雑談しているのをただ撮影したかのように会話や演技が自然。もはやバカリズムさんが女性に見える『架空OL日記』レビュー
お笑い芸人バカリズム脚本・主演のドラマ「架空OL日記 (Hulu)」。
バカリズムさんがドラマを作るとどんな感じになるのか見てみたら、第1話からとても楽しめました。
日本のドラマ・映画は苦手だがこれは楽しめた
私は日本のドラマや映画がどうも苦手です。
その理由としてはまず、会話が私の体験してきた日常会話からかけ離れていること。かなり前「渡る世間は鬼ばかり (Amazon Prime Video)」というドラマをちらっと見たことがあるのですが、すぐそばにいる人に話しかけているのに、まるで舞台上かのようにみんな大声でハキハキと話していました。日常では有り得ません。リアルさが全くない。
日本のドラマは会話文が日常からかけ離れたものが多く、おかしな言い回しで話しています。マンガの中二病的な言葉をそのまま現実に持ってきたかのよう。そうやって話す人に私はアニメヲタク以外では出会ったことがありません。ヲタクだって中二病的な言い回しだと分かって話しています。たぶん。
そして、日本人の演技が苦手。特にイケメンとかモデルとかアイドルとかの若い人たち(カッコいいから、可愛いから、人気だからという理由で採用された人たち)。頑張って欲しいとは思うのですが、何の影響か分かりませんが、日本のドラマ・映画などではどうしても演技が大げさになってしまうようで、リアルさを感じません。
私はパニックホラーとかサバイバルホラーが好きで、以前「神さまの言うとおり (Amazon Prime Video)」という映画を知って見たことがあります。…主演の福士蒼汰さんの演技がひどい…。いつも同じ顔をして驚いたり叫んだりしています。
でも日本のカッコいいと持てはやされる男性の演技ってどれもこんな感じだよなぁという印象があります。たぶん人気者の彼も何かを参考にしたり、誰かから教えられたのでしょうから、何か要因はありそうです。ストーリーも酷く、すぐに見るのを止めてしまいました。
こんな感じで、日本のドラマ・映画はなんか変に格好付けていて、会話も変でリアルさを感じず、ドラマとか映画を見るなら海外のものばかりを選ぶようになりました。
私はどうも会話や行動が自然かどうかを気にしてしまうようです。海外のものなら本当の会話のニュアンスを私は知らないので、おかしくても気付かないでしょう。気付けなければOKです。
でも「架空OL日記」には日本の日常を感じます。話し方も会話も私がこれまで経験してきたものに近く、違和感が少ないです。
OLの日記ですから、日常を切り取ったように感じられるのはコンセプトとして成功しています。
バカリズムさんも女性として自然で違和感がない
バカリズムさんはOLになりきってブログを書いていたことがあり、それをドラマ化したのがこの作品です。土佐日記のように女性になりきって書いていたわけです。
このドラマは銀行で働くOLの日記を映像で再現したというものです。日記ですから、あれが美味しかった、あの人むかつく、とかいう些細な日常です。大事件が起きたりはしません。
バカリズムさん自身が主演でOLとして登場しています。これが凄いことに、同僚の女友達に囲まれているのですが、バカリズムさんがこのドラマの中では本当に女性に見えて違和感がありません。
バカリズムさんを女性だと錯覚するのは見た目が中性的だからというのも少しはありますが、会話が女性の同士でしている会話に聞こえるから、話している人を女性と判断しても違和感がない、という感じです。不思議な感覚です。
他の役者も含め、このドラマは全体的に自然な演技、自然な会話だなぁと感じます。コメディの要素がありますから、本当の日常会話というわけにはいきませんが、同僚との会話はただ雑談しているのをビデオカメラで取っているだけ、というように感じる場面もあります。
よくある、映画の撮影の休憩中に撮影した舞台裏のビデオのような。声の大きさが丁度良いのかもしれません。
バカリズムさんは大声を発する人ではなく静かなタイプの人なので、性格や会話体験が私に似ていて、会話や演技の「自然さ」が私のイメージと近いのかもしれません。演技の指針を決めたのがバカリズムさんなのか分かりませんが。
日常の些細な笑いに癒やされる
日常を面白く切り取っていて、上司のグチを言ったり、細かなことをああだこうだ言い合ってみたり、大笑いではないですがふふっと笑わせてくれます。人間味があって、はたから見ていて楽しそうだなぁと。撮影も楽しかったでしょう。
私のお気に入りはサエちゃん。ダイエットしようとして「何も食べません!」と宣言したのに、周りの人に食べ物の話をされ、焼き肉に誘われ「…明日からでいっか」と誘惑と戦って負ける様はにこやかに見てしまいました。最初からぐらついていたのですが。
バカリズムさんですからもちろんあるあるも描いていて、お茶っ葉の補充を忘れていたのは誰なんだと愚痴りながら犯人を捜していくうちに、実は自分が犯人だったのに気付き、真実を言えなかったとか、共感できる些細なことも描いています。
重いストーリーがあって展開していくドラマではなく、軽く見てニコッと笑えるドラマとしてとても優秀なドラマでした。このドラマで息抜きができます。
ゆるく軽い気持ちで見始められるのは良かったです。他のドラマのように「ストーリーを理解しないと…」という気構えが要りません。寝る前にちょっと見ようかな、ぐらいの気持ち。「夏帆ちゃん可愛いなぁ」と思っているとすぐにエンディングになります。
全10話と短いのが残念ですが、引き際が良いかもしれません。マンガでもドラマでも日常を描くタイプのものはダラダラとやっていくと何でもかんでもツッコんでいかなくてはならなくなり、作品を続けること自体が目的になってしまいます。
最近映画化され、2020/2/28 に公開されたようです。映画がネットで見られるようになるのを期待しています。ドラマは Hulu でオリジナル版(ノーカット版)が配信されているので、映画も Hulu が配信してくれるでしょうか。