『Ace Combat Assault Horizon EE』レビュー - フライトシューティングゲームはFPSよりも熱中できるのかも

2019/06/06 2013/06/18


エースコンバット アサルト・ホライゾン - PS3

この前 Strike Suit Zero をプレイし、最近の Ace Combat はどんなものかとプレイしたくなった。私は Ace Combat シリーズをプレイしたことが無く、PC 版の Ace Combat を探したら "Ace Combat Assault Horizon Enhanced Edition" が見つかった。こういうゲームをプレイしようとすると PC ではほとんど選択肢がない。むしろ PC でも Ace Combat が出ていたのかと驚いた。

このゲームはゲームパッドでプレイした。でもやはりエイミングが難しい。「ゲームパッドで FPS なんて」に少し通じ、私には照準の微調整が出来なくて敵に全然機関銃が当たらない。

プレイし初めて最初の数時間は私にとってはあまりプレイした事の無いジャンルのゲームなので楽しかった。ゲームをプレイしながら、もしかするとフライトシューティングゲームは FPS よりも熱中できて楽しい時間を過ごせるのかもしれないと考えていた。

このゲームでは敵を遠くから、または敵の機体の前面からロックオンしてミサイルを撃っても当たらない。その為、敵の後ろに付き、ずっと敵を追い続けられるように自機を操作するのが重要。敵もロックオンから逃れようと色々と動くのでそれを追いかけるのも熱い。この時にもし敵にうまく照準を合わせられるなら機関銃を撃ってダメージを与えらるともっと速く敵を撃墜できる。しかし、敵を追いかけながら照準を合わせるのは難しい。敵が急旋回するときに備え、敵機からはある程度の距離を保っておかないとならないので、機関銃を当てようとして敵に近づきすぎることはあまり良い戦法では無い。敵の操縦がうまければうまいほど。

ゲームパッドの操作性に加え、照準の操作にはマウスを使えると FPS よりも面白くなりそうだ。ただ FPS と大きく括るとゲーム性の違いがあるので、ここではスポーツ系 FPS に通じるものがある、という事を言いたい。Ace Combat はキャラクターの移動が速く、それに合わせて照準を合わせる必要がある、Quake や Ureal Tournament に通ずる。移動できる場所が空なので、建物内部を移動するよりも移動の複雑さも増しており、うまくやればそういったスポーツ系 FPS を超える楽しいゲームになるだろう。このゲームでは FPS を超えるとは言えないものの、このジャンルのゲームにそのポテンシャルはあると感じた。

少しすると気になる部分が見えてくる

最初の数時間は新鮮で楽しいけれど徐々にこのゲームの悪いところも見えてくる。このゲームには DFM というシステムがあり、敵の追尾をある程度自動的に行ってくれるようなシステム。敵に後方などから近づき、RB+LB を押すとその追尾してくれるモードになる。おそらく Dog Fight Mode の頭文字を取ったものだと思う。DFM の時は自機の操作にアシストが付き少し楽になる。これはまあ初心者救済モードのようなものだと思う。

DFM しているところ。ちなみに "TGT_LEAD" という文字が敵機の左に少し見えると思う。これが DFM をしないとミサイルが当たりにくい敵機。

しかし問題は、この DFM を行わないと倒せない敵がいること。戦闘機に乗っている敵パイロットによって、つまりうまいパイロットが乗っている戦闘機は、DFM を使わないとミサイルがほぼ当たらない。キャンペーンの後半では敵がもの凄くうまく動くようになり、遠くからロックオンして撃ったミサイルなどするすると避けていく。ストーリー上の重要な敵は必ず DFM をしないとならない。

他にもカットインが邪魔だ。敵機などを撃墜した際に、その撃墜シーンが数秒カットインされることがある。最初は「おー」と眺めていたけれど、ゲームが難しくなってくるにつれて、その数秒が惜しくなってくる。例えば、敵2機を追っているとして、まずは1機目にミサイルを当てて撃墜した。さあ2機目だ、という時に1機目の撃墜シーンがカットインされる。カットイン中も時間は進むので、そうすると自機が今どこを飛んでいるのか分からなくなり、敵の2機目はカットイン中に旋回して逃げていく、なんてこともある。

さらに良くないのは、ストーリー上の展開で、DFM を必ず行わなければならず、さらにその最中に演出のカットインが入るときがある。ビルの間をかいくぐるように敵を追っているときにカットインは困る。一応 DFM 中なので、ある程度の機体の操作を行ってくれてビルには激突しないけれど、頑張って追いかけている時に演出をカットインされると今までの熱中がちょっと冷める。

この感じはどこかで体験した…、と記憶を探ってみると、これはファストペースなレースゲーム、Burnout でも感じたことだった。Burnout はレース中に敵の車に自分の車をぶつけ、敵の車を壊せる。敵の車を壊したとき、その車がガードレールなどに当たって横転する様がカットインされる。カットイン中も時間は進み、レース中なのでプレイヤーはコースを走っており、カットインされると自分の車がどこを走っているのか分からなくなってしまう。カットイン中は自動操作されてコースを外れないようになっているものの、カットインが終わって画面が戻ってきたときに急なカーブに差し掛かっていたりするとかなり困る。Ace Combat AH でのカットインもそれに近い。

他にも FPS から例を出すと、Sniper 系の FPS ゲームにもこれは良くある。遠くから敵をスナイプして、うまくヘッドに当てるとき、撃った弾がヘッドに当たる様を拡大してカットイン演出する事が良くある。最初はこれが楽しいものの、段々と飽きてきて、カットインの度にゲームが中断されるのでテンポが狂う。遂には「いちいちカットインするの止めてくれないかな」と思うようになるはず。

他の悪いところは、カウンターアタックが必ず必要な場面があること。敵の追尾からどうしても逃げられない場面があり、その時はこのゲームのシステムの1つであるカウンターアタックを使わなければならない。これは敵機が自機のすぐ後ろに付いたとき、自機の速度を遅くしてから自機を翻して敵機の後ろに付くという動作で、追いかけられても逆に敵機の後ろに付けるよ、というシステム。便利なのは分かるし、初心者向きであるのは良いけれど、敵を振り切る楽しさに欠ける。

フライトシューティングに他のゲーム要素は要らない

気になるところを書きまくりだけれどもう少し書かせて欲しい。私は戦闘機での空中戦をしたくてこのゲームを買った。でもこのゲームはキャンペーン半分ほどに違うゲーム性の、おまけゲームが含まれている。

ドアガンをしたり上空から地上を爆撃したり。戦闘機では無く、ヘリに乗せられたり。何がしたいのか分からなかった。Call of Duty をプレイしているかと思ってしまった。あのゲームも FPS なのに上の画像と全く同じ場面が存在する。戦争ゲームとしての CoD に、Ace Combat を近づけたかったのだろうか。人が銃をもって撃つ要素だけでは無く、総合戦争ゲームとしての CoD の悪いところをまねてしまったのだろうか。上から爆撃は特につまらないので止めて欲しい。

他にも、戦闘機には乗っているものの、対地戦闘があるのは私はつまらなかった。戦闘機に乗って、地上にある敵の対空砲を機銃やミサイルで壊したりする。戦争ではこういうこともあるのは分からなくは無いのだけど、ちまちましたプレイだということは否めない。地上のこまごまとした標的に照準を合わせ、ミスしない様に撃っていくのは辛かった。ミスした敵がいるとまた戻って同じ事をしたり。私はこんなゲームをしたいのでは無い。

操作方法について

ちょっと話は変わって、操作方法のお話。このゲームでは操作が2種類あり、Optimum(最適モード) と Ace Combat シリーズ伝統の操作方法を選べる。最初はもちろんデフォルトの Optimum にしておいた。これはアナログスティックを横に倒せばその方向に機体が動くモード。この操作方法は移動のさせ方が分かりやすいものの、敵を追っているときには細かな操作ができない。

この原因は私は機体の自動バランスだと思う。Optimum では常に自機を地上に水平にしてくれるので安定する。その一方で、アクロバティックな動きが出来なくなる。そのため敵を追いにくい。そこで、Ace Combat シリーズ伝統の操作方法にしてみたところ、慣れるまでに時間が掛かったけれど、敵を追いやすくなった。操作は左右で機体をロール(機体軸に対して回転) させ、上下で機体を持ち上げたり下げたり。つまりこのモードでは画面の横へアナログスティックでは直接的に行けない。

Optimum では出来なかったインサイドループなどが簡単にできるようになったは大きい。Optimum ではインサイドループをしようと思ってループを描き出すと、機体のバランスを取ろうとするようでおかしな動作になってしまう。

インサイドループ。Wikipedia より

ただあの有名なインメルマンターンは Optimum の方が楽だ。上昇して機体がひっくり返ったらアナログスティックをただ放せば、オートバランスで似た様な動作になる。

インメルマンターン。Wikipedia より。このゲームではインメルマンターンをしてもほぼ意味が無かったりする。敵の追尾から逃げられない。

私は Ace Combat 伝統の操作方法の方が良いと思うけれど、確かに難しいのは分かる。「水平」を常に意識しないとならない。ただ、このゲームではその水平が分かりにくいのは問題ではある。Ace Combat 伝統の操作は慣れてくるとかなり自由に空を飛べるので、機体を逆さまにしたまま敵を追跡してニヤニヤとすることもある。リアルかどうかは別にして、そういった楽しい動作が出来るのは良い。

総評

全体的には悪いところも多々あるのだけど、フライトシューティングというジャンルの面白さはなかなか堪能できて満足感はあった。敵を追って撃墜するのは面白かったし。ところで、Ace Combat シリーズのファンにはこのゲームは評価が低い。私は以前のシリーズを知らないので、それらと比べて評価していない。低評価の人のレビューを見ると、以前の Ace Combat の方が面白いという意見が多く、Ace Combat 6 などをプレイするとこれよりも楽しいかもしれないという期待感が生まれてくる。もっと空中戦を楽しめるならプレイしてみたい。

低評価のレビューはこのゲームを「フライトシミュレーター」である前提で評価してあることが多い。そういう面がこのシリーズにはあったのだろう。つまり、このゲームはその枠組みから外れ、シリーズの中ではカジュアルゲーム寄りなのだと思う。Ace Combat と言うとフライトスティック・コントローラーを持っていないと操作が難しく、通常のコントローラーでは楽しめないというような雰囲気が合ったけれど、そういう操作方法を止め、より万人向きにしたのだろう。そして戦争ゲームとして戦闘機以外の要素も入れ、このゲーム一本で戦争ゲーム全般をある程度体験して満足できるようにした、と。カジュアルゲーマーならこのゲームで満足できると思う。戦闘機の難しい動きなんて手に付けなくて良いし、DFM を使えば頑張って敵を追わなくても敵を倒せる。

こういった面がこのゲームにはあるので、ただ単に「フライトシミュレーターではない」として批判は出来ないように思う。世界的にゲームはカジュアル寄りになってきたのもあって、たぶんそれを考慮したのだと思われる。

実は私がこのゲームに驚いたのは、プロデューサーなどが日本人な事。バンダイナムコが発売している事も私は知らなかった。日本人がこういうゲームを作るのは珍しいように思う。「フライトシミュレーター」というと、パイロット席の操作パネルをカチカチと操作して、滑走路から離陸、さて無事に飛び立てるか、というゲームだと思っていた。でも世間的には Ace Combat シリーズもフライトシミュレーターの中に入っているらしい。このゲームをプレイしただけでは、そこはちょっと分からない。

私はシミュレーター系のゲームは嫌いで、ゲームとして楽しい方が好き。レースゲームで言うと例えば、Test Drive Unlimited よりも Burnout の方が好き。操作が楽だし、対向車線を走ると何故か溜まるブースターなどという訳の分からないもので突然加速できるのは爽快だ。スノーボードゲームでもアドレナリンを放出して加速できる訳分からないシステムの方がゲームとしては爽快だ。ゴリゴリのシミュレーターというジャンルで Ace Combat を推されていたら、私がこのゲームをプレイする事は無かったことだろう。

意外にも長く所感を書いてしまった。今回はキャンペーンでゲームに満足してしまい、マルチプレイは試していない。でも PC 版はプレイヤーがいなくてマルチプレイは出来ないことだろう。


エースコンバット アサルト・ホライゾン - PS3

「ゲーム」の最新記事

その他の最新記事

About

Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。