正義と殺人の心の揺れ動きが無くなってがっかり。デクスターが活躍せず息子が中心。妹デボラの顔はこんなに縦長だった?『デクスター:ニュー・ブラッド』レビュー

2022/06/13

Huluに加入して「デクスター」の新シーズンにしてラストシーズンの「デクスター:ニュー・ブラッド」を観ました。現時点ではHuluの独占配信です。

シーズン8の最後から10年後。デクスター・モーガンは「ジム・リンジー」という偽名で町で穏やかに過ごしているのですが、抑えていた殺人衝動を10年目にして解禁してしまうところが第1話です。

前半はかなりゆっくりした展開になっていて町に溶け込んだ日常の暮らしを描いています。後半が忙しい展開。

人殺しを殺すサイコパスが主人公。警察内部にいながら警察より先に犯人を見つけて殺す『デクスター』
人殺しを殺すサイコパスが主人公。警察内部にいながら警察より先に犯人を見つけて殺す『デクスター』
楽しめた度

デボラの縦長の顔がぬっと現れて怖い

最序盤で妹のデボラが視聴者を驚かせてきます。デボラは死んでいるので、兄が想像するイマジナリーなデボラが兄に話してきます。

ちょっと失礼な話かもしれませんが、魔女のような縦長の顔がぬっと現れて、デクスターに話しかけるので怖いです。

何故かデボラがホラー映画のような驚かせ方をします。何もホラー要素が無いのに、登場の仕方だけがホラー。

デボラの顔が突然できてドキッとしますが、でも冷静になって「あれ、こんなに顔が縦長だったっけ」と。

デボラは死んだ当時の姿では登場できず、イマジナリーなデボラでも何故か10年後の姿です。本人を撮影しているので時の流れでの顔の変化は仕方ありません。

それにしてもデボラの写し方にやや悪意があります。後半のデボラは顔のアップではなく普通に出てきてくれるので怖くありませんが…。

あとデボラと新しい恋人のアンジェラの顔が似て見えるときがあります。ゴツッとしているところが似ています。

ストーリーが唐突でデクスターの見せ場なし。息子に焦点を当てたストーリー

「デクスター」のファンの私からすると、デクスターが観られるのは嬉しいのですが、ストーリーがかなり唐突の様に思えます。

10年間も抑えていた殺人衝動が簡単なことで抑えられなくなってしまう。殺人の綿密さも無ければ、崇高な目的も薄れています。かつては一流だった人のその後を観ているようで悲しい。

一番心配になるのは、デクスターは殺しをするときに血を残さないように部屋全体にシートを掛けるのですが、ラストシーズンの今回はシートを掛けていない箇所があるのに殺しを始めてしまうところ。

血は飛び散るので証拠が残ってしまいそう。綿密さにはついては全く映像に描かれなくなりました。

視聴者には殺しの証拠隠しのドキドキも、死体を捨てるときのドキドキもありません。うまく行くのが前提になっていてスリルが足りません。

第2話で偽名で暮らしていたデクスターの元に息子が訪ねてきて、そこからは息子中心のストーリーになります。でも普通はデクスターを見つけられないでしょう。見つけ方に説得力がありません。

ストーリーはどんでん返しがなく、先が見えてしまいます。

殺人鬼が主人公でも「デクスター」好きは「デクスター頑張れ!」と応援しながら観ると思いますが、今回はデクスターの知略でうまく事が運ぶという見せ場がありません。息子の方に焦点が当たっています。

最後デクスターが窮地に陥ったとき、私はデクスターが殺しは他の殺人犯になすりつけてその場を逃れ、「やるな、デクスター」というエンディングになるのを期待していたのですが、「デクスター」という作品の終わりに向けて強引に話が進みます。

息子に焦点を当てたストーリーで、息子の反抗的な部分に手を焼くところはデクスターが普通の人みたいで楽しめますが、そこが長くてなかなかストーリーが進みません。

せっかく良い感じの悪役がいたのに…。

[ネタバレ] ラストシーンが中途半端。息子の殺しも自己中心的

最後はすごくもったいない。

私は「デクスター」の最後は、デクスターが死ぬか、「今でもどこかで暮らしています」的な終わりの2つを考えていました。その前者になったわけですが、綺麗な終わりではありません。

息子ハリソンが父デクスターの殺しの目的(掟・ルール)の曖昧さを指摘します。そもそもデクスターはこれまでも「正義のため」と言いつつ、自分の殺人衝動の欲望のために殺しをするという甘さがありました。

ドラマ「デクスター」全体のストーリー序盤では、デクスターは不必要な殺しをするのは避けていたのですが、徐々に殺しを実行するための条件が自分の都合の良いように緩くなっていきます。

デクスターの思考回路がいい加減になっています。デクスターにはもはやサイコパス感(ソシオパス感)がありません。普通の人に見えます。

デクスターの最後の殺しは酷いもので、脱獄するために単に善人を殺すのです。ストーリーが強引すぎます。ここのシーン前に長年分からなかった殺人犯の証拠を警察に教えてあげて、自分が犯人では無いという方向になるように種を蒔いていたのに。

無理に脱獄せず何もしなくても釈放されたかもしれません。

自分のために殺しをしたと息子ハリソンが指摘してデクスターは息子にハンティングライフルで撃たれますが、そのまますっきりせずにエンディングを迎えてしまいます。

「正義のための殺しじゃなくて自分のためだったんだ」分かって息子ががっかりするのは理解できますが、そこで父を殺した息子も同じことをしています。

がっかりした自分の気持ちを解消するために父を殺したのです。

息子ハリソンがデクスターを殺したところを見た女性警官(アンジェラ・ビショップ署長)が、息子を簡単に許してお金を渡してどこかに行きなさいと言うのも不思議です。

この女性はデクスターのことが好きだったはずですが、デクスターが偽名を使っていたと分かっただけでコロッと態度が変わります。デクスターが偽名を使っていた、同情を禁じ得ない理由を説明したのに、頭が固くてそれを許せない人でした。

アメリカのドラマでよくある、嘘をついたことそれ自体が許せないと主張する性格の人です。アメリカのドラマは自分が嘘をつかれる事が何よりも嫌いな女性ばかりです。

そんな性格の人が最後に何故か息子ハリソンに優しい。

部下のローガン巡査を殺された仕返しを息子ハリソンがしてくれたから? そのはずはありません。

彼女の友人たちを殺した人を殺してくれたのがデクスターです。そのデクスターに対してもう少し何かあっても良さそうなものですが、アンジェラ署長は倒れたデクスターの横で立ち尽くして終わります。

「恨みを晴らしてくれたのは嬉しいが殺人はよくない」という板挟みの感情の揺れ動きを描いていたのがこれまでの「デクスター」というドラマでしたが、「ニュー・ブラッド」はその部分は描きません。

というかその前のシーンでこのアンジェラ署長がデクスターに銃を突きつけて逮捕・拘束したのも無理があります。その署長の憶測でしかなく、現実的に証拠がまったくない状態でここまでできるのでしょうか。

最後のシーンで息子が、デクスターが当時の恋人ハンナに宛てた手紙をもう一度読み返します(この手紙があったから息子ハリソンはデクスターが生きていることを知っていました)。

そこにはデクスターが息子を心配していることが書かれているのですが、どうして息子は「デクスターは自分を捨てた」と判断してしまったのでしょうか。

「ニュー・ブラッド」は描き方が足りず中途半端で、リアルさが欠如しています。

これで終わりなのか…

デクスターの良さが無くなってしまったラストシーズンでした。

頭が良く、先回りをして、うまく人を殺し、それがバレないかどうかドキドキするところが楽しめた「デクスター」でしたが、「ニュー・ブラッド」はそういった良さがありません。爽快感もありません。

息子に焦点を当てたストーリーですが、反抗的な部分にばかり映像の時間を割いていて、父デクスターと心が通じ合った後がほとんど描かれていません。中途半端です。

IMDb ではどんな評価なのかなと思って見てみたら意外とスコアが高い。2022/6/13 の現時点で 8.2/10 です。

ただ各エピソード毎のスコアを見てみると、さすがに最終話が 4.6 と低評価です。

デクスターファンとしてラストシーズンに期待していたのですが、そんなに楽しめませんでした。10話しか無かったので少しずつ見ていったのですが…。

「デクスター」は序盤のシーズンの方が緊張感があって面白かったです。

人殺しを殺すサイコパスが主人公。警察内部にいながら警察より先に犯人を見つけて殺す『デクスター』
人殺しを殺すサイコパスが主人公。警察内部にいながら警察より先に犯人を見つけて殺す『デクスター』

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Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。

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