ワイヤレス・オーディオデバイスだとあなたの世界は60ms以上後のもの。貴重な初期反応の60msが失われる
最近はゲーミングデバイスがたくさん発売されるようになり、オーディオ関係にもゲーミングが入り込んできています。
「何でもかんでも "ゲーミング" と付ければいいのか」と揶揄されていますが、開発競争によってレイテンシーを下げてくれるなら有り難いことです。
私は「ゲーミング・ケトル」が欲しいですね。お湯になるまでのレイテンシーを下げて欲しい。一瞬でお湯になる電気ケトル。あれ、前にそんなものがあったような…。
「ゲーミング・宅配便」も良いですね。注文したらすぐに荷物をワープさせて届けて欲しいです。
それはさておき、私が以前から興味があるワイヤレス・オーディオデバイス。今日Razerが低レイテンシーの新しいワイヤレスイヤホンを発表しました。
Razer が低レイテンシーのワイヤレスイヤホンを発表。そのレイテンシーは…
今日、Razerが新しいワイヤレスイヤホン「Razer Hammerhead True Wireless Pro」を発表しました。
紹介文が興味深いです。
かつてないほど進化を遂げたイヤフォンで、周囲音をシャットアウトした真のピュアな音質をお楽しみください。THX® 認証サウンド、高度なハイブリッド型アクティブノイズキャンセリング、および 60ms の低レイテンシー接続により、ゲーム、音楽、ビデオにかつてないほど集中できるようになります。
Razer が頑張って低レイテンシーにして最小 60ms の遅延になったようです。
おそらくこの最小値は音質を下げ、PCに負荷の無い状態でのものでしょうから、実際の利用では余裕を見て 60ms~100ms くらいに考えておいた方が良いでしょう。
ゲーマーの反応速度は 200ms 台
マウスのクリックの反応速度は普通の人は 300ms くらいです。
ここでの「反応速度」は、映像を見て何か変化があったらどこでも良いからマウスでクリックするテストで、映像の変化からクリックまでの時間を測定したものです。
ゲーマーだと 200ms 台でしょう。もっと早い人は 120ms くらいを叩き出せます。若い人の方が有利です。つまりFPSや格闘ゲームなど反応速度が必要なゲームは若いほど有利です。
自分の反応速度が気になったでしょうか? こちらのサイト(Human Benchmark)で測れます。
私は 200ms くらいでした。昔は本当に調子が良い時は 130ms だったのですが衰えました。
このサイトに統計データがありますので載せておきます。
ブラウザーで測っていることによるラグもありますので、実際は全体的に少し左にシフトしているかもしれません。PC環境によってブラウザーは JavaScript の動作速度を制限していたりするので、正確には測れません。
ワイヤレス・オーディオだと 60ms 以上遅れた世界に生きている
ゲーマーは音を聴いて反応している人が多いです。
そういう人がワイヤレス・オーディオデバイスを使うと、音が遅れて聞こえるので反応が 60ms 以上遅れます。60ms 以上後の世界で動いています。
音を聴いて「敵だ!」と判断しても、敵はあなたより 60ms 以上先に動いています。
マウスのクリックも音の遅れの分だけ遅れ、200ms の反応速度の人が相手にとっては 300ms の反応速度とかになってしまうのです。
即着系の武器(弾を撃った瞬間に弾が狙った場所に届く武器)で戦うゲームで 100ms の遅れとなると、かなりきついです。
即着のスナイパーライフル合戦で対面勝負では、100ms の遅れがあるとほぼ確実に負けます。勝てても運が良かったと思って欲しいです。
ゲーマーでない人は 100ms がどのくらいのラグか分からないかもしれませんが、日本からアメリカ西海岸のサーバーまでの PING(アクションを起こして反応が返ってくるまでの時間)が 120ms くらいです。韓国のサーバーだと 60ms くらいでしょうか。日本のサーバーだと 20ms 以下です。
FPSゲームで 120ms ラグがあると、敵が見えている位置と実際の位置で体1つ分ぐらいずれています。つまり、今あなたが見ている敵の位置から体1つ分、先読みして弾を撃たないと敵に当たりません(「当たった」の判定がサーバーにある場合)。
新発売の Razer のワイヤレス・イヤホンでも最小で 60ms ですから、付けた瞬間アジアサーバーでプレイしている状態になります。
これはもったいないです。勝てる勝負に勝てなくなります。
実際は目と耳の両方で反応しているので目が敵への反応を補ってくれますが、音が映像より遅れているのはたぶん気持ち悪さを感じるはずです。プレイ時の気持ちよさも少なくなります。
FPSゲームに限らず、音ゲーとかでもラグがない方が良いです。
もし音ゲーでしっかりとゲームのタイミングに合わせているのに「PERFECT」を取れない場合、どこかにラグがある可能性が大です。
モニタにゲーム画面が映るまでのラグ、ゲームコントローラーの操作のラグ、そしてワイヤレス・オーディオのラグなど。
できるだけラグは減らした方が良いです。
有線のオーディオデバイスならラグが無いのかというと、そうではありません。使っているデバイスのドライバーなどによってラグはあるでしょう。でも今のところワイヤレスよりもラグが少ないのは事実です。
もう少しワイヤレス・オーディオも頑張って欲しいところです。でも Razer が 60ms としっかりと数値を出してくれたのは有り難いです。指標になります。
ワイヤレス・マウスは随分ラグが減って快適なものになっているのですが、ワイヤレス・オーディオはまだ過渡期ですね。扱うデータ量が大きいせいでしょうか。
ただワイヤレス・オーディオはゲーミング目的だと気になるというだけで、普通の用途だと 60ms は快適だと思います(音質が良いのかは知りません)。ワイヤレスなのも線が無くて快適ですし。
ちなみに有線ですがイヤホンを使ったときの感想は「SHURE SE215-SE」 のレビューで少し書いています。
