怪奇現象が起きていることが客観的証拠で認定される、本当にあった事件のホラー映画。満足感が凄い『死霊館』シリーズレビュー
最近 Amazon Prime Videoでホラー映画ばかりを観ています。
Prime Video にあるホラー映画はB級以下のものが多く、「高速ばぁば」など「なんだこれ」というものも観たのですが、たまたま出会った「死霊館 (The Conjuring)」は予想外に面白くて見入ってしまいました。
「死霊館」のホラーは驚かし系のホラーと幽霊がいるかもしれないという日本的なホラーとのバランスが良いです。あと異形のものがあまり登場せず、グロテスクさをホラーにしていないところも良いです。
目次
なぜ没入感があるのか。怪奇現象が証拠で認められる客観性のあるホラー
「死霊館」は通常のホラーものと違っていて、とても没入感があります。それはなぜか。
通常のホラー映画は、怪奇現象に直面し、その場で何とか解決方法を見つけ出して解決、という流れが一般的です。ホラーなファンタジーです。
しかし「死霊館」シリーズは、怪奇現象 → 調査 → 悪魔払いという流れになり、途中で第三者による調査が入るため、怪奇現象に客観性が出ます。
幽霊を見た人がいくら「幽霊を見た!モノが動いた!」と言っても「それはおまえが幻想を見ただけだろう」と言われてしまい、結局は自分で解決するしかありません。
でも「死霊館」では怪奇現象の証拠を写真や映像に残そうとします。
私は最初「ホラーファンタジーに浸っているのに、調査で現実に引き戻されてしまうなぁ」と残念に感じたのですが、見続けるとその逆でした。
第三者の調査が入ることによって「現実に本当にこの怪奇現象が起きているんだ」と感じられ、映画に没入できるのです。
映画の最初に「この映画は本当にあった話です」と表示されますが、「FARGO / ファーゴ」の件もありますし、もっともらしくそう表示しただけかなと天邪鬼に考えてしまいますが、この事件は本当にあった事件のようです。

映画終了後のスタッフロールで事件当時の写真を見せてくれます。ここで「本当に『本当の話』だったんだ」と実感を持てます。
映画の調査も当時行ったものを再現しているのでしょう。この「調査」がこの映画を面白くしています。
この怪奇現象を止めるために「何とかして良い証拠を写せ!」と共感して観られます。
悪魔払いをするには証拠が必要
ちなみに何故調査をして証拠を残そうとするかというと、教会に報告して許可を得て、悪魔払いするためです。勝手に悪魔払いをしてはいけません。
映画を観ていると最初は幽霊が原因かと思われるのですが、実は悪魔が原因だと分かります。そこで悪魔払いに繋がるわけです。
ホラー映画を観ている人はよく聞く話かと思いますが、悪魔払いは訓練を積んだ聖職者しか行えず、その上、教会に怪奇現象の客観的な証拠を示して悪魔が原因だと認定されないと悪魔払いを実行できません。
悪魔払いは私としてはやや滑稽に見えるときもあります。それは「エクソシスト」というドラマを観たとき(有名な映画ではなく、ドラマです)、悪魔が取り憑いた人の横で神父がずっと聖書の言葉を唱えているだけだったからです。
十字架を悪魔に見せながらこう言います。
「食らえ!『父と子と精霊は一体』だ!」
…はぁ?
このドラマは悪魔に本当に長いこと聖書の言葉を投げかけるのですが、言葉の効果が全然無いので笑ってしまいます。悪魔も饒舌に神父を煽り立てまくります。でも最後には何故か急に悪魔が苦しみ出す…。
「死霊館」の悪魔は悪魔払いの言葉に反応して苦しんでくれるので嬉しいです。
大人は信じてくれる。嘘をついていると言われるイライラ感が少ない
「死霊館」シリーズの良いところは、怪奇現象を周りの人が信じてくれるところです。
怪奇現象を経験したと周りの人に言うと、一旦は周りの人が信じてくれないのですが、一緒に怪奇現象を経験してすぐに信じてくれるようになります。
ホラー映画でイライラするところは、「怪奇現象にあった」と一生懸命訴えても周りの人が信じてくれないことです。
「死霊館」シリーズはそのイライラ感が少なく、調査も入り、信じてくれる人が周りにいます。
この安心感は良いです。信じてくれる人がいるというのは大事ですね。
二作目の「死霊館 エンフィールド事件」では母親が頑固でイライラしたのですが、それでも思ったより早く子供を信じるようになります。
3回のノックの意味は三位一体説の否定
ちょっと勉強になったのですが、悪魔が壁やドアを叩いて音を出すとき、この映画では必ず3回連続して音を出します。
それは映画中で説明されますが、三位一体説をあざ笑っているからとのこと。
こんな理由付けがあったのですね。
あれ、普段、ドアやトイレのノックって何回してるっけ…?
三位一体説を信じているから3回ノックする人もいそうですが。
観た後の満足感がもの凄い。探偵シリーズのよう
「死霊館」は色々な要素が詰め込まれたホラーです。
普通のホラーのように怪奇現象、原因を突き止めて何とかして解決、だけではなく、調査、悪魔払い、夫婦の絆と色々と要素を盛り込んであります。伏線も多い。
B級以下のホラー映画は「薄っぺらいな」と思うことが多いのですが、「死霊館」は色々と要素が詰め込まれていて、エンドに向かって盛り上がっていき、濃厚な時間を過ごせます。
特に、最後はハッピーエンドになるので、映画を観た後にも怖さを引きずらなくて済むので良いです。
この映画で調査を依頼されるウォーレン夫妻はアメリカで有名な超常現象研究家/心霊研究家の夫妻らしいです。「死霊館」シリーズはこの夫妻の体験談を元にした映画です。
ウォーレン夫妻 あるいはエド&ロレイン・ウォーレン夫妻(夫:エド・ウォーレン、妻:ロレイン・ウォーレン)はアメリカの心霊研究家夫妻である[1]。
夫のエドはカトリック教会が唯一公認した非聖職者の悪魔研究家であり妻のロレインも透視や霊視能力を持っている。
このシリーズではウォーレン夫妻が事件を解決するので、まるで探偵もので1話完結型の映画やドラマシリーズのようです。事件が起きてそれを解決して、ハッピーエンド。
悪魔が原因なのがやや不満
これは個人的な話ですが、私としては事件の原因が幽霊ではなく悪魔なのが不満でした。
何というか、原因が悪魔だと幽霊よりも超常現象ではなく、ファンタジーで怖くないと感じてしまうのです。幽霊はいるかもしれないと感じますが、悪魔は私にとっては本当にファンタジーです。
これは私が日本人だからでしょうか。悪魔として形を見せて現実世界に登場されると興醒めしてしまいます。現実に質量を持って存在するなら、実体があるのでホラー感が薄れます。
スピンオフ作品は普通のでき
「死霊館」シリーズは今のところ次のものが公開されています。Wikipedia も参考にどうぞ。
- 死霊館 (2013)
- アナベル 死霊館の人形 (2015)
- 死霊館 エンフィールド事件 (2016)
- アナベル 死霊人形の誕生 (2017)
- 死霊館のシスター (2018)
- アナベル 死霊博物館 (2019)
- ラ・ヨローナ ~泣く女~ (2019)
「死霊館 (2013)」に登場した女の子の人形をメインにしたスピンオフが「アナベル 死霊館の人形 (2015)」「アナベル 死霊人形の誕生 (2017)」「アナベル 死霊博物館 (2019)」。
「死霊館 エンフィールド事件 (2016)」に登場した悪魔シスターをメインにしたスピンオフが「死霊館のシスター (2018)」。
スピンオフは「死霊館」のウォーレン夫妻の話に繋がっていくように作られているのは見事ですが、趣が違って普通のホラー映画みたいに、怪奇現象→何とか解決、という流れになってしまっています。
しかも「死霊館」のストーリーに繋がるということは、スピンオフ作品では事件が解決しないということを意味しています。
そのため爽快感も今ひとつです。
「死霊館 (2013)」は驚かしと幽霊がいるかもしれないという日本的なホラーとのバランスが丁度良かったのですが、スピンオフ作品は驚かし系とグロテスクさを押し出していて、普通のホラー映画になってしまっています。
スピンオフ以外は久しぶりに熱中できたホラー映画でした。
「死霊館 (2013)」をまだ観ていない人はお勧めします。「死霊館」シリーズは全部に字幕版と吹き替え版があります。