初めは告白されるシーンらしきところから始まる。「ありがちな…」と少し感じてしまった。日本のビジュアルノベルを参考にしているのだから当然と言えば当然だったり。でも、実はこのシーンは短く、すぐに終わる。それは相手の告白を聞いた後に主人公が心臓発作を起こして倒れてしまうから。
ムービーも流れる。すごい。日本のゲームに良くある、歌を流しながらのムービーでは無いので私としては高評価。静かなメロディーと共に絵が映っていく。
心臓発作で倒れた後、主人公が病室にいる場面となる。どうやら主人公は不整脈らしい。「Arrhythmia」という単語が並ぶ。告白のシーンとは打って変わってかなり重いシーン。数ヶ月間病院にいたらしく、いつになったら退院できるのかを聞くのは止めたなどと、その時の様子が語られる。でも、この日は少し特別な日だったらしい。医者から「家に帰っても良いけれど、病状などの監視が必要だからホームスクールにするか障がい者用の学校に行くかどちらかを選ぶといい」と言われる。主人公は自分が Disabled と呼ばれる事への抵抗や、両親にはホームスクールのための資金が無いから選択肢が無いこと、自分に必要なたくさんの薬のリストなどからげんなりしてしまう。
日本のビジュアルノベルというのは、基本的には障がい者を登場させるのは避けてきた。「周りから疎まれる人間」というテーマはあったのだけど、障がい者はほとんど出てこない。目の見えない先輩、しゃべれない後輩がでてくるあのゲームは全体から見ると珍しい。私は「かたわ少女」が障がい者をテーマとしているところに少し興味を惹かれた。日本人が作るいわゆる「萌え」にはもう随分前に飽きた。日本人の感覚とは違った海外の人が作るシナリオはどうなるんだろう? 日本のゲームのシナリオとは違うように作ってくれてあるなら有り難い。日本人の感覚とどのように違うのかをちょっと見てみたくなった。
障がい者をテーマとした作品ということでストーリーを読み進めていったのだけど、あまりにも進展が無く、ストーリーが普通すぎて飽きてしまった。「これは日本の作品のどこかから取ってきたアイデアだな」と感じるところも多かった。
例えば、生徒会に入らないかという誘い、話を強引に進めていくクラスメイト、周りに無視されているようなクラスメイトを気に掛ける主人公、学園祭が近い、などなど。ちなみに、上の画像の左下の生徒。これを見て気付いただろうか。「涼宮ハルヒの憂鬱」の有名なシーンからのパロディだったりする。他にも何かあるのだろうけど私には分からない。
「生徒会に入らないか」。強引に誘おうとする少女達と、あまり気が乗らない主人公。言葉の語尾に「~」が付くのは日本のゲームかマンガの影響。
私の一番の不満は、障がい者なのに普通すぎるという事。おそらく Disabled のレベルが低いのだと思う。耳が聞こえない、指が一つ無い、片腕が無い、義肢、ユニークフェイス、など色々と設定があるらしい。こういった障害の人達は、その障害があっても実際にはほとんど普通の人と変わらない。私はもっと重い病気などを想像していたので、意外にも普通で肩すかしを食らってしまった。私がプレイした数時間では、しゃべれない人とその通訳者が画面を占有している普通の学園もののシナリオだった。まあ確かに重々しい病気を出してこられてもビジュアルノベルとしては疲れてしまうか。「そんな重苦しいものまでゲームに持ち込まないでくれ」とシナリオライター含めみんな思っているのかもしれない。
右が耳が聞こえない少女で手話を通して話す。左が通訳者で手話ができる。プレイしたところまででは左の少女の障害については語られなかった。
他にも、主人公が病院のベッド生活を終え、あまり気が乗らない障がい者用の学校に来て、その校舎が綺麗で広いのに驚き「想像していたのと違う! いいね、この学校」と気分が一転してしまうのはどうなのだろう。こんな事で心が軽くなってしまうとは。「綺麗で広々としている」という設定はゲーム中に使う写真の関係でそうしたのではないかと想像しているのだけど、主人公の心をほぐすのにもう少し別の方法があったんじゃ無いか。
あと学校に慣れるのが早すぎる。到着したその日にもう学校生活に慣れている風なのはちょっと。
この後のストーリーは私は興味が無い。予想しておくと、
- クラブ活動か生徒会を通し、学園祭の準備で女の子と仲良くなる。
- 主人公か相手に、自身のトラウマや病気によって何か起きる。
- それが解決し、心も体も仲良くなる。(18禁ゲームなので)
- 「そうか、障がい者も普通の人間なんだ」と再確認する。
こんな感じなんじゃ無いかと。こうなると興味が湧かない。ただ、「かたわ少女」は無料で作られているのであまり強いことは言えない。この作品を楽しめるだろう人を考えると、おそらく日本のビジュアルノベルをプレイした事が無い人は楽しめると思う。あまり海外の学校という雰囲気が無いし、クラスメイトの名前は日本人のそれだし、学校の慣習も日本のもの。
あれ、もしかして日本のゲームを英語に翻訳した程度のものだったり…? いや、障がい者が出てくるところに違いがある…あったらいいな。