アカデミー賞受賞のリメイク映画『ディパーテッド』よりも面白いオリジナル映画『インファナル・アフェア』
『インファナル・アフェア』を観てAmazonのレビューコメントを見ると、『ディパーテッド』というハリウッドでのリメイク映画あるとのことで、両方を観てみました。
調べてみると、
- 『インファナル・アフェア 無間道』
2002年香港映画、アンドリュー・ラウ監督、アラン・マック脚本 - 『ディパーテッド』
2006年アメリカ映画、マーティン・スコセッシ監督、ウィリアム・モナハン脚本、アカデミー賞受賞
私はほとんど映画を観てこなかったのでどちらも知らなかった作品です。予想よりも古い作品でしたが、現在 Amazon Prime Video で両方とも観ることができます。
『インファナル・アフェア』は「無間地獄」というテーマがしっかりあって、ラストでは「なるほど、そういう意味か」と納得感のある映画だったのですが、『ディパーテッド』はそういうテーマが消え、マフィアのいざこざの軽い映画になってしまっています。
リメイク作品というとブラッシュアップを掛けられてより良い作品になるのを期待するところですが、こうなるのか。仏教要素も外したかったのでしょう。
Amazon のレビューコメントを見てみると、「マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンが出ているから面白くないはずがない」とあります。うーん、有名な人が出ていれば楽しめる人はうらやましい。
どうもアカデミー賞を受賞したせいか『ディパーテッド』の方が圧倒的に知名度のある映画らしく、オリジナルの『インファナル・アフェア 無間道』を知らない人の方が多いようです。
両方観るとどうしても『インファナル・アフェア 無間道』の方が良く出来ていると分かります。
目次
『ディパーテッド』の方が分かりやすいが…
『インファナル・アフェア 無間道』を見始めた時、世界観がよく分からず混乱しました。
お寺の仏像の前で盃を交わすようなシーンがあり、姿がチンピラ風だからヤクザのような組織か? でも「警官」と言っているし警官なのか?
私は香港の事情もよく分からないため、香港の警察はこういう儀式があるのかなと見ていくことになります。
その後は登場人物の顔が一致しなくて難しい。世界から見るとアジア人の顔は分かり難いという話がありますが、私から見ても香港人の顔が分かり難い。誰が誰だか分かりません。この人は…既に登場したっけ?
本当は映画開始直後の盃を交わすようなシーンのボスと、警察の人が電話を掛けている「お父さん」が同じ人物だと気付かなければならなかったのですが、ストーリーが少し進んでから気付きました。
『インファナル・アフェア』は説明が少ない作品で、この人は誰でどうのこうのなどの視聴者用の説明がありません。視聴者への説明シーンはつまらないのでこれで良いのですが、視聴者は顔と役職をしっかり確認しながら観ていく必要があります。
さらにストーリーもややこしい。マフィアにスパイが入り込んでいて実はそれが警官、警察側にもマフィアのスパイが入り込んでいてそれが警官。両方のスパイが警官です。観ていくうちに分かるので問題ないかと思いますが、最初は映画を観る側への負担が大きいです。
対して『ディパーテッド』はアメリカナイズされ、顔が随分違うので判別がつき、理解が楽です。盃を交わすシーンもカットされ、スパイがボスに電話しているシーンを映して直球で分からせてくれます。
警察の上司が変に嫌みったらしく、大げさな演技になっているのもアメリカナイズでしょうか。映画後半と性格が違いすぎます。
アカデミー賞の受賞はアイルランド系アメリカ人が抱える人種問題にスポットを当てたのが一要因になっているとのことです。人種問題があるのは分かりますが、それをどうこうしようという映画ではありません。
オリジナルよりもストーリーは分かりやすくなっているのですが、大事な部分もそぎ落とされています。
[ネタバレ] カットされたマフィア側スパイの心の揺れ動き
『インファナル・アフェア』では警官側のスパイがカウンセラーの女性と会っている理由付けがなく、さらにこの女性が殺されたスパイは本当に警官だったという情報を警察内部から見つけるのは無理があり、『ディパーテッド』はこれが修正されています。
あと警察学校の段階でやめさせられるのはさすがに酷いので、『ディパーテッド』は一度しっかり警官になってからやめさせられています。『インファナル・アフェア』は極秘の潜入捜査の任務を知っている上司が死んでしまうと自分の身分を証明できる人がいなくなり、本当に単なるマフィアになってしまう恐怖があります。
そうした修正は良いと思うのですが、大事なところもそぎ落としてしまっています。
『インファナル・アフェア 無間道』では、マフィアに入り込むスパイとして警官になった人物が、世話になった上司を自分のマフィアに殺されて正しい道に戻るのを決意します。マフィアのスパイに良心があり、葛藤があります。
そして自分のマフィアのボスを自ら殺します。しかし、正しい道に戻ろうと決意はしたが、そう簡単には戻らせてくれない、というラスト。これが映画の始めに説明される「無間地獄」に繋がる。
対して『ディパーテッド』は、自分をFBIに売ろうとしたからマフィアのボスを殺すだけです。思わず「あれ?そんな理由になったの?」と。
警官からのスパイの潜入も1年と短く、スパイ同士が協力する部分も全部カット。マフィアのボスがFBIの内通者であるという変更が加えられています。
『ディパーテッド』のマフィア側のスパイは単なる悪役に成り下がっています。ラストも悪い奴(スパイ)が殺されて「ちゃんちゃん」と効果音が流れそうなエンド。
どうしてこうなった?
緊張感のあるシーンがなくなった
『インファナル・アフェア 無間道』では「スパイがバレてしまうかどうか…バレなかった!」などの緊張感があるシーンが所々に挟まれているのですが、『ディパーテッド』はそういうのがありません。
『インファナル・アフェア 無間道』にあった、ドアが閉じたエレベーターで発砲音が聞こえて、乗っている人はどうなった…? という場面もカット。ドアが開いた状態で発砲するように変えられています。
見比べてみると結構違いがあるものですね。まぁ『ディパーテッド』の方が直球で分かりやすいことは確かですが。
なんで偉そうな警官と結婚するの?
『ディパーテッド』では精神分析医の女性がマフィア側に内通しているスパイ警官と結婚するのですが、なんでこの人と結婚するのか分かりませんでした。
何か魅力はあったのでしょうか?
最初のデートでとにかく偉そうに接していて、カウンセリングの仕事を見下しているし、もっといい人を見つけられそうなものです。
あ、偉そうな人が好きという権威主義的な女性も多いのかもしれません。
日本のリメイクは『ダブルフェイス』
日本でも『インファナル・アフェア 無間道』がリメイクされています。TBSのドラマで『ダブルフェイス』というタイトル。
『インファナル・アフェア 無間道』を観ているとき警察からのスパイの役者(トニー・レオン)が西島さんに似ているなと思っていましたが、日本版はその西島秀俊さんが演じています。みんな似ていると思っていたのかもしれません。
上司の警官は日産・ルノーのカルロス・ゴーンに似ているなと思っていました。
日本のリメイクは時間があるときに観てみます。
良く出来ていたが楽しかったかと訊かれると…
『インファナル・アフェア 無間道』は良く出来ていると思いますが、楽しかったかと訊かれるとまぁまぁという感じ。
でもストーリー終盤は意外な方向でした。よくあるようにハッピーエンドに進むかと思っていたら、やや後味が悪い方向へ。「無間地獄」というテーマからすると納得のラストです。
『ディパーテッド』は「ふーん、次はなに観ようかな」という感想です。