SoundPeats から「Air4 Pro」の提供レビューの依頼を頂きました。「Air4 Pro」は「SoundPeats の最新実用機能全部入り」という謳い文句で、とても興味があり試してみることにしました。
私が普段使っている「Jabra Elite 5」と比較していきます。
目次
SoundPeats側が特筆したい特徴
- Qualcomm チップ「QCC3071」採用
- aptX Adaptive Lossless / Snapdragon Sound 対応
- 13mmダイナミックドライバー
- マルチポイント
- アダプティブANC機能とCVCノイズキャンセリング
- 装着検出機能
- 風切り音低減
「aptX Adaptive Lossless」はついに aptX でロスレスです。ただ、Snapdragon Sound に対応した端末で無いと有効になりません。
マルチポイントも良いですね。私はスマホと Fire TV で使っているのでマルチポイントでないと困ります。
SoundPeats はこれまでは ANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)に対応した製品が少なかったので ANC は良いですね。
私は「Air4 Pro」はイヤホン片方の重さが 3g というところが良いと思うのですが、最近は他社の製品も軽いものが多く、もはや際だった特徴では無くなってきたのかもしれません。
充電ケースが自立しない、丸くて滑る
充電ケースは底面に充電用の USB-C ポートが付いています(隣はペアリングのボタンです)。このことからも分かるように、充電ケースは横に寝かせて使うタイプです。
「Jabra Elite 5」の充電ケースは自立しますので、こちらの方が良いですね。
以前レビューした「SoundPeats Engine 4」もそうですが、SoundPeats は何故か充電ケースを自立させないように作っています。自立するケースの方がイヤホンを仕舞いやすいのですが…。

また、丸くて滑りやすいのも「SoundPeats Engine 4」と同じです。
歩きながらイヤホンをケースにしまったりする場合、落としてしまう可能性が高いです。
「Air4 Pro」はイヤホンに棒が付いているような形状で、この棒を充電ケースの穴に入れなければならず、仕舞いにくいです。これを歩きながら行うのはちょっと大変そう。
「Jabra Elite 5」の充電ケースと比べるとやや大きめです。
「Jabra Elite 5」と音を聞き比べ。「SoundPeats Engine 4」と同じような音の傾向
最近私はずっと「Jabra Elite 5」を使っていますので、これと「Air4 Pro」とを聴き比べた感想を書いていきます。
以前レビューしたように「Jabra Elite 5」もそんなに優れた音のイヤホンではないのですが、とりあえずこれと比べます。

価格は「Jabra Elite 5」の方が2倍高いのを一応念頭に置いておいてください。
「Jabra Elite 5」と比べると、再生可能な周波数帯域が狭いのがまず気になります。「Air4 Pro」はスペック上は「再生周波数帯域 20Hz~20KHz」と書かれています。
しかし明らかに、低音の中の低い方と、高音の中の高い方が聞こえません。音がかなり小さくても技術的に 20,000Hz までの音を出せさえすれば「20,000Hz まで再生可能である」とは言えて表記できますので(私を含め人類のほとんどは 20,000Hz を聞き取れませんが)、いわゆる「令和最新式」などの中華イヤホンも再生周波数帯域のスペックは良いです。
音の空間(音場感)も狭く感じ、音が耳に近く、残響音がうまく再生できていません。
ドンシャリ傾向の音で、特に低音が強く、中高音域が引っ込んでしまっています。そのためボーカルがやや弱く聞こえ、楽曲のバランスが悪く感じられます。
最近は低音重視の楽曲が増えているのと、イヤホンで音楽を聴く人は低音が聞こえていればとりあえず満足する傾向にあるため、それに合わせたのかもしれません。
なお、このレビューはイコライザーで弄っていない、デフォルトの状態での音で比べています。公式アプリでイコライザーがありますので少し音に変化を加えられます。
音は解像感がやや悪く、全体的に丸い音になっています。耳に刺さるようなアタックが強い音が苦手な人にとっては聴きやすい音だと感じるかもしれません。
解像感が低いので音の分離が悪く、鳴っている音に気付けないときがあります。
毎度の事ながら、Billie Eilish の「bad guy」を例に取ります。終盤で曲調が変わる部分です。下の動画では 2:45 から。
↑ 2:45 から曲調が変わる
この時、Billie Eilish がベースのシンセサイザーの音に合わせて「うーん」と歌っている声が入っているのが分かりますか?
「Air4 Pro」はシンセサイザーの音と混ざってしまっていて聞き取りにくい。「Jabra Elite 5」は完全に分離してよく聞こえます。かなり差があります。
「Air4 Pro」は以前試した同社の「SoundPeats Engine 4」と同じような音の傾向です。
音に関しては「SoundPeats Engine 4」からそんなに進化はしていませんでした。
ノイズ・キャンセリングとヒアスルー(外音取り込み)が付いている。ヒアスルーはうまい
以前は「Air4 Pro」の価格(7,000円ほど)では ANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)が付いているイヤホンはありませんでしたが、最近はこの価格帯のイヤホンでも ANC が付いています。
イヤホンをよく見るとマイクの穴が所々にあります。
このマイクから音を取り込んで ANC とヒアスルー(外音取り込み。この製品では「パススルー」と呼ばれている)に利用しています。
ANC を使ってみたところ、そこそこ効いていると感じました。
「Air4 Pro」の ANC は高音よりも低音に効果があるタイプです。高音のノイズキャンセル能力は低いです。
私は「Air4 Pro」の ANC はちょっと苦手で、ANC を ON にすると山などの気圧が低いところに行ったときのような不快感が少しあり、ちょっと具合が悪くなります。
Jabra のイヤホンはイヤーピースが耳にとても良くフィットするため遮音性が良く、耳に入れるだけで周囲の音がかなり聞こえなくなりますが、「Air4 Pro」はそういうことはなく遮音性は悪いです。
まずは ANC を ON にするよりも、イヤーピースを良いものに変えた方が良いかもしれません。私は 「Jabra Elite 5」では ANC を使っていません。
ヒアスルー(外音取り込み)については、「Jabra Elite 5」よりも音が自然でうまいと感じました。この価格にしてはかなり使えると思います。
ただ問題は、ANC とヒアスルーと通常モードの切り替えに少しストレスがあること。
「Air4 Pro」は左イヤホンのタッチパネルを 1.5秒間、触り続けて放すとノイズ・キャンセリングのモードが切り替わる仕組みになっているのですが、その 1.5秒というのが難しい。
1回タッチしてすぐ放すのは音量を下げる操作で、触り続けている時間が短いとその「音量を下げる」操作だと認識されてしまい、ストレスがあります。
長く触り続ける分には問題が無く(他の長押し操作が無い)、私は 2秒くらい触り続けてノイズ・キャンセリングを切り替えています。2秒間も触り続けるというのがストレスです。
モード切り替えは「ANC → ヒアスルー → なし」というサイクルですので、「ANC を ON にしたけどやっぱり OFF にしよう」という場合に時間が掛かります。
タッチパネル式のイヤホンはどれも操作にストレスがあります。パネルを素早く2回タッチするなどの操作もあるため、ユーザーのパネル操作が完全に終わったことを感知しなくてはならないので、認識にラグがあり、目的の操作完了までに時間が掛かります。
まとめ: 悪い製品では無いと思うが、今は選択肢が多く、購入の決定打に欠ける
「Air4 Pro」は 7,000円ほどという価格で、ANC もヒアスルー(外音取り込み/パススルー)もあるというのは良いです。
以前は ANC とヒアスルーという機能は2万円くらい出さないと買えなかったのですが安くなったものです。
「Jabra Elite 5」と「Air4 Pro」の音を比べると「Jabra Elite 5」の方が音が良かったのですが、そもそも価格帯が違うイヤホンです。7,000円ほどでこの音質とこの機能ならそんなに悪くありません。
普段スマホのスピーカーで音を聞いている人や、そもそも音にそれほどこだわりが無い人ですと、「Air4 Pro」で満足できそうです。
ただ SoundPeats の製品は専用アプリを使うにはユーザー登録をする必要があるのが気になります。
私にとってはこれが大きなマイナスポイントです。何でユーザー登録をさせるのでしょうか。アプリを使うと個人情報を収集されますし、もっと気楽に使いたいです。
Amazon でイヤホンの売れ筋ランキングを見ると、最近は SoundPeats の製品があまり売れていないようで、Anker が人気のようです。
「Anker Soundcore Life P3」は SoundPeats の「Air4 Pro」と同じくらいの価格で、完全にライバル製品です。
ただ「Anker Soundcore Life P3」はデザインがすっきりしているし、充電ケースもイヤホンを寝かせて入れるタイプで使いやすそう。もちろん ANC もヒアスルーあり、ワイヤレス充電対応。
防水は「Anker Soundcore Life P3」が IPX5 で、「Air4 Pro」は IPX4。
Anker が弱いのは対応コーデックですね。SBC と AAC。AAC でもそれほど問題にならないと思いますが、私の経験上は aptX の方がラグが少ないです。ただゲーミングモードがあるので現状はどうなっているのか分かりません。
Anker の「Soundcore Space A40」や、上位モデルの「Soundcore Liberty 4」は LDAC に対応しています。
7,000円ぐらいの製品としては Earfun の製品も売れているようです。
Jabra も同価格帯かちょっと下の価格の「Elite 3」に ANC・ヒアスルーがあります。「Elite 4」の方がこの価格帯に近いでしょうか。
他にもAmazonの「Echo Buds」、Xiaomi の「Redmi Buds 5 Pro」などもあります。
こう見ると 7,000円 くらいの価格帯はかなりの激戦区ですね。普段よりもちょっとだけ良い音で聴こうとした時に 7,000円くらいだと手を出しやすいです。
どの製品も機能と形がかなり似ていて、秀でたところを見つけにくい状態です。
このくらいの価格帯だと「高音質」という謳い文句はそれほど関係なく、再生可能な周波数帯域とか、高音質コーデックへの対応とかはそんなに気にしなくてOKです。
せっかくの高音質なデータを全然生かし切れないので無意味なのですが、普通の消費者はよく分からないので「ハイレゾ対応」とか言われると「凄そう!」と思ってしまいます。
私が上の中から選ぶなら、イヤーピースの良さと物理ボタンの方が操作が早いのと、防水防塵 IP55 の「Jabra Elite 3」を選ぶかもしれません。ちょっと安いですし。
あと、すっきりしたデザインと充電ケースの良さを取るなら「Anker Soundcore Life P3」。
「Air4 Pro」は他の製品と比べてどこが優れているんだろうかと考えると、これと指摘できず、かなり難しい。ヒアスルーは良かったです。あとは「Anker Soundcore Life P3」よりも安いことくらいでしょうか。