『Dungeons』レビュー - ダンジョンキーパーに似ているが、箱庭感が薄く、底が浅い
Dungeons は発売間近に Demo が出たあたりから風当たりが強かった。Dungeon Keeper に似せていたけれど、全然 Dungeon Keeper では無かったからだ。批判が強かったため、デベロッパー自身でも「Dungeons は Dungeon Keeper では無い!」というスレッドを Steam Forum に作ってしまうほど。開き直りに近いのだけど。外見だけは Dungeon Keeper に近い。つまり Dungeons は、本当に言葉通りの単なるオマージュ作品である。オマージュ、リスペクト、allusion などと言うと通常はかなり似せて作るのだけど、Dungeons は外見だけを似せたということだね。一応オマージュと言えるのかも知れない。敬意はあるのだろうし。
ただし、この外見のオマージュには策略が見え隠れする。Dungeon Keeper の続編を待望するファンが多いので、似せれば売れるのでは無いか、と考えたに違いない。ゲーム内容が違ったので批判が強まり、「過去の偉大な作品をオマージュして何が悪い」と言うに至った。「オマージュ」を「影響された」程度の言葉として使っていると思われる。
私も Dungeon Keeper のファンの一人なのだけど、Dungeons は Dungeon Keeper と違うことを知っていたので、セールされるまで待っていた。今週ついにセールとなり、Dungeon Keeper と切り離してプレイした。良作とは言えない底の浅いゲームであった。Metascore は60点代なのだけどこれは十分に分かる。完全に出来の悪いゲームというところまでは行かず、「もう少し頑張りましょう」程度。
Dungeons のシステムは、「Theme Park [テーマパーク(cf. wikipedia)]」に近い。ちょっと驚いたのだけど、Theme Park は Dungeon Keeper を開発した Bullfrog Productions(cf.wikipedia) が開発していた。「テーマパーク」は、自分で遊園地を設計し、お金を稼ぐゲームだった。様々なアトラクションと食べ物のショップを設置し、客の好みに合わせてそれを構成していく。客の満足度を高くすることが最大の目標という感じのゲーム。Dungeons はそれに似ている。まず、ダンジョンが自分に与えられる。そこに冒険者を楽しませるものを設置し、満足度を上げていく。設置したモンスターも冒険者を単に楽しませるもの。冒険者が満足したらその冒険者を殺し、満足した魂を吸い取る。
テーマパークのようだ、と言うと楽しそうなゲームに思えるのだけど、実際はそこまで楽しくない。自分のモンスターは最大レベルが決まっており、どんどん強くなっていく事は無い。モンスターの為の訓練場などがあるわけでも無く、冒険者から集めた魂を通貨にしてボタン1つでレベルが上がる。それに、冒険者を楽しませるものは、例えば転がった骸骨や、棺などがあるのだけど、これは設置も楽しくないし、ある程度設置すればあとは作業に成り下がる。
最初に与えられる未開発のダンジョンは、自分の好きなように部屋を作っていけるので少し楽しさがあるのだけど、ある程度ものを設置してしまうとあまりやることが無くなる。傍観しているだけで良くなってしまう。この傍観してるだけの状態には1時間ほどで達することが出来る。十分ものを設置し、モンスターのレベルが上限に達し、冒険者のレベルも上限に達し、やることが無くなり、ついには冒険者の満足度では無く、「ゲームをプレイしている私の小さな満足度」が上限に達してしまう。ここでゲームクリア。
Dungeons のキャンペーンモードを続けるためのモチベーションは、各ミッションのチャレンジ。チャレンジを達成すると、自分を強くするためのポイントが貰える。チャレンジは、例えば、「金塊を10個設置しろ」、「冒険者を最大まで満足させろ」など。ポイント欲しさにチャレンジを達成したくなる。でも、キャンペーンを続けるモチベーションは本当にこれだけの気がする。
従者に少しダンジョンを掘って貰い、モンスターを設置して、骸骨などを設置して、冒険者を楽しませてから殺す。これは「テーマパーク」へのオマージュ。つまり、Dungeons はシステムは「テーマパーク」へのオマージュで、外見は「Dungeon Keeper」へのオマージュ。ただし底は浅い。遊園地を最初からずっと育てていくような箱庭感が無い。ミッションを達成するために駒を使い捨てて勝つようなゲームに近い。このゲームは 1500 円ぐらいだと納得できるゲームだと思う。