敵と戦うのと同時に酔いとも戦いながらクリア。

ストーリーの導入

BioShock シリーズではおなじみの灯台から始まり、今度はポッドの中から綺麗な空中都市を見させられる。BioShock 初代では水中都市だった。今作はコロンビアが舞台となっており、そのコロンビアが空中に浮いている。時代設定は1912年。

プレイを始めて間もない頃、アメリカ史や宗教的な色がゲームの舞台に濃く出ていて、私に理解できるか心配だった。ワシントン、フランクリン、ジェファーソン、洗礼、贖罪などの単語が飛び交う。この舞台はアメリカ人でないと身近には感じられないと思われる。

クリアまでプレイすると、一応それらについて知っていた方が良いものの、そこまで踏み込まれなかった。ゲームのストーリーにはそんなに絡んでこないため、一安心。ただしゲームの舞台としてはそのような土壌にあり、アメリカ人の視点に立っており、アメリカ人向けだとは言えると思う。

黒人差別、労働者と資本家の対立など。トイレが別になっているという有名な事柄にも触れられる。

また、人種差別や黒人差別などの、アメリカでは今も存在する差別も舞台に当然のごとく存在する。主人公はそういう差別に批判的に描かれる。それに宗教に対しても少々批判的な面があり、このゲームがアメリカで売れているのは少し奇妙に感じられる。

アメリカに批判的で、アメリカで売って大丈夫なのかと私が心配してしまった。このゲームは人気なので受け入れられているのだとは思うけれど。日本と違ってアメリカは自分たちの歴史や行動に批判的な映画も話題になるし、反省をゲームに込めていても大丈夫なのだろう。

今作の舞台の空中都市はいったい何なのかがプレイヤーにとってかなり不思議で、序盤ではそれがあまり説明されない。ここが非常にうまくて、「この世界はどうなっているの?」と好奇心を掻き立てられ、徐々に徐々にどのような世界なのかが間接的に語られていく。おかげでストーリーや舞台設定に興味を持ち続けられた。

過去の BioShock と比べると、今作の舞台はファンタジーな空間という訳では無く、実際の歴史に基づく部分が多くて BioShock シリーズとしては少し違和感がある。このゲームのタイトルを「BioShock 3」としなかったのは、過去の BioShock からの方向転換があったからだろう。Call of Duty ほど歴史的な戦争を描くゲームでは無いけれど、過去のシリーズと比べるとそのような要素が強く出ている。

しかし先ほども書いたけれど、この要素はストーリーそのものにはそんなに絡んでこない。このゲームはあくまでエリザベス(少女)と主人公の関係を中心にした物語。「私とあなた」を描くのは過去のシリーズと同じ。

ストーリーはパラレルワールドもの

ゲーム中盤あたりから本格的にエリザベスとの関係が語られていく。主人公は最初、借金を帳消しにしてくれるからエリザベスを助けたとされていた。しかし、どうもそれには複雑な事情がありそうだと分かっていく。

このストーリーの展開も興味を抱かせるのがうまくて、こちらも「徐々に」いろいろと分かってくる。直接的にこうだと語られないため、少々ストーリーは難しい。それにパラレルワールドを旅するものなので、時系列を整理しないとこんがらがる。

エリザベスはパラレルワールドにアクセスできる。

私はループもののストーリーが好きなので今作のストーリーは楽しめた。しかし SF 小説などとは違い、どのような理屈で平行世界にアクセスできるのか、平行世界はどこがどう違うのか、平行世界に行くと問題が起きないのかなど、細かな設定はほとんど語られない。

その為、どうしてもプレイヤーによって解釈の違いが出てしまい、もやもやしたものが残る。「これはこういうことなんじゃないか」と考えるのは楽しくはあるのだけど、正解はシナリオライターのみぞ知るという形になってしまっている。ここはマイナスポイント。SF というよりもファンタジー。

パラレルワールドは無限にあるという設定なので、エンディングは少し物議を醸している。あまり深く考えすぎない方が良いような気もする。実際はたぶん単純なことなのだと思う。

エンディングの疑問をちょっとだけ書いておきたい。ネタバレなので灰色文字にする。洗礼の儀式で主人公が殺されるわけだけど、パラレルワールドが無数にあるとすると、一つの世界の主人公を殺しても意味が無いのではないか。ストーリー上、ブッカーとカムストックの分岐点の手前で殺せばすべてが解決するとしているけれど、こう結論づけたのは何故だろう。「過去は変えられない」のでは…? となると、「今」の主人公を殺したことになるけれど、これでカムストックが存在しなくなるのだろうか。

このゲームはゲームを2周プレイしないと意味が分からないことが多い。1周目で大まかにストーリーを理解した後、もう一度最初からプレイを開始してストーリーを見ていくとかなり理解が進むと思う。ストーリーを深く理解したい人は2周目をプレイするのがほぼ必須だろう。

でもそんなに時間を掛けたくないと思ってしまったので、私は2周目はパス。私と同じような面倒臭がりな人や、時間が無い人、手っ取り早くストーリーの解説を求めている人は、BioShock の Wikiこちらの方の日本語での解説などを見ると分かり易いと思う。

戦闘

実を言うと、戦闘はあまり楽しくなかった。私はスナイパーライフルをずっと持ち続けた。サブウェポンとしては RPG を。特殊能力(今作ではビガーと呼ばれる。プラスミドのようなもの)はあまり使わなかった。これを使っているより敵の頭を撃ち抜いた方が早い。

ビッグダディのような強敵も登場しないため、戦略的にどうこうという要素は薄い。一応何に使うか丸わかりな、オイルがこぼれた地面や水たまりも存在するけれど、その範囲が狭いため、武器で敵を撃ち倒した方が早い。戦闘に戦略性が無くなってしまった。過去の作品では敵を凍らせてからレンチで叩いていたのが懐かしい。

特殊能力を使っている場面。敵の弾を止め、跳ね返すことができる能力。

またギアという特殊機能(近接攻撃をすると敵が炎に包まれる、敵を倒すと弾薬を落としやすくする、など)を持つアイテムを装備できるけれど、ゲームを煩雑にしただけでそんなに有り難みが無かった。あっても無くてもそんなに変わらない。もう少し戦闘に爽快感があると良かった。

爽快感といえば、今作では空中にレールが存在し、これにフックを引っかけてマップを移動したり敵と戦ったりする要素が増えた。移動は高速なので爽快感はある。今作は平面的な戦闘では無く、マップが立体的に作られている。うまくやれば上の位置から下にいる敵を狙うことができる。

これも最初は目新しくて良かったのだけど、私はそんなに有効活用しなかった。敵から逃げるときに使ったくらい。でも戦闘時にマップを高速に移動できるのは面白いと思う。ただ、それが戦闘にもっと生かされれば良かった。このレールを使うと完全に有利になるわけでもない。となると使わなくても良い。

今作は敵の種類も少なく、戦闘要素はほどほど、という感じ。過去の BioShock の方が戦闘は楽しいと思う。今作はストーリーがメインだろう。

頻繁なアイテム拾いはプレイに集中できなくさせる

ストーリーの理解にはこのシリーズで登場する音声を録音した記録アイテムが必須なのに、これはステージの分かりにくい場所に落ちているため見落としてしまうことが多い。拾ったかどうかで理解度にかなりの差が出てしまう。こういうのは止めて欲しい。今作はストーリーが複雑なので確実に拾わせてくれても良かったはず。

このシリーズ全体に言えることだけど、アイテムを拾うのはかなり面倒。私はアイテムを残さず拾いたいので、ゲーム中は樽や木箱などを調べてばかり。視点をあちこち移動させるので、この所為でも酔いやすくなっている。今作は FoV が狭くて酔いやすく、その上あちこちを見回さなければならないので酔いやすい。でも FoV を広くしたらずいぶんと改善された。FoV を広げるやり方はこちらで書いた

アイテムを拾い集めなければならないことの弊害には、アイテム拾いが忙しくてあまり景色を眺められないということもある。地面にお金が落ちていないかなと下を向きながら歩く。なんて悲しいのだろう。立体的なステージ構造もアイテム探しを大変にしている側面がある。

プレイヤーに頻繁にアイテムを拾わせるはできれば止めてもらいたい。アイテム探しが無ければストーリーや景色にもっと没頭できるのに。

その他、良かったこと悪かったこと

ホラー要素はほぼ無くなった。ホラー要素があると怖くて嫌だけど、それが無いと BioShock シリーズとしては少し物足りないように感じた。今作も振り返ったら敵がいたという場面が1回あった。少しびっくりはしたけれど、ホラー的な驚きは皆無。過去の作品に見られるような、ほんのりと不気味という世界の方が良かった。

進むべきルートを表示させることができるのは私にとっては良い機能だった。アイテム探しがあるのでマップを隈無く探索したいけれど、行った先でストーリーが進んでしまうと困る。そんなとき、進むべきルートを表示させ、それとは違う方向を探索する。これは非常に便利だった。

進むべきルートを表示。数秒で消える。Dead Space 3 と同じようなもの。

手動のセーブ機能が無いのは大きなマイナス。ゲームを止めたいのに止められないことが多かった。次のチェックポイントに行かないとセーブされないため、プレイが制限された。

おわり

以前、ゲーム中で洗礼の儀式が強制されることが問題になったこともあった。私はそういう宗教に馴染みが無いので、自分でプレイしてもこれに不快感を感じられなかった。でもこれを嫌う人がいるのは理解できる。改宗行為に近いわけだろう。これは「プレイヤー=ゲームの主人公」なのか、という問題に関わるけれど。

今作は全体的には良質なゲームだと思う。ただし、BioShock シリーズとしては少し異色。少女を守る父親、父性要素は同じくある。でも今作は歴史に則る部分が多く、現実的な世界観だと感じたRapture のような少し狂った耽美は感じられなかった。世界がそんなに狂っていない。

「美しさ」というテーマからは今作は離れた。「極端さ」は今作でもテーマになっているようだけど、その対象は美しさでは無い。ここはちょっと物足りない。ダークな美しさは BioShock の魅力だった。無くなって気づく。エンディングで Rapture に訪れたとき、その美しさを思い出してしまった。

今作のヒロインは「少女」というよりも女性で、19歳ほど。でも彼女と街中を歩くのは楽しかった。「JK おさんぽ」のようなものを疑似体験できる。彼女は主人公が助けるまで塔の中に閉じ込められていたので世界が新鮮に映るのだろう。彼女の反応は微笑ましい。

ちなみに今作は前作をプレイしていなくてもほぼ問題ない。シリーズものはストーリーが続いていくとどんどん売り上げが下がる傾向にあるけれど、Infinite は BioShock 3 では無いのでストーリーは切り離されている。戦略的には良い。

どこかしら過去の作品と関連があるように描かれてはいるものの、未プレイの人でも大丈夫。こういうデザインは助かる。人気のシリーズをプレイしてみたいけれど、過去の作品を最初からプレイしなくてはならないとなると大変すぎる。

DLC は未プレイ。Season Pass が安くなったら買おうと思う。

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About

Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。

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