散りばめられた違和感の答えが分かると辛い…。良くできた構成に感動するが喜べない『シャッター・アイランド』
Amazonで精神病院ものの「キュア ~禁断の隔離病棟~」という映画を観てコメントを見たら、「シャッターアイランド」に似ているというコメントがあり、この映画を観てみました。
この映画はすごく良く出来ていると感動したと共に、精神的にやられます。気分が落ち込んでいる人は観ない方が良さそう。
精神病院もののストーリーはいろんなメディアでありますが、「シャッターアイランド」はそのタイプのストーリーを知っている人を手玉に取ります。
この映画では主人公は保安官として犯罪者の精神病院のみがある島「閉ざされた島(シャッターアイランド)」に赴くところから始まります。その精神病院から女性が一人いなくなったらしい。
周りの人が信じてくれなくても突き進め、を全否定される
女性が残したメモなどの痕跡を追っていくと、この精神病院でおぞましいことが行われていると分かる。これならよくあるストーリーです。しかし、この映画は結末が違います。
映画を観る人は主人公の視点で映画を観ていくので、主人公に共感しながら観ることが多いかと思います。
主人公が不当に扱われるとき、苛立ちを感じます。例えば、証拠を見つけて警察に話しても信じてもらえない。ホラー映画とかでも「霊を見たんだ」と言っても信じてもらえない。真実はこうなんだと話しても信じてもらえない。
こんな時には、「頑張れ、主人公」「周りの人が信じてくれなくても観ている人には分かっているよ」。
主人公が薬を飲まされて変な夢を見るようになっていき、「精神をおかしくされるまで時間が無いぞ、急げ」と応援します。
この映画ではそれが全否定されます。
これが本当に辛い。応援していたんだけど、自分が間違っていたのか…?
散りばめられた違和感
映画を注意深く観ている人はたぶんおかしなところに気付くはずです。ミステリー小説みたいな映画です。
私は「あれ、この女性、水の入ったコップを渡されて飲んでいるのに、コップを持っていないじゃん」と気付きました。
落語のように手だけを口に当てて水を飲む動きをしています。でも次のカットでは水が無くなったコップを置く。再生をちょっと戻して確認してしまいました。
でも「編集ミスなのかな…?」と片付けてしまいました。
他にも「あれ、ちょっと違和感があるけど…」と感じるところが所々ありました。
実はこれ、映画を最後まで観ると答えが分かります。
その答えがとても残酷です。
編集ミスとかではなくてそのようにしっかり作られているのです。
[ネタバレ] 答えはつらい…
精神病院ものはたいていの場合、主人公や周りの人が言っていることが真実です。
周りの人が信じてくれなくても、最後にはみんな気付いてくれて「お前はやっぱりおかしくなかったんだな」とハッピーエンドになるのがよくあるストーリー。
この映画はその真逆です。お前だけがおかしいから、みんなが気付かせてあげる。
夢から覚めるのは本当は辛いです。見ていた夢は自分が信じていた世界だからです。
夢から覚めない方が幸せなんじゃないか、と思わせてくれるラストです。救いがないラストに打ちのめされます。「マトリックス」みたいですね。
私はラストでもうひとひねりあってハッピーエンドを期待していたのですが…。
良く出来ていて感動したけど、お勧めしにくい
この映画はとてもよく構成されています。2回読ませるミステリー小説のように、この映画も真実を知ってから2回目を観るとより理解できるという構造です。
2回目も楽しませてくれるなんて凄い。
人にお勧めしたくなるのですが、精神病院もので映画のラストが辛く救いがないので、気分が良くなる映画ではありません。
それに耐えられる人は楽しめるでしょう。2009年の映画で有名な映画らしいので、みんなもう見たことがある映画なのかも。
「シャッターアイランド」に似ているというコメントを見た「キュア ~禁断の隔離病棟~」も恐ろしい映画で救いがありません。精神病院ものはハッピーエンドの方が嬉しいです。
ハッピーエンドな精神病院ものとしては「アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち」を最近観ました。
なんと「シャッターアイランド」の院長と「アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち」の院長が同じ役者(ベン・キングズレー[wikipedia])という…。私はこの2つをさほど時間を置かずに観たので少し混乱しました。