tinyBuild が G2A のせいで $450,000 を失った。どうしてゲームキーを無効にしないのか
「SpeedRunners」「Punch Club」などの開発・販売で知られる tinyBuild のゲームのキーが G2A で販売され、tinyBuild が $450,000 を失ったと公表しました。
通常の価格で正規に販売されていれば tinyBuild に $450,000 が入ったとのことです。ただここは G2A の反論「通常価格ではそんなに売れないでしょ」というのは一理あります。なので $450,000 の半額くらいを失ったとするのが正しそうです。
さてどうやって G2A で稼ぐのかというと、不正な方法でクレジットカード番号を入手し、それを使って正規の方法でゲームを買い、G2A などのキー販売サイトでゲームキーを売る。その後、不正利用されたクレジットカードの購入が無効となる。これで G2A と G2A でゲームキーを販売した人が丸儲けです。正規の方法でゲームを買う際に使われたサイトはチャージバックの費用も支払わねばなりません。
tinyBuild は G2A から「あなたのゲームを買ったパートナーがキーを売ったわけで、私達は関係ない。G2A と提携するなら協力する」という返答を受けています。前半の方は確かにそうなのです。G2A は仲介をしているだけ。G2A を eBay や Yahoo! Auction だと捉えると分かりやすいのかもしれません。
Yahoo! オークションでは不正ソフトが堂々と販売されています。ここで Yahoo! の監督責任を批判したのですが、「私達はオークションの場を提供しているだけだ」という言い訳をしたのと同じ状況です。
tinyBuild は「G2A はグレイマーケットを促進させている」と批判しています。その通りです。G2A があることで不正取得したクレジットカードを利用して楽にお金を稼げるのです。G2A は有り難い存在でしょう。G2A は損をしません。
ゲームキーを無効にするのはダメなのか
最近このようなことが頻出しています。IndieGameStand も被害に遭っています。ディストリビュータ・デベロッパーからの視点でブログを書いていて、説明が分かりやすいのでお勧めします。
How Steam key reselling is killing the little guys - IndieGameStand Blog
Steam Key Resellers are Assholes: New Stolen Key database for Developers - IndieGameStand Blog
ここで、私は「不正に買われたキーをすぐに無効にすればいいんじゃないの? そうすればみんなが次第に G2A を利用しなくなるのでは?」と思いました。この疑問は tinyBuild がよく受けるようで既に返答が書かれています。
UPDATE1.
A lot of people have been asking about revoking keys. It seems like an easy no brainer solution – simply disable the keys that leaked or are being sold illegally. The problem with this is a bit more complex than you might think.
You have some keys which are legit from bundles, others from a bunch of fraudent credit cards, and random keys scavenged from giveaways. These would be from at least 3 different batches. How do we track which one to disable? Now imagine when we have hundreds of these batches.
Large corporations tackle this by having a ton of people working on tracking smaller batches, but we want to stay small & nimble. This means automating as much as possible. And even if we were to spend a ton of time on micromanaging this, it wouldn’t solve the overall problem. Awareness of the general issue is what makes an impact.
『それは思うほど簡単ではない。バンドルで買ったものやギブアウェイで配られたものなどがあり、どれが不正なのか追跡できない』。
私はチャージバックがあったキーをすぐさま無効にすればいいと思ったのですが、それについては触れられていません。Humble Bundle などのしっかりしていそうな販売サイトとは連携が取れているでしょうから、対応が楽そうだったのですが。ただし仕組み上、後手を踏むことにはなります。
色々な所のフォーラムにある「G2A は安全なのか?」というスレッドには不思議ですが必ず「買ってみたけど大丈夫だったよ。100%信頼できる」というコメントがあります。それを崩し、「G2A で買うとゲームが無効になる」という印象が強くなれば状況が変わりそうです。
これをするためにゲームキーを無効にするのがいいと思うのですが無理なのでしょうか。返金対応は G2A が行わないといけませんし。まぁ G2A は返金対応を受けるための保証をも販売しているのですが。
IndieGameStand は不正取得されたキーをデータベースにしています。こういうのは難しいのでしょうか。
Steam Key Resellers are Assholes: New Stolen Key database for Developers - IndieGameStand Blog
ちなみに、G2A が怪しいと言った tinyBuild のパートナーですが、tinyBuild は次のものは信頼できると言っています。
UPDATE2.
In the original article I refer to key distribution partners, the ones that G2A claim are sneakily reselling keys. I can confirm without a doubt that these partners do not resell their keys: Humble Store, BundleStars, IndieGameStand, IndieGala. They’re our trusted partners and everything you buy from them is legit.
Humble Store、BundleStars、IndieGameStand、IndieGala の4つが信頼できるとのことです。
G2A は危ない
私は以前から G2A は危ないと書いています(「安全ではない」、「契約書がない」、「Steam/Origin/UBI から認められていると言っているが、認められていない」)。こういったゲームキー販売サイトは普通ならグレーだと分かるはずです。
ゲームキー販売サイトでゲームを買うと、そのゲームを作ったデベロッパーにお金が入りません。結果的にゲーム業界の首を絞めることになります。ゲームキー販売サイトの全てのキーが不正取得されているのではないところが厄介で、G2A は特にその部分を主張してきますが、ゲームキー販売サイトでゲームを購入するのはゲームが無効になるリスクが高く、デベロッパーも不幸になります。
安いからといってゲームキー販売サイトを利用すると、あなたが好きなゲーム業界が縮小し、将来的にゲームが作れなくなるかもしれません。たまに「私の地域だけ○○(ゲーム会社)のゲームの価格がすごく高く設定されている。○○は嫌いだ。だからゲームキー販売サイトで安く買うのは正しい」と主張する人がいますが、「嫌な相手に対しては何をやってもOK」という思考回路は今一度見つめ直して下さい。意外とこういう人が多くて驚きです。
安く買いたいのは理解できますがリスクのある「ゲームキー販売サイト」を選ぶ必要はありません。もっと信頼できるサイトからどうぞ。