『The Bureau: XCOM Declassified』レビュー - 初プレイ所感。ストラテジー要素の融合が上手くいっていない
XCOM を TPS 化したゲーム、「The Bureau: XCOM Declassified」をプレイ。RTS の「XCOM: Enemy Unknown」はなかなか面白かったのでこのゲームには少し期待していた。しかし、プレイしてみると TPS 化が上手くいっていない印象を受ける。
ゲームシステム
このゲームは XCOM を TPS 化した、よくあるシューターゲームかと思っていた。主人公はプレイヤーが動かすのでそこは TPS っぽい。しかし部隊の味方には RTS のように指示をする。
このゲームでは RTS の XCOM のように、戦闘ではクロスファイアを狙う。それは面白い要素だし別にいいのだけど、それをするために味方に指令を出すのが大変。スペースキーを一度押し、上の2つめの画像のように指示画面にする。この画面の間は時間が止まるわけではなく、時間の進みが遅くなるだけ。つまり戦闘は進んでいる。マウスでアイコンをクリックして指示を出すのだけど、指示の決定に時間が掛かって素早く指示できない。
移動場所を指示する画面。
例えば移動指示は「移動」アイコンをクリックすると画面が上の画像のように切り替わる。この時に WASD キーで空間を移動し、移動先を決定する。カーソルでマップをポイントするのではなく、WASD キーで行きたい場所まで空間を移動しなければならない。RTS のようにマップを上から見下ろして「ここに移動しろ」と指示できないので時間が掛かってものすごく面倒だ。
部隊の人数の上限は三人。三人の場合、画面下のパネルの中心が自分のパネルで、味方は左と右のパネルに分かれる。このパネルがやっかいで、左のパネルが左にいる味方ではなく、単なる部隊の並び順番。パネルを操作するときに感覚的に操作できなくて困惑する場合がある。例えば自分の位置よりも右にいる味方に指示を出そうとして、左のパネルを操作しなければならない事がある。
「XCOM: Enemy Unknown」で見やすくて良かった手榴弾を投げる動作は、一応このゲームにも付いている。しかし、一人称視点のようになってしまい、遠くが見えない。
手榴弾を投げようとしている場面。
「Enemy Unknown」で手榴弾の行方が見やすかったのは上から見下ろしていたからであって、「The Bureau」のように一人称視点のような画面ではこのデザインは効果的ではない。この視点では敵がどこにいるか見えないことがあるし、手榴弾の飛ぶ先がどうもよく分からない。爆風の範囲に入る敵がオレンジ色にハイライトされるのは分かり易いけれど、手榴弾の落下地点がどこかよく分からない。どのように操作すれば手榴弾をもっと遠くに飛ばせるのかも感覚的には分からない。
中ボス戦。体力の高い敵がこちらに迫ってくる。
このようにこのゲームでは指示が瞬時に出せないので、初めての中ボス戦が本当に難しかった。つまり敵がこちらに迫ってくるだけでゲームが難しくなってしまう。味方に指示を出すのは時間が掛かり、その指示の間に敵が動いているので、敵に迫ってこられるとものすごく忙しい。
それに、主人公のキャラクターは通常の TPS のように自分で動かさなければならない。味方に指示を出してから自分も動こうとするけれど、もう敵がすぐ近くにいて逃げられない。このゲームではプレイヤーの動きで敵の弾を避けることはできない。結局この場面では味方を安全圏に置いておいて指示を出す必要を無くし、自分一人で倒した。味方を操作している余裕が無い。
こうやって味方に指示を出せるゲームは FPS の「Ghost Recon」などの方が一枚上手。このゲームは TPS だけどストラテジー要素が少々強く、敵を撃つのを楽しむシューターでは無い。そのため、通常の FPS のように、プレイヤーの敵を撃つシューターのうまさだけでは敵を押し切れない。ストラテジーゲームのように味方に指示を出すのが重要になる。しかしその指示を出すのに時間が掛かるデザインになっているので面倒だ。時間が掛かるので味方に細かく指示を出す気力が起きない。XCOM の TPS 化が上手くいっていない。
ストーリーは面白い
ただ、ストーリーは面白い。Enemy Unknown のストーリーも面白かった。The Bureau もそのストーリーと同じく、地球外生命体が地球に突然攻めてきて、その緊急事態に対応する組織 XCOM からの視点で描かれる。私はこういう緊迫感のあるストーリーが好きなので、先を知りたくなるストーリーだった。
なにやらエイリアンが人間に何かをし、人間が凶暴化するようだ。ゾンビ化のような感じ。何かが感染するらしい。
会話も多く、少し Mass Effect チック。
会話の選択画面。私がプレイしたところまでには重要な選択肢は無かった。
あまり無駄な会話が無いのも嬉しい。ストーリーに沿ってほぼ一直線。ただ先に進むとサイドクエストがあるかもしれない。
何かに感染しても凶暴化しないこともあるようだ。
「エイリアンは一体どんな技術で人類に攻めてきているのか」「なぜ地球だったのか」を解明していくストーリーだと思われる。エイリアンの技術力は人類よりも先に進んでいるので、彼らの技術を取り入れて自分たちのものにしながら対抗する。これはたぶん XCOM シリーズに共通するストーリーだろう。XCOM シリーズをたくさんプレイしている人は「またこのストーリーか」とうんざりするのかもしれない。でも、私には新鮮なストーリーだったので面白そうだと感じた。
終わり
ストーリーが面白そうだったので何とか先に進めたいと思ったけれど、ゲーム部分があまり楽しくない。味方への指示が時間が掛かって面倒で、プレイするのが苦痛。上で書いた初めての中ボス戦は何とかなったけれど、この戦闘では2回ほど部隊が全滅し、ゲームデザインの悪さから発生する難しさを私は受け容れられなかった。
このゲームは「XCOM を TPS 化した」というよりも、RTS の「XCOM: Enemy Unknown」を、システムは少し簡略化してから TPS の視点(頭の上の視点)にして見難くし、さらに操作を手間が掛かるようにしたゲームだと感じた。開発者が目指したと思われる、XCOM のストラテジー要素と TPS の融合が上手くいっていない。
TPS なので自分でもシューターゲームのように弾は撃てるけれど、全然爽快感が無い。他の TPS ゲームでよくあるように、走りながら壁にぶつかると壁に隠れられるのだけど、この動作がうまく発生せず立ったままになることも多くて疲れた。
このゲームをプレイするよりも RTS の XCOM をプレイした方が面白いように思える。このゲームは TPS というジャンルだけど RTS 要素が強すぎて撃つ楽しさが無い。ストーリーは良さそうなだけに残念だ。たぶんこのゲームはクリアするまでプレイできない。