派手さがない故に丁寧なストーリーと展開と演技で引き込まれる刑事ドラマ。娘が父親に優しい奇跡『BOSCH/ボッシュ』レビュー

2020/04/30

ベテランの刑事が事件の捜査を行うドラマ『BOSCH/ボッシュ』。

よくある1話完結型のドラマではなく、1つのシーズンで1つの大きな事件が解決します。このため急いだ展開はなく、事件の捜査が丁寧に描写されます。

このドラマは Amazon Original で、今のところ Amazon Prime Video でしか観られません

Amazon Prime Video を観られる方は是非お勧めです。吹き替え版のボッシュの声がかなり合っています。吹き替えのレベルが高い。

原作はマイクル・コナリーの小説「ハリー・ボッシュ・シリーズ」です。

楽しめた度

美人やイケメンで視聴者を釣らない。ストーリーや演技で勝負

このドラマは出演者の年齢が全体的に高めで、美人やイケメンで視聴者を釣っていません。演技やドラマのストーリーで視聴者を引きつけています。

美人やイケメンがいないというとちょっと角が立ちますが、モデルのような美人・イケメンはほぼ登場しません。美形ではないだけで、別に不細工ではありません。

主人公は白髪でベテラン刑事のボッシュ。少し寡黙なタイプで、あまり表情が変わりません。貫禄があります。少し強引な捜査はしますが、事実を元に真実を追究するタイプの刑事です。

世の中には汚いことも必要だということ、警察にも政治が必要なことは理解していますが、その中でできる限り自分が信じる正義を貫き、良い行いをしようとします。

ただ、ボッシュの独善的な正義が危うさを感じさせる場面があり、捜査が適正だったのかいつも責められて調べられています。

正義のための行動が本当に正しかったのかどうかが分からないという緊張感があります。勧善懲悪ではなく、多面的な視点をくれます。

このドラマは捜査でミラクルな発見が起きませんし、派手な展開はありません。地道な捜査で事件を推理していきます。

1話完結型のドラマではよくありますが、天才的な推理をしたり、パソコンでチョイチョイっとやって犯人を特定したり、最先端の科学を使ってこいつが犯人だという展開がありません。

刑事物のドラマとしてはたぶんリアル寄りな方でしょう。銃撃戦や格闘などのアクションシーンはほとんどありません。暴力は現実的な範囲内で行います。私はアクションシーンが多いものは好きではないので嬉しいです。

演技も日本のドラマのように大げさで現実味のないものはなく、観ていて引き込まれます。

ストーリーを追うのにちょっと頭を使う

このドラマはストーリーを追うのがちょっと大変です。

というのも、まずはメインの大きな事件があり、同時に他の事件も起きます。さらに警察組織の政治的な駆け引きの場面も描写され、同時に3~4つの軸がある事を理解しなくてはなりません。

さらにボッシュは子供の頃に母親を殺され、その未解決事件も追っている。視聴者は今どの捜査を行っているのか理解しながら観る必要があります。

1話完結型のドラマではないので、ストーリーはしっかりと追わなくてはなりません。

あと、登場人物が誇張されたり何度も説明はされないので、刑事や捜査の被疑者や参考人の名前を覚えておく必要があります。後でさらっと「○○が言っていたが~」という会話があり、名前を覚えておかないと何のことを話しているのか分からなくなってしまいます。

でもしっかりとストーリーを追っていけば捜査の展開がとても面白いです

展開が親切丁寧なので、「この人が犯人だとするとあの証拠を見つけなければならない」とか、「新たな発見があり、2つの事件がこう繋がるのか」とか、観ている側も考えながら捜査の展開をボッシュと一緒に追っていけます。

Season 1 は展開がちょっと意地悪で、真実を話さない人が多く、事件の事実が二転三転します。Season 1 のストーリーはちょっと複雑かもしれません。

登場する黒人と白人は半々ぐらい。顔の見分けが付かない

このドラマは黒人と白人が半々くらいの割合で登場します。最近は映画やドラマでも黒人が増えている傾向がありますが、このドラマは半々ぐらいでちょっと珍しいです。ボッシュの相方も黒人のベテラン刑事です。

白人対黒人の社会的な対立もドラマに盛り込まれています。

これは私のせいですが、登場人物の顔が似ていると感じて見分けが付かず、苦労しました。主人公のボッシュの顔は特徴があるので覚えやすいのですが、他の黒人たち、白人の女性達は顔が似ています。

私からすると、このドラマに登場する黒人たちや、白人の女性は骨格と髪型が似ている人が多いです。「あれ、これはボッシュの妻だっけ?」と誰なのかよく分からなくなることも。

でもずっと見ていると違いが分かって判断できるようになります。

最初はボッシュの相方の黒人の刑事は新米かと思っていたのですが、子供もいる十分な大人でした。黒人の年齢は見ても分かりません。

「これからも良い友達でいない?」「何のために?」。女を振るのがカッコイイ

ボッシュは仕事で会う女性と親密な関係になったりするのですが、その女性がボッシュを嫌う場面が出てきます。

ボッシュは少し強引な捜査をしますし、全てを話してはくれず、その女性が思うように行動してくれません。それで女性がボッシュを嫌う。

ボッシュが思う正義は少しレベルが高く、その女性の利己的な正義感とはあいません。

その女性と少し気まずくなった後、ボッシュがうまくやって事件やその女性の仕事が解決するという流れになります。

そこで女性が「少し疎遠になったけど、また仲良くしましょう」とボッシュとの復縁を誘うのですが、ボッシュはビシッとその女性を振ります。

これが気持ちいい。恋愛については女性の方が上手・優位というドラマが多いですが、ボッシュは自分を信じてくれなかった女性とはスパッと別れます。

よくあるように「仕方ないなぁ」と折れることはありません。カッコイイ。

ボッシュは自分を利用する女性が嫌いなようです。この姿勢は観ていると気持ちいいです。

「ママには新しい夫がいるけど、パパは一人(で暮らしている)。私はここにいる」

ボッシュの娘は父親を気遣ってくれて優しいです。

海外のドラマや映画などでは娘は反抗的で言うことを聞かず、夜に勝手に抜け出して事件に巻き込まれるというシーンをよく見ますが、このドラマの娘はとても良い子です。頭の悪い行動をしません。

主人公のボッシュは妻と離婚し、別れた妻は新しい男性と結婚。娘はそちらの家で暮らしています。ボッシュは別れた妻とその新たな夫とは仲が悪いワケではありません。

娘はボッシュと会いたいとよく言っていて、たまに会ったり、プレゼントしあったりしています。

新しい夫は仕事で海外に行き、別れた妻は仕事で遠くに行くようになってからは娘はボッシュの家で暮らすようになります。その後、仕事から帰ってきた妻が娘に「こっちで私と一緒に住もう」と言うのですが、その返答が感動します。

「ママには新しい夫がいるけど、パパ(ボッシュ)は一人(で暮らしている)。私はここにいる」

うっ…。泣けます。こんなに優しい娘が海外ドラマで見られるなんて信じられません。現実に存在して欲しい。

娘はボッシュが女性と仲良くしているとちょっとチクッと責めてきますが、基本的には性格が良いです。実は上の言葉も母と現在の夫との仲が良くないと見抜いて母を少し責めている発言ですが、父親としては嬉しい言葉です。

ボッシュは自分に身の危険が迫ると娘を安全な場所に移動させます。こういうところもこのドラマの良いところです。家族は狙われますから。

Amazon Prime Videoで観る(吹替版)Amazon Prime Videoで観る(字幕版)

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Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。