「search/サーチ」の監督による代理ミュンヒハウゼン症候群を描くスリラー映画『RUN/ラン』が面白かった。主人公が頭が良くて行動にストレスがない。実際にあった事件でその詳細を知るのも面白い

2022/12/12

search/サーチ」はSNS時代のスリラー映画としてかなり楽しめました。その監督の「RUN/ラン」という映画が面白かったです。

RUN/ラン」は最近 Amazon Prime などで見放題になったようで、おすすめに上がっていました。ジャケットが格好良くて興味が湧いて観てみました。

ジャケットが悪かったら観ていなかったかもしれません。ジャケットは重要です。

楽しめた度

ストーリーは素直な展開で、じわりじわりと2次曲線的な緊迫感

映画『RUN/ラン』公式サイト

郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつき慢性の病気を患い、車椅子生活を余儀なくされている。しかし常に前向きで好奇心旺盛な彼女は、地元の大学進学を望み自立しようとしていた。そんなある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑のカプセル。クロエの懸命の調査により、それは決して人間が服用してはならない薬だった。なぜ最愛の娘に嘘をつき、危険な薬を飲ませるのか。そこには恐ろしい真実が隠されていた。ついにクロエは母親から逃れようと脱出を試みるが……。

喘息、糖尿病、下半身の麻痺など生まれつきの病気を患っている娘の世話をしっかり行う愛のある母親。良い家族だなと思いながら観ていくのですが、娘のクロエは母に処方された薬を自分が飲んでいることに気付きます。

ここからはまぁよくあるストーリーではあるので展開が分かってしまうとは思いますが、この映画の良いところは緊張感の高まりがじわじわと緩やかで、急な緊迫感がやってきません。

大抵のスリラー映画は、緊迫・緩和・緊迫・緩和を繰り返すのですが、この映画は2次曲線的に緊迫感が高まります。緊迫感の扱いがうまいです。

展開も素直で丁寧なのでのめり込めます。分かりにくい映画ではありません。

最初からクロエ頑張れと応援しながら観ていました。何とかしてこの母親を殺せ、と。

主人公のクロエが頭が良くて観ていてストレスがない

クロエは足が動かないし、喘息などで体の動きに制限があるのですが、頭が良いです。「頭が良い」と言葉で説明するのでは無く、頭が良いのが行動に出ます。

映画やドラマで良くある、馬鹿な行動をしてストーリーが進んでいくイディオットプロットではなく、傍観者である視聴者がこの状況だとこうすれば良いんじゃないかと考える行動をしてくれますし、たぶん想像を超えてきます。

映画序盤で、薬のケースのシールの上に、クロエの名前のシールが貼り付けられているのを発見。薬の名前は「トリゴキシン」。

で、こっそりそれを調べてみようとするのですが、何故かパソコンがインターネットに繋がっていない。かかりつけの薬局に訊こうと電話するのも自宅の番号が通知されてしまい、電話したことが母親にバレてしまうため即切り。クロエはスマホを持っていません。

どうしようか…。

この主人公の娘が頭が良くて、適当な電話番号に掛けてその人に検索をお願いします。見事。

この後、娘の行動が普段と違うので母親は娘が怪しんでいることに気付き、娘を部屋に閉じ込めます。

下半身が動かないのでドアを物理的に壊すのは出来そうもない。窓から出るしか無いのは想像しますが、その時の解決策も見事。

私は「どうして口に水を含んだんだろう、毛布を持っているのは何で?」と不思議に思いながら観ていたのですが、「なるほどね!」と。

先のことを考えていて「頭良すぎ!」と思いました。

たぶんほとんどの視聴者の想像を超えていたと思います。

この映画は馬鹿な行動をする人が少ないのでストレスがなくて良いです。主人公が助けを求めた配達員の男性も、主人公の言葉を信じてくれました。

ちょっとイラッとしたのは終盤での女性の看護師か医師の人です。必死に伝えようとしたときに去ってしまいます。この映画でイラッとするのはそこぐらいです。

[ネタバレ] 実際にあった事件からのインスパイア。代理ミュンヒハウゼン症候群を描く

ネタバレではあるのですが「代理ミュンヒハウゼン症候群」っぽいなと序盤ですぐに分かるので書いてしまいます。

「代理ミュンヒハウゼン症候群」は比較的近年知られるようになった言葉だと思いますが、この興味深さからか、最近はこれがテーマになった作品をよく見かけるようになりました。

代理ミュンヒハウゼン症候群 - Wikipedia

代理ミュンヒハウゼン症候群(だいりミュンヒハウゼンしょうこうぐん、英: Münchausen syndrome by proxy、MSbP、MSP)とはミュンヒハウゼン症候群の一形態であって、子どもを故意に傷つけて熱心に看護するふりをして周囲の注目を集めようとする精神疾患。

ミュンヒハウゼン症候群は、周囲の関心を自分に引き寄せるためにケガや病気を捏造する症例だが、その傷付ける対象が自分自身ではなく身近の者に代理させるケースを代理ミュンヒハウゼン症候群という。

この映画は実際にあった事件「ディー・ディー・ブランチャード殺害事件」から着想を得たようです。

ディー・ディー・ブランチャード殺害事件 - Wikipedia

ディー・ディー・ブランチャード殺害事件(ディー・ディー・ブランチャードさつがいじけん、英語: Murder of Dee Dee Blanchard)は、米国ミズーリ州スプリングフィールドで発生した殺人事件。

...

ディーディーは娘に年齢を低く偽るよう強制し、身体障害者で慢性疾患者であるふりをさせていた。彼女に不必要な手術と投薬治療を受けさせ、身体的虐待と心理的虐待によって彼女を支配していた(英語版)。虚偽性障害の国際的専門家であるマーク・フェルドマン博士は、虐待を受けた子供が親を殺したという事例は、彼の経験の中で初めてであると述べた[4] 。ジプシー・ローズは第二級殺人の罪状を認め、10年の刑に服している[1]。2018年11月に行われた短期間の裁判の後、ゴデジョンは第一級殺人で有罪となり[5]、終身刑に服している。

この事件は大きな影響を与え、ドキュメンタリーや他の映画・ドラマなどでも扱われています。

私は興味深くて Wikipedia の「ディー・ディー・ブランチャード殺害事件」をしっかり読んでしまいました。

この事件では母を殺す計画を立てた娘のジプシー・ローズは第一級殺人ではなく、答弁取引(司法取引)で第二級殺人で10年の刑。実際に殺した恋人のゴデジョンは第一級殺人で終身刑。

これを知ると、「RUN/ラン」で娘が母親を殺さないエンディングで正解だったのかなと。

私は観ているときに「この母親を何とかして殺せ」と思っていたのですが、それで10年の刑となるのは辛い。ただこの映画は「ディー・ディー・ブランチャード殺害事件」とは違い、母親から殺されそうなので正当防衛となるかも。

エンディングでクロエは偽の母親に面会に来るとは優しいなと思って観ていたのですが、仕返しに来ていたのですね。

これまでと立場が逆転して終わる。娘の恐怖と辛さを味わって欲しいです。

Amazon Prime Video

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Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。

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