み・ルールの中で戦っているのに、一人だけGODモードならもうどうでも良いよ。

嗚呼「Ever17」は素晴らしかったなぁ

楽しめた度

打越鋼太郎氏のシナリオとしては私は「Ever17」がとても好きです。

たまに「Ever17」の目の数理論を人に話すことがあります。

「STEINS;GATE」には全然敵わない。妄想展開と嘘展開にゲンナリ。静かに隠れている場面ではもう大声で叫ばないで『CHAOS;CHILD』レビュー
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Ever17」は途中で「えっ、一体どういうこと?」と思わせる天地がひっくり返ったような強烈な違和感を与えられるシーンがあるのですが(鏡を見るシーン)、あれは本当に素晴らしかったです。

Zero Escape シリーズなどでも感じましたが、最早あの頃の打越鋼太郎さんはいないのかもしれません。

世界をしっかり構築せず、ギャグや下ネタを言い訳にして逃げ道を用意し、プレイヤーに「ゲームにマジになってどうするの?」と言っているかのようです。

事件は左目をくり抜くシリアルキラーということで興味が湧いて真相を知りたいのですが、何でもありのストーリーなのでリアルさを感じられなくなりました。

このゲームは連続殺人を追う重い話なのに全体的にギャグとして作られています。何もかもがギャグでファンタジーです。

この興醒めなギャグシナリオを見るに、もしかしたら打越鋼太郎さんはシナリオライターという仕事にもう飽きているのかもしれません。「ゲームのシナリオってこんなもんだろ」と。

でも、敢えて「ゲームのシナリオってこんなもんだろ」ということをプレイヤーに示すことでゲーム全体を批判している可能性もあると考えましたが、考えすぎですかね。

頑張って作ったシナリオのゲームがあまり売れなかったとか、力を抜いたゲームの方が売れて虚脱感を感じているとか、そういう経験をしたのかもしれません。

ともかく、このゲームは事件の真相を知る前にギブアップです。シナリオに興味が保てません。真相エンディングまでプレイしなくていいやと思ってしまいました。

「Psync」のゲーム部分は面倒なだけですから、完全に選択肢を選ぶだけのビジュアルノベル(サウンドノベル)だったら最後までプレイできていたかもしれません。

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About

Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。

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