
UMAオカルト研究家の中沢健が主軸になって作った映画「オカルト地蔵」が面白かったです(公式サイト)。Prime Video で観られます。
たぶんC級の映画とはなりますが、この映画の良いところはそのC級感を隠さないところです。
オカルトのバラエティ番組に短編映画を挟んだような構成になっていて、映画を観ているというよりもバラエティ番組を見ているようで気楽に観られます。
C級感を隠さないのが面白い
映画の最初に、中沢健や映画プロデューサーの唐澤一路が「お地蔵様を主役にしてホラー映画を作って大丈夫でしょうか」とお寺の住職に相談した時の映像から始まります。住職は「大丈夫ですよ」と。
「びっくりするぐらい予算がなくて」という話が何度も出てきます。たまたま他の映画で使われた小道具のお地蔵様を借りられたので、これを使って映画を撮ることに決めたようです。
なので観ている側もしっかりした映画を期待しません。作っている側もA級のフリをしません。
ホラー映画やオカルト映画を観ていると、A級のふりをしたC級作品が結構ありますが、それが視聴者としては最悪の状態です。
私はホラー映画が好きで Prime Video(ホラー映画カテゴリー)などで結構観ていますが、ホラー映画は有名なもの以外は内容が酷いものが多いです。時間の無駄とまでは言いたくないのですが…。
清水崇の「~村」シリーズ(「樹海村」「犬鳴村」「牛首村」など)はまた動画配信・SNSで始まるストーリーかとがっくりしますが比較すると内容が良い方で、「テケテケ」「テケテケ2」「クネクネ」「高速ばぁば」「口裂け女」「ミンナのウタ」「クロユリ団地」とかを観ると下には下があるのだなぁと分かります。
比較すると「きさらぎ駅」とかも良く出来ている方です。あくまで「比較すると」であって、近年はすごく良い日本のホラー映画というのにあまり出会えません。
良質な日本のホラー映画はかなり貴重で、「クリーピー 偽りの隣人」はストーリーがよく分からないという人もいますが、チープさがなく、質が良い方のホラー映画です。家の構造がテーマのホラー。
最近の日本のホラー映画を鑑みると「リング」は凄かったですね。誰もが知っているほど有名になる日本のホラー映画が今はありません。
その「リング」の監督である中田秀夫が「クロユリ団地」を作ったとは驚きです。凄くつまらないです。「リング」は監督ではなく原作が良かったのかも。
この「オカルト地蔵」は最初からC級ぐらいかなと思わせて始まるので騙しがありません。
安っぽい演出を観ても仕方がないよねと許せますし、むしろ安っぽい演出が面白いです。
でも安っぽい演出に甘んじていません。「お金があればあの演出をやりたかったんだな」と分かり、近づけるために頑張っているなと感じます。
映画が終わると、映画が上映された会場(シネマハウス大塚)での中沢健とイラストレーターの祇園百とのトーク場面があるのですが、そこで中沢健が「脚本は王道にした」と話しています。
これは有名ではないホラー・オカルト作品を観ている人だと分かりますが、確かにその手の作品では良くあるストーリー展開でしっかり作られています。
低予算なので小道具や演出にはお金をかけられないのですが、ストーリーの展開ならお金をかけずに作り込めます。
この映画で実際のところどのくらいの金額が掛かるのでしょうか?
地蔵への配慮を見せて世間の非難を避ける
たぶん世間的な非難を避けるためだと思いますが、お地蔵さんに結構気を遣っているのが見て取れます。
映画の最初で「お地蔵様をホラー映画にしても大丈夫か」「お地蔵様を呪物にしても大丈夫か」と実際に住職に相談している訳ですから、映画を観た人がここを非難するのを牽制しています。
この部分の映像がない場合、映画中で地蔵が襲ってくる場面を観た視聴者がよく分からない道徳観を発揮して「お地蔵様という尊いものが人を攻撃するとは何事か」という変な批判をする人が出てくるかもしれません。
最近こういう人が多いですから、気を遣ったのでしょう。
お地蔵さんはホラーや怪談のテーマになっていることも多いのでそんなに気にしなくても大丈夫だとは思うのですが。確か、童話で笠地蔵の笠を取ったらお地蔵さんが仕返しに来たという話があったような…。
また他にも配慮があり、映画中で地蔵は実は○○だった、ということも分かります。これは脚本を書いた中沢健の趣味なのか分かりませんが、これも世間の非難を避ける効力があります。本当の地蔵ではないということですから。
さらに、スタッフロールに「お地蔵様」と載せていますし、Prime Video のページには出演者の欄のトップに「お地蔵様」と表記されています。
地蔵と世間にかなり配慮しているのが分かります。
映画制作の裏話を聞けて満足度が高い
映画というよりはバラエティ番組と言える構成で、住職への相談、仲間への相談、短編映画が2つ、怪談、映画の後のトーク、除霊の儀、とかなり色々と詰め込んだ内容になっています。
でもこれが意外と良くて、それぞれの映像の時間が短くて集中力が途切れる前に切り替わりますし、映画の裏話も聞けますし、私としては満足度が高かったです。
私はホラーやオカルトの番組が好きなので見ていますが、そこで結構見かける人がこの映画にいて、知っている人が頑張って作ったんだなぁという親近感がありました。
1つ目の短編映画で「あれ、この人見たことあるなぁ」と考えていたら猥談家の住倉カオスでした。
映画の裏話を聞けるというのは面白く、「怪談のシーハナ聞かせてよ。」でも感じたのですが、この番組では怪談をただ聞くだけでは無くて、怪談を聞いた後にこの話はこの部分が不思議だったとかを皆で話します。

この皆で意見を言い合うというのが面白く、怪談の怖さを1人で抱えなくていいので安心できます。
これと同じように、「オカルト地蔵」も作った人と観た人の考えを聞けるので、そこが面白かったです。
映画の裏話として面白かったのは、予算が無いと照明が無いという話。オカルト関連の映画・ドラマは予算が無いため、以前から脚本を書いていた中沢健は「照明が無いから屋外のシーンを脚本に入れるな」と言われていたらしいです。なるほど。
現時点では Prime Video でプライム会員は無料で観られて私もそれで観たので良いのですが、映画館で観た人は何千円か払ったわけです。
その金額分を楽しめるかと訊かれると、「うーん」と困ります。中沢健は公平な判断をしていて映画観でのトークで「『ゴジラ-1.0』を観た方が良いですよ」と言っていました。
でも公式サイトで「オカルト地蔵」のDVDも販売されていて、4,600円で売り切れ状態です。欲しい人が意外といたようで、制作費は回収できたのかな?
私は中沢健という人は結構前にビートたけしのオカルト番組に出ていたので知っていましたが、話しているのを聞くと真面目な人で謙虚な(引っ込み思案な)ところがあって、優しい人柄が出ています。
中沢健が「オカルトマニアの人たちは話が下手」と言っていましたが、確かにそうかもしれません。オカルトの世界観と一般の冷笑系との考えのギャップをある程度客観的に見られる人が話すと伝わりやすそうです。
最近 Prime Video で見つけたのですが、中沢健は「こちらオカルト超常研!」「こちらオカルト超常研!ZERO」という番組も主催しています。
こちらも面白かったです。オカルト系のバラエティ番組が好きな人にはお勧めします。
昔のTV番組はみんなでオカルトのことを賛成派も反対派もわいわい話していて面白かったのですが、最近はそういう番組がなくて寂しいです。
私はビートたけしの番組が好きでした。超常現象研究家の韮澤潤一郎と早稲田大学の大槻義彦教授が言い合っているのを見てニコニコしていました。
なお、気楽に観られるオカルト系バラエティ番組としては角由紀子(TOCANA総裁)の「すみっこオカルト研究所」もお勧めしておきます。