『FARGO/ファーゴ』の Season 1 の第1話を試しに見てみたら、映像がとても綺麗で、撮り方もドラマ風ではなく映画かと誤解するほど。引き込まれます。とても上質なドラマでした。
私は「FARGO」という映画は見たことがありませんが、アカデミー賞を受賞したようで、名前だけは聞いたことがあります。ドラマの『FARGO/ファーゴ』はその映画から着想を得てドラマ化した作品らしいです。
基本的にはサスペンスですが、ブラックコメディにも属していて、シリアスな中でもところどころ笑いが含まれます。
目次
始まりは殺し屋が依頼だとして受けてしまったこと、そして自らも妻を殺してしまう
主人公はレスター(上の画像の右)。レスターはおどおどとした性格で、波風を立てるのを避け、昔同級生だったいじめっ子の男にたまたま会って「おまえの妻と寝たことがある」などとひどい嫌みを言われても、殴られそうになっても、一緒にいたその男の子供たちに笑われても、何も言い返さずに引っ込む。
パンチを避けるときに怪我をしてしまい病院に行くと、待合室で隣に怪しげな男がいる(上の画像の左の男)。その男に話しかけられて何が起きたかを話し、「やり返さないのか。それでいいのか。俺なら相手を殺す。相手は生きる価値がない」と言われる。
「そうかもしれないが、俺にどうしろと言うんだ。代わりに君が殺すか?」と冗談ぽく答える。すると男は「俺に殺せと?」「一言でいい。イエスかノーか」と真剣に訊かれる。レスターはそれに答えずに呼ばれて医者の元へ行く。
すると、後日そのいじめっ子だった男が殺される。
レスターは殺し屋かと思われる怪しげな男に会い、「本当に殺したのか?」と訊くと、「あんたは昨日よりも強くなった。上司とか妻とかクソみたいなやつのせいですり減っていく。立ち向かえ」と言われる。
家に帰るとレスターは妻に「あなたは負け犬よ!」といつものように嫌みを言われる。でも今日は引き下がらない。いつものように波風を立てないようにはしない。
殺し屋から言われたように立ち向かって言い返す。「取り消せ!」。そして金づちで妻を殺してしまう。
おどおどとした性格のレスターが突然、行動力と狡猾さを見せることに感動
ここからが見事で、あのおどおどした性格のレスターが、妻を殺したすぐ後なのに殺しの証拠品を隠します。妻はカッとなって殺したのですが、すぐに冷静になり殺害を隠そうとします。
殺し屋に電話をして、「妻をやってしまった。どうしよう?すぐに来てくれ」と助けを求めます。確かにレスターではどうしようもない状況です。
…ですが、これは実は演技で、殺し屋を呼んで殺そうとします。いじめっ子だった男の殺害を依頼したとして警察に捕まってしまう可能性があるためです。
そして殺し屋が妻を殺したようにも見せかけたい。一石二鳥。ショットガンを用意します。何だこの行動力は…。
あのレスターが…!
おどおどとした性格で周りの人に言い返さず、人に使われてきた、あのレスターがです。感動を覚えます。
そこでピンポーンと呼び鈴が鳴り、殺し屋が来たかと思ったが、何故か警官が来た…。地下にはまだ妻の死体がある。
どうする…?
最初はレスターを応援してしまうが…心変わりする
最初はいじめられてきたレスターをつい応援してしまいます。妻を殺してしまうのですが、ずっと嫌みを言われてきている苦しさは理解でき、その殺しを仕方がないかなぁと思ってしまいます。「やればできるじゃん」と。
そこに警察が来て、どんどん話が大きくなっていくのですが、レスターは嘘をつき、狡猾に罪を周りの人になすりつけていきます。
「お、いいぞレスター、うまくやっているね」と応援できます。
警察署長はレスターの顔なじみで、妻を殺されたレスターに同情的。しかし、レスターを怪しんでいる警察署の副署長の女性がいます。
この女性がレスターに核心に迫る質問をするのですが、署長も波風を立てないようにしたいというレスターに似た性格で、「レスターは辛いんだから色々と訊くな」と彼女を制します。レスターにとっては助け船です。
FBIも捜査に加わるのですがその無能っぷりがすごい。コメディになっています。ここまでFBIを無能に描いているドラマは初めて見ました。
レスターは綿密な計画は立てられず、周りの人によって追い詰められることがあるのですが、どの土壇場でもレスターの見事なその場しのぎが功を奏し、事がうまく進んでいきます。とても行動力があります。
ですが、後半では仕事に成功したレスターの態度が大きくなっていき、だんだんレスターのゲスっぷりが明らかになっていきます。もうあたりからはレスターを応援できなくなっていきます。
後半はレスターの登場が少なくなり、殺し屋と警官側の視点からのストーリーが多くなっていき、ストーリーが終わりに近づいていきます。
緊張感が強烈過ぎない
『FARGO/ファーゴ』はサスペンスではあるのですが、もの凄く緊張感のある場面はなく、強烈なクリフハンガーを行いません。
ここが上質さを感じさせます。実は私は刑務所から脱獄するドラマ「プリゾン・ブレイク」を見ていられなかったのですが、これは強烈にドキドキさせられてしまうからです。
こっそりと、でも大胆に脱獄するための工作をする。時間がない。間に合うか? カン、カン、カンと誰かの足音が近づく。ドアが開く。「ガチャ…」。
こんな感じの場面が1話のうちに何回もあり、見ていて疲れます。
『FARGO/ファーゴ』はそんなことはなく、緊張感はあるものの、安心して見ていられます。ストーリーの描き方も丁寧です。
丁寧だとテンポが遅いと思われるかもしれませんが、私はスローだとは感じませんでした。
キャストが見事
レスターのマーティン・ジョン・クリストファー・フリーマン(Martin John Christopher Freeman)はハマリ役。殺し屋のビリー・ボブ・ソーントン(Billy Bob Thornton)もハマリ役。署長も見事。
このドラマのキャストは演技がうまいのか、ハマリ役なのか、登場人物の性格と顔が合っているなぁと感じます。ちょっと違和感を感じるのは副署長の女性ぐらい。
性格と顔が合っていると安定感があり、ドラマの世界に入り込めます。
無能なFBIの二人は、調べてみると両方ともコメディアンとのこと。このドラマはブラックコメディでもあるので、その点ではしっかりと役割を果たしています。
最初に表示される "THIS IS TRUE STORY" はやり過ぎ
各話の最初に "THIS IS TRUE STORY" と表示されますが、レビューなどを読むとこれはどうやら嘘みたいです。
映画の「FARGO」でもこの表示があり、でも真実なのはほんの一部だけとのこと。それのオマージュのような形でドラマの方でも同じような表示をしているようです。
冒頭に実話を基にしている旨のテロップが映るが、これも演出の一つで、実際には完全なフィクションである[3]。
題名は「ファーゴ」であるが、実際に劇中で同地が舞台となるのは冒頭の酒場のシーンだけであり、物語は殆どミネソタ州のミネアポリスとブレーナードである。コーエン兄弟はタイトルを決めた理由について、単に「ファーゴの方がブレーナードより面白そうだったから」と述べている[4]。
かなり調べないと嘘か分からないようなものはあまり良いユーモアに感じません。
Season 2 は興味が持てなかった
Season 1 が面白かったので Season 2 も見てみたのですが、序盤で興味が持てませんでした。
Season 2 は Season 1 でちょこっと言及される昔の大事件を描いています。
登場人物は普通の人たちで、確かに少しは変人ですが、レスターのような強烈な個性を見せてくれません。ストーリーの進み方もかなりゆっくりで第3話まで我慢しましたが、耐えられませんでした。よくあるような普通のストーリーがずっと続きます。
Season 1 は映像が綺麗で映画っぽかったのですが、急に普通のドラマのようになってしまっています。
Amazonでのレビューコメントを読むと、Season 2 は第5話から面白くなっていくとのことです。後で見てみるかもしれません。
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