『Diablo III』レビュー - ゲームバランスが優れた良質な Hack & Slash
Hack & Slash としてとても有名なシリーズの Diablo III をプレイ。
製品版をプレイしてまず驚いたのは、ベータ版よりも動作が軽くなっていること。大抵のゲームはアップデートするときの追加コンテンツなどで重くなっていくものなのだけど、その逆で軽くなっているのには驚いた。
ベータ版の記憶が薄れて新鮮な気持ちでプレイすると、いろいろなエフェクトが気持ち良い。レベルアップした時とか、連続で敵を何体倒したとかの表示はデザインが良くて上質なゲームをプレイしている気にさせてくれる。ベータの時よりも洗練された感があり、たぶんいろいろと改善されている。
スキルポイントの割り振りが無いのは意外と良い
他にもスキルポイントの割り振りが無いのは気になる。通常 Hack & Slash のゲームはスキルツリーを自分の好きなように作ることが楽しみの一つ。自分が使いやすいスキルだけを取得してニヤニヤする。
Diablo III は言ってみればスキルを全て取得する状態。レベルが上がると自動的にスキルを取得する。そして取得したスキルの中で使いたいスキルを選択するというシステム。スキルの種類は少し少なく感じる。
これについてちょっと考えてみたのだけど、このシステムにすることによってリスペック(ポイントの再割り振り)が必要なくなっているのは重要だろう。
プレイヤーがスキルポイントを割り振る必要がなくなるので、私がいつも悩む問題「後で割り振りのやり直しができるのか」を考える必要が無い。やり直しが出来ないのは意外と大きなストレスで、A と B の一方だけを選択する場面がある度にどちらが将来的に利益が大きそうかを考えなくてはならない。それなら最初からやり直しがきくようにとしたのが Diablo III のシステム。斬新であって、よく考えると意外と良い。
スキル選択画面。
冷静に考えるとスキルポイントを割り振れないから自由度が無くて物足りないのではない。むしろスキルは全て取得できているので選択の自由度は高くなっている。Diablo III でスキルの自由度がないと感じる理由はスキルの種類が少ないことに起因する。もう少しスキルの種類が欲しかった。でも通常攻撃の種類が複数あるのは他の Hack & Slash に比べるとかなり選択の幅が大きくて自由だ。
Diablo III はステータスポイントの割り振りもない。こちらは全面的に賛成したい。
多くのゲームでステータスの、力、素早さ、敏捷、運などのパラメーターがどのように影響するか分かりにくい。そのため当たり障りのないポイント割り振りになってしまう。ポイント割り振りで変に冒険をするよりは安定を望んでしまう。そういうつまらないポイント割り振りをするぐらいなら、最初から自動的に割り振って貰った方が良い。
難易度は Hard で
プレイ開始時に難易度を Normal にしてプレイしていたのだけど、この難易度は簡単すぎる。敵が弱く、こちらがピンチになることがない。
確か説明に Hard はレア装備を持っていないと厳しいというように書いてあったので Normal を選択した。でも Normal は簡単すぎるのでおそるおそる難易度を Hard に上げてみたら丁度良い難易度になった。
難易度をゲーム中に気軽に変更できるのは良い。難易度を Normal にすると敵をただクリックして倒して進むゲームになりがちなので、ここはゲームバランスを間違えていると思う。Hard が Normal で良い。今の Normal は Easy で。
ゲームバランスが良い
やはり Diablo III は良く出来たゲームであるという評価になる。Diablo III を今までプレイした Hack & Slash のゲームと比べると確かに突出して良いという部分は無い。でも、それぞれの要素は平均値を超えていて、全体としてみると Hack & Slash のゲーム中ではトップに来てもおかしくない。
Titan Quest は冗長だし、Torchlight はサクサク進みすぎて装備の陳腐化が早くて Magic Finding の楽しみが無い。Dungeon Siege III は単なるアクションゲームに近い。そういったそれぞれのゲームで気になる部分を除いたのが Diablo III で、バランスが良くとれているゲームだった。
マップは広すぎる
ただマップの広さは当初から気にはなっていたけれど、やはり広すぎる。もう少し狭いと良かった。ストーリーを進めるだけなら広大なマップの全てを歩く必要は無いけれど、マップを隈無く調べると少し利点がある。
まず、ストーリーの理解の手助けとなるような、ならないような、いろいろな人の手記を拾える。強いけれどレアなアイテムを落としやすい、レアモンスターと出会うことができる。サイドクエストのような小さなイベントに出会うことができる。これらの利点はあるものの、マップを全て歩くとかなり時間が掛かる。
サイドクエストの話が出てきたのでここで書いておきたいことがある。Diablo III はサイドクエストが無い。これは素晴らしい。メインストーリーを進めることに集中できる。マップを歩いていると突発的な小さなクエストはあるものの、その多くは敵を倒してすぐに終わる。他のゲームでよくあるように、サイドクエストを達成するのに忙しくてストーリーがおろそかになることがない。「クエスト」という言葉すら出てこないと思う。ゲームがクエストで管理されている感覚が薄く、心が軽かった。
ストーリー
ムービーシーンの映像が綺麗だった。こういう綺麗な 3D の映像を見たのは久しぶりだったので驚いた。
ストーリーは展開が急だった。日本のゲームのストーリーのように少しずつ進んでいかない。それに今までのストーリーでは出てこなかったことを既に知っているかのように話す場合が多く、面喰らうことが多かった。
特に Act 2 には驚かされた。(主人公)「おまえこそが ×× だな!」(敵)「よく分かったな…」という、「犯人はおまえだ」のような会話が突然あった。それまでのストーリーでは犯人のほのめかしがほぼ無く、この場面で突然犯人を言い当てたので驚いた。それまでのストーリーではその犯人をずっと信頼して進んできたのに。どこか会話を飛ばしてしまったところがあったのだろうか。
クリアまでプレイしても私は主人公の正体がよく分からなかったし、人間界、地獄界、天界の仕組みがよく理解できていない。全てがあまり説明されないため、ストーリーの大まかな流れしか分からなかった。でもおそらくほとんどの人がそんな感じなのではないだろうか。丁寧に説明されたストーリーでは無かった。
近接戦闘クラスよりも遠距離戦闘クラスを選ぼう
いろいろなクラスを使ってみた。ただ Demon Hunter 以外はレベル 15~20 ほどまで。
クリアをした時のクラスは Demon Hunter。その後にそれぞれのクラスのキャラクターを作り難易度 Hard でプレイしてみたところ、近接戦闘のクラスを選ぶとゲームが難しくなることに気づいた。
Demon Hunter などの遠距離攻撃がメインのクラスは敵の攻撃を食らうことがあまり無く、強い敵でも逃げながら何とか敵に勝てる場合が多い。でも近接クラスはほぼ無理だ。敵の足を遅くしても、結局自ら敵へ攻撃しに行かなければならないので敵からの攻撃を食らってしまう。レアモンスターとの戦いがもの凄く辛い。「初プレイ所感」では難易度 Normal は簡単すぎると書いたけれど、近接クラスは Normal がちょうど良いかもしれない。特に序盤は。
近接クラスの中でも Monk が特に辛い。序盤をプレイした限りでは、攻撃力がそんなに高くないし、近接クラスなのに体力もそんなに無いし、範囲攻撃スキルに乏しく敵を倒すまでに時間が掛かった。Monk は爽快感がない。近接クラスでは Barbarian は Monk と比べるとずいぶん楽だった。攻撃力も高いし、範囲攻撃のスキルも早めに覚えるスキルが十分使え、体力も高い。Monk と違い、Barbarian は爽快感がある。
遠距離クラスの Demon Hunter よりも敵から逃げなければならない Monk。体力が低いのですぐにピンチになりがち。
ただ Barbarian もレアモンスターとの戦闘は辛く、Demon Hunter の時はあんなに楽だったのに、死にそうになることが多々ある。攻撃するために近づくと大ダメージを受けるので、近接クラスなのに中距離攻撃ができるスキルを使って敵の体力を削っていくという、アイデンティティーに疑問を抱かざるを得ない戦略をとらなければならなかった。でも難易度を Normal に下げようとは思わない。アイテムも受け継いでいないし。
これから Diablo III をプレイする人や、Diablo III がつまらなかったという人は、遠距離クラスを使うことを是非お勧めしたい。Hack & Slash では近接クラスを使うと飽きるのが早くなる傾向にあると思う。私は Monk でプレイしているとどうもつまらなく感じる。
Diablo III の Beta をプレイした時も、女性 Monk の外見が良かったので Monk を選んでプレイしてしまった。この所為でゲームが楽しめず、Diablo III の評価を下げてしまった部分があると思う。プレイヤーの好みの問題もあるけれど、遠距離クラスの方がアクション性が増して、戦略が少し複雑になるので面白いと思う。
遠距離クラスの中では Witch Doctor が一番つまらなかった。味方モンスターを召喚するタイプのスキルをもつクラスで、自分で戦闘を行っている感覚が少なくなってしまう。遠距離クラスといえどもつまらないクラスは存在する。
私がお勧めしたいのは Demon Hunter。敵の足を遅くしたり、自動的に攻撃してくれるデバイス(セントリー)を作ったり、矢の雨を降らせたり。プレイヤー本人は敵から逃げつつ敵の動きをコントロールしたり攻撃したりしている中で、セントリーで敵の体力を削り、何秒間か継続するスキルを使って敵にダメージを与える。
Demon Hunter は一撃が強いスキルはあまりないので正面から敵と戦わずに、戦略的に徐々にダメージを与えていく。敵の攻撃を避けるアクション要素と戦略的な試合運びが楽しい。このプレイスタイルが私によく合っていて楽しかった。こんな感じのプレイスタイルが好きな人には合うクラスだと思う。Hack & Slash をプレイしていると途中でどうも飽きてしまう人も Demon Hunter を試してみて欲しい。
まとめ
取り立てて悪い部分がなく、全体的によく出来た Diablo III。突出して良い部分は無いかもしれないけれどかなりよく出来たゲームだと思う。Hack & Slash の楽しさを味わえる。Hack & Slash をやってみたいけれどどのゲームが良いかと悩んでいるなら、Diablo III が良いと思う。Torchlight 2 などは安く買えるけれど、もう少しお金を出して、全体的によく出来ている Diablo III をプレイした方が楽しい時間を過ごせると思う。
突出して良い部分は無いと書いたけれど、もしかするとゲームバランスの良さは突出しているかもしれない。何度もパッチが当たって修正されているし、プレイヤーが多い分、継続して手直しされている。Monk だってレベルが上がれば楽しいのかもしれない。弱いクラスをそのままにしておくとは考えにくい。たぶんもう少しプレイするとスキルで Monk が変わってくるのだろう。
これまでは Bilizzard が運営するにオークションハウスでレアアイテムを売ることができたけど、それが近日中に停止するので Magic Finding(レアアイテム探し)は少しつまらなくなりそうだ。良い武器を拾っても見せびらかさなくてはやはり楽しくない。それが売れるとなるとアイテム探しの意欲も増すというもの。もう少し早く Diablo III を買っていれば良かったと少し後悔している。
そろそろ第1弾の拡張パック(Expansion)が発売される。Diablo III 本編が楽しかったので今なら拡張パックにもお金を払える気分。ただ Digital Deluxe 版だと発売当初の Diablo III ぐらい高く、ちょっと躊躇する。これが $20~30 ほどなら買っていた。もう少し安くなったら買ってみたい。