値段以上の価値を感じる満足感。アプリの出来が素晴らしい。スリープ無効のノイズキャンセル耳栓にして集中できる『Jabra Elite 75t』レビュー
「Jabra Elite 75t」を買ってみました。早速使ってレビューを。
目次
音がナチュラルで聴きやすい
- 解像度
Elite 75t > NT01A - 音の分離
Elite 75t >> NT01A - 音の輪郭
NT01A >> Elite 75t - 再生可能な周波数帯域
Elite 75t >> NT01A - 音のナチュラルさ
Elite 75t >> NT01A - 音の元気の良さ
NT01A >> Elite 75t - 音場感
Elite 75t >> NT01A - イヤーピースのフィット感
Elite 75t >>>> NT01A
「Jabra Elite 75t」を前回購入した「NUARL NT01A」と比べていきます。

「Jabra Elite 75t」の音は重低音(低音域の中でも低い方の低音)が強調されています。その上の音域はナチュラル(フラット)な印象で、聴きやすいです。低音が気になる場合は公式のイコライザーアプリで低音を下げればOKです。
解像度は「Jabra Elite 75t」の方が「NUARL NT01A」よりも少し上です。音の分離も「Jabra Elite 75t」の方がうまい。
「Jabra Elite 75t」の方が再生可能な周波数帯域が広く、「NUARL NT01A」よりもより低い音、より高い音が再生できています。このため、音の空間が広く感じられ、より豊かなサウンドで、音場感(音の奥行き)も良い。
ただ、全体的には「Jabra Elite 75t」の方が良いのですが、音の輪郭は「NUARL NT01A」の方がかなりはっきりしています。これは「NUARL NT01A」が中高音域以上を強調していることも手伝っています。
音の輪郭がはっきりしている方が解像度が高いとも感じられ、歌ものをよく聴く人は「NUARL NT01A」の方が元気で聴きやすい音だと評価する可能性もあります。
「Jabra Elite 75t」には公式のイコライザーアプリがありますのでそれで少しは調節可能ですが、調節しても音の輪郭は「NUARL NT01A」の方がはっきり聞こえます。
音を比較しても圧倒的な差とまでは言えないので好みになります。現時点では「NUARL NT01A」は3000円台、「Jabra Elite 75t」11000円ほどという価格差を考えると、「NUARL NT01A」はとても健闘していると思います。
付属のイヤーピース(Jabra は「イヤージェル」と呼んでいます)はとても優れていて、少し厚みがあって柔らかく、耳の穴に良い感じにフィットします。このため低音が耳から逃げずとても聞きやすく、音場感も良いです。自分の心臓の音が聞こえるくらいの遮音性です。
耳から飛び出さないサイズで目立ちにくい
「Jabra Elite 75t」は耳から飛び出ないサイズ感です。「NUARL NT01A」は耳から少し出てしまいます。ちょっと大きめ。
真ん中が「NUARL NT01A」で、両端が「Jabra Elite 75t」。「Jabra Elite 75t」は形状が丸くて転がってしまい、同じ角度で比較が難しい。
横から見た図の方が分かりやすいかと思います。
上の写真ではイヤーピースの先端の縦位置を揃えてあります。これを見るとイヤホン全体として厚みに結構違いがあることが分かるかと思います。
「NUARL NT01A」のようなデザインなら見えてもカッコ悪くないと思いますが。
イヤーピースが厚めで柔らかくとてもフィットする。台形なのも良い
上が「NUARL NT01A」、その下が「Jabra Elite 75t」。
音の感想のところで書きましたが、「Jabra Elite 75t」に付属しているイヤーピースがすごく良いです。
柔らかくて少し厚めのシリコン。耳の穴にとてもフィットします。
「NUARL NT01A」は固めのイヤーピースで耳の穴が痛くなります。イヤーピースを買って交換しなければなりません。
「Jabra Elite 75t」は他のイヤーピースを買う必要性を感じません。フィットするので低音が逃げずよく聞こえます。物足りない音域があれば公式のイコライザーアプリで調節もできますしね。
「Jabra Elite 75t」はイヤーピースが横から見ると台形です。
台形だとイヤーピースの高さが低くなるのでイヤホンが耳から飛び出しにくくなります。充電ケースもコンパクトになります。
イヤーピースを変えて球形のタイプにしてしまうともしかすると充電ケースに収まらないかもしれません。
充電ケースも小さい。磁石でカチッと収納できる
左が「Jabra Elite 75t」、右が「NUARL NT01A」。
見た目は同じくらいの安っぽさ。
「NUARL NT01A」はイヤホンに付いているイヤーループが邪魔をして充電ケースの奥行きが大きくなってしまっています。
ただ「NUARL NT01A」の充電ケースでも十分小さく、「Jabra Elite 75t」の充電ケースがほどよい小ささだと思います。これ以上小さいと逆に持ち運びにくくなってしまいそうです。小ささはそのままにしてバッテリー容量を上げたり、何か他の機能を追加して欲しいです。
「Jabra Elite 75t」はイヤホンと充電ケースの接点が磁石で引き寄せ合ってカチッと収まってくれます。これは嬉しい。絶対に欲しい機能です。
アプリが良くできている。スリープを無効にしたり、ガイダンスを変えたり、想像よりも細かく設定可
アプリはイコライザー機能だけかと思っていましたが、Jabra のアプリ「Jabra Sound+」は色々と設定させてくれます。
上のスクリーンショットのように、イヤホンに付いている物理ボタンを設定させてくれます。
「Jabra Elite 75t」はボタンの長押しはなく、1回、2回、3回だけですが自分の好きなように設定できます。
私としては「音量を上げる」「下げる」を設定したかったのですが、項目にありませんでした。
まぁそれでもボタンの機能を設定させてくれるのは嬉しいです。
他に、スリープの設定とガイダンスの設定が素晴らしい。
イヤホンで音を聞くのではなく、ANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング / キャンセレーション)機能だけを使いたい場合があります。つまりイヤホンをノイズキャンセルしてくれる高機能な耳栓として使う場合です。
普通の完全ワイヤレスイヤホンは音楽などを流さないと自動的にスリープか電源OFFになってしまいます。
でも Jabra のアプリでは設定でスリープを無効にできます。素晴らしい。
あと、音声ガイダンスを変えて、効果音にする設定もできます。
私は「ANC / OFF / ヒアスルー」と話してくれる方が分かりやすいのでそのままにしていますが、こういうガイダンスに慣れると言葉だと時間が長いので効果音にしたい場合もあります。
この設定をさせてくれるとは驚きです。とても良い機能です。
現時点のバージョンだと「発信音ガイダンス」にすると、ANC機能切り替えのガイダンスが無音になります。効果音ではなく。
アプリの環境音の再生機能に感動した
アプリで「サウンドスケープ」というものがあり、何だろうと思ったら環境音を再生してくれる機能でした。
これ、素晴らしいです。
周りがうるさいときはノイズを再生したり、集中力を高めるために自然の環境音を再生したり、人の話し声とかの街中の音を再生したりできます。
これとノイズキャンセルとの組み合わせは集中したい人には本当に良い機能です。
人間は無音だと集中できないので、私はカフェや雑踏で収録された環境音を再生する事がありますが、それをアプリがやってくれます。
ただ、細かい話ですが、環境音も音声ファイルですのでループ再生されています。ループに気付いてしまうと「ループしたかどうか」に気を取られるため他の環境音が欲しくなります。
環境音はYouTubeでもありますし、そういうアプリや音楽のストリーミングサービスでも環境音が入手できるでしょう。
「サウンドスケープ」はその簡易的なものとしてとても良いです。
イコライザー機能は出来が良くない
正直なところ、イコライザーの出来があまり良くないです。
というのも、Jabra のは相対的なイコライザーで、例えばフラットな状態から高音(上のスクリーンショットの「トレブル」)だけをMAXまで大きくする設定にすると、高音の音量が大きくなるのではなく、そこより下の音域が相対的に小さくなってしまいます。
つまり、高音だけをMAXまで大きくした場合、低~中音域が小さくなってハイパスフィルターを使ったような軽い音になります。
他の音域の音量をそのままにして、決めた音域だけ大きくするということができません。私が知っているイコライザーの挙動と違って使うのが難しいです。
「特定の音域の音量を上げる」=「他の音域を下げる」、という処理になっているのでしょうか。それかイコライザーで処理した後にノーマライズしているのかもしれません。使い難いです。
あとイコライザーを使うと音が結構変わってしまいます。普通のイコライザーではないようです。もし使う場合は音量の変化量を少なくした方が良さそうです。
ただ「Jabra Elite 75t」はそもそも始めから聴きやすい音なのでそんなにイコライジングしなくても良いのは助かります。一番左の「ベース」を少し下げるだけでかなり良い感じです。
設定をプリセットで保存できるのも切り替えに便利です。
自分の耳の聴力に合わせてパーソナライズできる機能も面白い。たぶんシステム的には、アプリでの聴力テストの結果を使い、聞こえ難いところの音域を大きくしてあげるというものでしょう。
ちなみに、通話時の音も「低音を大きくする」「高音を大きくする」という設定がアプリにあります。
通話時に自分の声をマイクで拾って聞こえるようにするかどうかも設定できます。マイクのミュートも可能。アプリの出来は本当に凄い。
ANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)はそこそこ
今回初めてANC(Active Noise Cancellation)というものを使いました。
どうでもいい話ですが ANCの「C」は Canceling と Cancellation とで揺れ動きがある略語です。しかも Canceling は Cancelling と、"l" を2つ連続して綴るのがイギリス表記らしい。ANCの「A」を Adaptive とする会社も…。
まぁ日本語では「ノイズキャンセル」と言えばたぶん伝わるので良いのですが。アクティブの反対語であるパッシブなノイズキャンセルはイヤーピースの遮音を意味するようです。
各会社によってANCの処理が違い、Jabra 製品はノイズキャンセルに定評があるわけではありません。ANCはソニーやBOSEの製品が処理がうまいらしいです。
「Jabra Elite 75t」を実際に使ってみたところ、このANCは音が小さめの断続的な環境音ならほとんど聞こえなくなります。ずっと鳴っている換気扇の音とか。雑踏とか。
大きめの音にはあまり効果がありません。音量が3割減になるくらいでしょうか。そもそもイヤーピースで遮音されているので、その時に聞こえる音量から3割減です。
換気扇や雑踏の音などは8~9割聞こえなくなります。
「Jabra Elite 75t」はイヤーピースのフィット感が良くて遮音性が高いので、ANCはそこそこ頑張ってくれれば十分な効果があります。
公式アプリの設定でANCの強さ・左右のどちらのマイクを重視するかを設定できます。これがよく分からないのですが、強さをMAXにするよりも少し下げておいた方がうまくノイズキャンセルしてくれたりします。
ノイズキャンセルのための逆位相の波が強すぎると、逆に音が聞こえてしまうということなのでしょうか。
高性能なANCが欲しいならフラグシップモデルが良いでしょう。「Jabra Elite 85t」とか、それこそソニーの「WF-1000XM4」とか、BOSEの「QuietComfort Earbuds」とかも見ながら。ちょっと値段が高くなりますが。
今後 Jabra が発売する新製品も良さそうです。
まとめ。良いものを買ったなぁと思える満足感
良い点
- 重低音以外はナチュラルな傾向の音で聴きやすい
- (「NUARL NT01A」と比べ)再生可能な周波数帯域が広く、音場感も良く、音の分離もなかなか良い
- イヤホンが耳から飛び出さない大きさ
- 付属のイヤーピースがとてもフィットする
- 物理ボタンなので、タッチ式と比べて反応にラグがない
- アプリの出来が素晴らしい。設定をプリセットとして複数保存できる
- アプリを使うのはユーザー登録の必要なし。アカウントを作らないと全く設定させてくれないゲーミングデバイスメーカー Razer と違って素晴らしい
- ノイズキャンセル耳栓として使いたい人向けの設定がある
- 色々な環境音が収録されていて聴ける
- 2台のデバイスに同時接続できる。PCとスマホの同時接続(マルチポイント)がとても便利。ペアリングは8台
- ANCは小さめの断続的な雑音なら結構消せる
- 外音取り込み(ヒアスルー)が便利。音はリアルに近い
- 通話時に自分の声をマイクで拾って聞こえるようにする設定もできる。マイクミュートも可能
- 通話時の相手の声の低音か高音を強調させる設定ができる
- (完全ワイヤレスイヤホンのマイクなら Jabra と言われるほどマイクの性能が良いらしい。試していません)
悪い点
- 対応コーデックが AAC / SBC だけ。aptX が欲しかった(ただし思ったよりも差がないらしい。下記参照)
- 少し音が途切れやすい。通信距離が短いか、通信の掴みが悪い
- イヤホンを耳に付けながら物理ボタンを押すことになるが、ボタンの押し込みが少し深く、ボタンを押したときのポチッという音が耳元で大きく響く
- イヤホンの物理ボタンで音量を上げ下げできない
- イコライザーの出来が悪い
- 印刷された説明書がなく、説明書がアプリの中にあるのが分からなかったのでもっと目立たせて知らせて欲しい。公式アプリをインストールするか、またはサポートサイトでPDFをダウンロードしないと説明書が読めない。ただアプリ内で説明書が読めるのは便利(ページのジャンプができないのは不便)
- 装着時に何かを触るときに静電気でバチッとなることが多くなった
これはお金を出す価値があるモノだ、良いものを買ったなぁ、と感じました。
全体として、とても満足感のある製品でした。現時点での価格は11000~13000円ぐらいで、この値段分の価値は十分に感じます。
安いワイヤレスイヤホンをいくつも買うよりも「Jabra Elite 75t」を1つ買った方が満足度も高く、最終的な出費も安くなるでしょう。
アプリの出来が良く、カスタマイズやパーソナライズの聴力検査が面白い。アクティブ・ノイズ・キャンセル、外音取り込み(ヒアスルー)。耳栓として使いたい人はスリープ無効。環境音も流せる。2台のデバイスと同時接続可能。
普通の人は「Jabra Elite 75t」の音質で十分に音が良いと感じると思います。ちょっと良いヘッドフォンとかに手を出している人はもっと上の音質を知っていると思いますが、外で少し使う程度なら完全ワイヤレスイヤホンとしてはこれでもう十分な音質です。
「Jabra Elite 75t」の音が悪いと評価している人もいますが、それはたぶん2万円ほどで購入した人たちで、2万円でこの音質だとすると他に音が良い完全ワイヤレスイヤホンがあるでしょう。1万円ちょっと位でこの音質なら満足できるはずです。
少し気になるのは、通信可能距離が短く、Bluetooth の発信元デバイスから5メートルぐらい離れると音が途切れ、接続が解除されること。壁の隔たりにも弱い。
スマホを身につけている場合は問題となりませんが、PCで使う場合などデバイスを動かさない際には注意が必要です。
私の Android スマホではコーデックは SBC と AAC とを選べて、音が良かった AAC で接続しています。「Jabra Elite 75t」は aptX に対応していません。
AAC と aptX とは思ったより差が無いようですが、AAC の方が高音質とのこと。ラグの無さは aptX がやや有利という程度の差みたいです。
BluetoothはAACが最強だった… aptX(HD) vs AAC vs SBC 最終決戦 | by 謝花ミカ | Medium
aptXは本当に高音質で低遅延なのか. aptX, AAC, LDAC. 一体どれが高音質で低遅延なのか? | by 謝花ミカ | Medium
あと、たぶんこの「Jabra Elite 75t」のせいだと思いますが、装着時に何かに手を伸ばすとき静電気でバチッとなることがかなり多くなりました。
普段と変わったのは完全ワイヤレスイヤホンだけなので、これが原因でほぼ確定です。この調子だと冬が怖い。
ただ、他の完全ワイヤレスイヤホンでもこの現象は同じかも。
ANCが要らないなら「Jabra Elite 3」がかなり良さそう
遮音に優れたイヤーピースが付いているので「Jabra Elite 75t」で音楽や音声を聴くのであればANCはそれほど要らないような気がしています。
もしANCが要らないなら、Jabra の中では新製品の「Jabra Elite 3」がかなり良い候補となります。
「Jabra Elite 75t」からANC機能が無くなり、外音取り込み(ヒアスルー)はそのままあり。サイズが小さくなって、片耳モードが加わり、aptX にも対応。発売したばかりの今、価格は8000円ちょっとくらい。
私は「Jabra Elite 75t」ではなくこちらを買っても良かったなと思っています。音質がどうか分からないのですが、たぶんそれほど変わらないでしょう。