『The Darkness II』レビュー - 射撃感があって面白い、でもクリアまで短い
The Darkness II が発売された。Demo をプレイした時から面白いと思っていて、製品版でも同じく面白い。面白いのでプレイ日記でも書きながらやろうかと思ったのだけど、クリアまで短いのが感じ取れたので一気に終わらせてしまった。
戦闘
このゲームの戦闘は Darkness の力によって肩から生えている触手のようなものによる攻撃と、自分の手で銃を撃つという組み合わせて行う。このゲームの特徴は触手なのだけど、私はそれよりも銃に射撃感があって面白かったのが印象深い。
銃撃
Revolver や Desert Eagle の射撃感はなかなかのもの。一発銃を撃つと銃が跳ね上がり、重い発射音がする。The Darkness II ではほとんどの銃が撃っていて楽しい。ショットガンやアサルトライフルなども良い効果音だし、銃が跳ねて面白い。最近の FPS ゲームの中では射撃感がかなりある方だと思う。また、リボルバーが好きな人はリロードのアクションにも目が行くだろう。The Darkness II でもリロード時にシリンダーから薬莢がポロッと落ち、弾を込める動作を見られる。凄くリアルというわけではないのだけどなかなか満足の行くリロードだった。
登場する銃は、ハンドガン、アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン。大体どの種類の銃も3種類ぐらい登場して、ゲームのクリアまでに銃に飽きてしまうことはないと思う。ゲームのクリアまでは短いのだけど。ちなみにマルチプレイの時は各キャラクターはそれぞれ特殊な武器を持っているので、これも含めると登場する武器はなかなかの数になる。
ヘッドショット判定もあるし、敵も程良く堅く、銃を撃っていて爽快感がある。敵を攻撃すると血がドバッと出るのも良いし、このゲームは敵を倒すとポイントを貰えるのでそれによっても爽快感が増している。敵が多く登場する場面もあるが障害物も多く、隠れながら敵と戦える。これと関連して、ステージの構造は結構良く出来ていると思う。「だだっ広く敵の攻撃から隠れるところが無い」や、「敵が多くて対処できなくなる」という場面は無かった。いつもどこかに脇道や障害物などがあり、それを見つけられれば戦闘を有利に進められるというようなポイントがあった。
ゲーム中盤辺りからは少し厄介な敵が増える。盾を持って突撃してくる敵や、こちらの銃を取り上げてしまう敵など。彼らへの対処方法はすぐに分かると思うのだけど、体力も高く厄介なのには変わらず、こういった敵が一度にせめてくる場面では忙しく面白い。ボス戦もボスの攻撃を躱しながら戦うことになるので、ただ敵を撃つだけではなくアクション性があって楽しかった。
ちなみに敵の AI に関してはそこまで頭の良い動きはしないのだけど、障害物から飛び出して伏せて撃ってくることがあって驚いた。
伏せながら狙っているのが敵。ライト付きの銃を持っている。後ろで横に転がっているのは既に死んでいる敵。
上の画像で分かるだろうか。障害物に隠れながら頭を少し出して銃を撃つという良くある方法では無く、飛び出して伏せて攻撃してくる。これにはなかなか感心した。
触手
触手は Darkness の力で主人公の肩から生えているらしい。ここでは分かり易く「触手」と言ってしまっているのだけど、実際は何か格好いい名称が存在すると思う。その触手は戦闘では主に敵のなぎ払いと、敵の掴み、落ちているアイテムを拾い上げ投げるのに使う。
左: パイプを敵に投げた後。
右: 掴めるアイテムは紫に光る。この場合はプロペラを掴むことが出来る。
アイテムを拾い上げて投げるのは Dead Space 2 をプレイした事がある人は Kinesis を思い浮かべて貰えると分かり易いと思う。触手で鉄パイプを拾い、敵に投げると左の画像のようになる。この攻撃感覚は私の中ではほとんど Dead Space 2 と同じ。投げていて面白いのは鉄パイプとプロペラ。敵にグサッと突き刺さる鉄パイプは敵をほぼ一撃で倒せる。プロペラは投げると敵がすぱっと切れる。良いアイテムが近くに落ちている時は投げてみると面白い。あと、このゲームにはスキルツリーがあって、投げたアイテムを爆発するようにするスキルを取ると投げるのがもっと楽しくなる。
なぎ払いはデフォルトの設定ではミドルクリックを押しながらマウスを動かすと、マウスを動かしたとおりに触手を振るえる。例えば、ミドルクリックを押しながらマウスを右に動かすと、ゲーム中では触手を右に払う。ただ私はこれをあまり使わなかった。ミドルクリックの押し込みが面倒なのと、触手の攻撃範囲が狭いこと、私は銃で敵を倒す方が楽しかったことが影響している。でも敵に近づかれてしまった時にはこの攻撃方法は一番良い対処方法なので是非使いたい手段ではある。ゲーム終盤に狭い場所で敵がたくさん出てくる場面ではよく使った。
敵の掴みは、基本的には敵がよろけている時にしか出来ない。敵がよろけるのはダメージをある程度受けている時。
掴んで引き千切り。この後はグロシーン。たぶん想像通りの結果になる。
敵を掴んだ後にどうするかアクションを決める。例えば、敵の心臓を食らい自分の体力を回復したり、弾薬を補給したり、シールドを作り出したり。便利系のアクション。ただこのアクションは周りに敵がいる時は行いにくい。敵を引き千切っている時にも周りの敵は動いている。主人公は引き千切り中は無敵ではあるものの、敵に近づかれると厄介だ。特に引き千切り中に敵に背中に回り込まれると、引き千切りを終えた時にほぼ確実に攻撃を食らう。それに加えて引き千切りのアクションは少し時間が掛かるので、それを毎回見るというのも少し億劫だった。
これらの触手のアクションは銃を撃っている時にも行えるので、主人公は手が3つ4つあるかのごとく戦える。
光に弱い
主人公の中にいる Darkness は光に弱い。この設定が面白い。このため主人公は出来るだけ光を避けなければならない。例えば、街灯を銃で撃って壊したり、ライトスタンドの電力を断ったりしないといけない。ここまでならスニーク系のゲームで良くあるだろう。でもそれに加え、敵が閃光弾を撃ってきたり、ライトで照らしてきたりするのは面白い。
ライトで照らしてくる敵。
主人公が Darkness の力を得ているのは知られているので、敵は光が主人公に有効なことを利用している。このライトで照らしてくる敵は両手でライトを持っているので銃を構えていない。でもライトが強力でそれだけでも結構厄介な敵だったりする。主人公は光に当たると画面がぼやけ、さらに白黒になるので出来れば光には当たりたくない。閃光弾も厄介で、手榴弾を投げられているのと同じくらい厄介。敵ながら、主人公の弱点を衝く良い攻撃方法だ。
体力の回復方法と弾薬の取得方法
このゲームの良いところは体力の回復方法と、弾薬の取得方法だと感じた。
まず体力の回復方法については、敵を殺した後で死体に近づいて触手で心臓を食べる方法と、敵をよろめかせてから触手で掴み心臓を食べる方法がある。これによってボス戦で楽しさが増す。ボス戦ではどうしてもダメージを受けてしまうので体力の回復が重要となる。しかしヘルスパックなどは落ちていないので、回復は常に雑魚敵で行わなければならない。
敵をよろめかせ、掴んでから心臓を食らう。
ボスの攻撃を食らわないようにしつつ、雑魚敵を遠くから倒して近づいて心臓を食べるか、または余裕があればよろめかせて掴んでから心臓を食べた方が回復量は大きい。どちらにせよ敵に近づかなければならないというところが緊張感があって面白い。これは別の見方をすると、敵が近くにいない時に瀕死になってしまうと絶望的な状態に陥るということ。こうならないように自分の立ち位置は気をつけておかなければならない。
弾薬の取得方法については、敵が落とす同じ種類の銃を拾って弾薬を貰う方法、道端に落ちている弾薬パックから拾う方法、敵をよろめかせてから触手で掴んで殺し弾薬を貰うという3種類の方法がある。そもそもこのゲームは弾薬があまり拾えない。銃を選り好みしなければ、敵が落とす銃をいつも拾えば良いので撃ちまくらない限り弾薬不足になる事は無いとは思うのだけど、やはり FPS ゲーマーは好きな銃というものがあると思う。私はアサルトライフルの AK47 が好きだったり。ゴルゴ13が好きな人は M16 が好きだったりするのだろう。
そういった自分の好きな銃だけを使っていると敵があまり自分と同じ種類の弾薬(銃) を落とさず割と早めに弾薬不足になる。この時、それを解消するために効果を発するのが、「敵をよろめかせて触手で掴んで弾薬取得」という方法。このゲームでは敵は常に出てくるため、この方法で弾薬を手に入れるのが一番手っ取り早い手段になる。この方法で弾薬を手に入れる時も、やはり敵には近づかないといけない。その怖さはあるものの、弾薬の取得に落ちている弾薬を拾う以外の方法を作ってくれた事は有り難い。
「どうして触手で敵を殺すと欲しい弾薬が手に入るの?」という疑問が湧いてしまう人もいるのかも知れない。それには私が答えてみたい。たぶん「やみのぱわー」で敵の魂を弾薬にしているんだと思う。
スキルツリー
このゲームは敵を倒すことでポイントを稼ぎ、それをスキル取得に充てるという要素がある。これは一度にたくさんの操作方法を覚えなくて良いという利点がある。最近のアクションゲームなどではたくさんのコンボ方法を一度に説明する事があるのだけど、私はほぼ覚えられない。そこでこういったスキル取得方式にして貰えると一度にコマンドをたくさん覚えなくて良いので助かる。
それに、これはキャラクター育成要素の一部であって、それ自体に楽しさがある。敵を倒すことでポイントを手に入れられる様にしたというのも良い点で、ポイントを稼ぐために出来るだけうまい敵の倒し方を目指そうとしてしまう。この部分は Bulletstorm に少し似ている。
ちなみに、キャンペーンクリアまでに4つあるスキルツリー(スキルグループ) の内の2つ分を全て覚えられるくらいのポイントが溜まる。このポイントと覚えたスキルは New Game+ モードにて引き継げるので、スキルを全部覚えたい人は2週目も行けるかも知れない。
ゲームプレイの問題点
1つ目は FoV が狭いこと。2つ目は「Eキーを長押し」という動作が機能していないこと。3つ目は触手でものを掴むQキーの動作方法。4つ目は、強いてあげるなら敵を掴んでから行うアクションに時間が掛かること。
1つ目の FoV、視野角はこのゲームは随分狭い。Steam Forum ではそれが問題になっていたりするのだけど、私は何とか酔わずにクリア出来た。ただ周りがあまり見えないので窮屈さは常に感じていた。今後 FoV の変更方法が発見されれば良いのだけど、FoV の狭さからこのゲームは酔いやすいのかも知れない。
「Eキーを長押し」を使う場面。
2つ目、「Eキーを長押し」という動作が機能していないことに関しては、少し面倒な事が発生する。この「Eキーを長押し」は主には武器を交換する時に使うのだけど、例えば、死体に近づいて心臓を食らう時にはEキーを押すが、近くに武器が落ちていると心臓を食らわずに武器を交換してしまう。これはEキーを長押しせずに武器が交換できてしまう事による。これによってこういった細かな場面で少し不満が発生する。
3つ目、触手を動かしてものを掴む時に押すQキーの動作については、近くにある「もの」が優先されて掴まれてしまうので忙しい場面で困ったことになる。私が困ったのは戦闘時で、敵をよろめかせてQキーを押し敵を掴もうとするのだけど、Qキーを押したら近くに落ちていた銃を掴んで銃の交換をしてしまった。敵がよろめいている時間は短いので、忙しい場面である。その時に銃の交換をしてしまったので、もう一度自分の好きな銃を拾わないといけないし、敵はよろけから立ち直ってしまって「敵に近づいた自分は何だったの」という状態になってしまった。
4つ目、敵を掴んでから行うアクションは、触手の項目でも書いたのだけど少し時間が掛かる。敵を触手で掴んで締め上げてから心臓を貫くなどという動作には時間が掛かり、数秒ほど見ているだけの時間が生まれる。そのため、折角のこのゲームの展開の早いゲーム性が少し損なわれている。一瞬で敵を貫くくらいの速い動作にしてしまっても良かった気がする。
ストーリー
私は前作 The Darkness I を知らない。The Darkness II の最初で前作までの話をほんのりと知らせてくれるのだけど、今作のストーリーで細部までは理解できない事が良くある。でも、それでもストーリーは楽しめた。
今作では主人公は Darkness の力を奪おうとする集団に襲われるのだけど、ストーリー中で主人公が突然精神病棟らしきところにいる場面に切り替わる時がある。(私はすぐに Alice: Madness Returns を思い出した。) この場面では私はどちらが現実なのか分からなくなってしまった。Darkness の力で戦闘しているのが現実なのか、「Darkness の力で戦闘しているんだ!」と主張して精神病棟にいるのが現実なのか。
プレイヤーを惑わせるそういうプロットではあるのだけど、これは前作からプレイしている人は少し違うと思う。私は前作のゲームの知識が無いのでこうやって「どっちが現実なんだろう」と戸惑ってしまうのだけど、前作の知識があると少しは自信を持って断言できるだろう。この精神病棟のシーンの最後では選択肢がある。もしかしてエンディングが分岐したりするのだろうか。
こんな感じの「どっちが現実なの?」と思わせるプロットと、話自体の分かり易さがあって私はストーリーを楽しめた。濃厚なストーリーというわけでも無いのだけど、FPS ゲームにしては良く出来ていて整合性があるなという感じのストーリーだろう。いや、そもそも原作はコミックか。なのでそう言うと失礼になってしまうのかもしれない。
まとめ
私は The Darkness II をかなり楽しめた。ただこのゲームの定価約 $50 がこのゲームに合っているかと言われると疑問ではある。ゲームは楽しいが、そのゲームは短い。私は Normal にてゲーム中の全ての隠しアイテムを取りつつクリアしたのだけど、クリアタイムは 6.5 時間ほど。ゆっくりプレイしたはず。なのでこのゲームは 5~7 時間ほどでクリア出来てしまうとみて良いと思う。
「つまらなくて長い」や「楽しくて、そこそこのクリア時間が掛かり満足できた」などだと評価しやすいのだけど、「楽しくて短い」は判断するのが難しい。特に FPS ゲームは楽しくてもクリアまでの時間が長いと途中で疲れてしまうことが多い。私は FPS ゲームのシングルモードクリアまでの時間は 10 時間ほどが良いと感じている。その点で言えば、この The Darkness II は四捨五入すると 10 時間だったりする。あ、なんだ問題ないじゃ無いか!
と言う冗談は置いておいて、やはり定価が少し高めだと思う。もし私がこのゲームに勝手に値段を付けるなら新作で $39.99 にする。シングルモードは 5~7 時間ではあるが、マルチプレイモードも楽しめればプレイ時間は2倍ほどになると思う。それで $40 くらいなら大丈夫じゃ無いだろうか。ちなみに The Darkness II は発売前の予約の段階でも 25% OFF などというショップもあった。なので $40 以下で買えたりする。
なお、このゲームはメニューや字幕が日本語だった。音声は英語。Steam ではこのままずっと日本語が含まれているのか分からないのだけど、公式に最初から言語に日本語が含まれているのは嬉しい限り。Steam Store ページに Japanese としっかり表記があるから大丈夫だろうか。