「SONY MDR-CD900ST」は日本で一番使われているモニターヘッドフォンかもしれません。
レコーディングスタジオにはほぼ必ずあるようです。ラジオの人やテレビの音声さんもこのヘッドフォンをしているのをよく見かけます。
今回この有名なヘッドフォンをゲーム用に買ってみました。密閉型なのでマイクに聴いている音が入りにくいです。
ちなみに有名なのは日本だけなのかもしれません。海外ではオーディオテクニカの製品の方が多く広く使われているようです。
低音が強く上の音域に被さり、高音の情報が抜け落ちている
使ってみた印象としては、「低音が強く、高音の情報が抜け落ちている」。
私も驚いたのですが、 「MDR-CD900ST」はモニターヘッドフォンですから音がフラットなはずですが、このヘッドフォンは音がフラットではありません。高音の情報がそぎ落とされているため、音楽を聴く用途としては合いません。
例えばシンバルなどの高音に入ってくる音は何が鳴っているのか分かりにくいです。
音楽機材に詳しい人の間では「MDR-CD900ST」の音がフラットではないのは周知の事実で、一応私もそれを知っていたのですが、予想以上にフラットではありませんでした。
「MDR-CD900ST」の周波数特性のグラフを見ると大体下のような感じです。
日本のサイトではこちら(CD試聴記)にグラフがあります。
これを見ても分かるように、中高音、高音に下がっている部分があり、全然フラットではありません。
私の印象としては、低音と中高音は聴きやすいです。低音はかなり強調されている感があり、上の音域の音を覆ってしまっています。
個体にもよるかと思いますが、私が使ったものはこんな感じでした。
正直なところ、がっかりしました。Amazonのレビューでは「他のヘッドフォンがいかに音を着色しているか分かる」と書いていた人もいましたが、私はこのヘッドフォンも結構着色しているなという印象です。
音が近いため、音の空間は表現できない
イヤーパッドのクッションがかなり薄く、メッシュ部分が耳に押しつけられ、奥にあるドライバーユニットが耳にあたって痛いです。側圧も強め。
ですが、これによってヘッドフォンのドライバーユニット(音を出す部分)が耳に近いです。
耳に近いため、音場が近く、音が近いです。耳元から音が出始めている感じがあります。
これは善し悪しありますが、音のあら探しをする場合は最適でしょう。しかし音の空間はうまく再現できていません。
音が近く、音の空間がうまく表現できないため、音が薄く一面的に感じます。
ちなみにイヤーパッドはすぐにボロボロになりそうな素材です。かなり安っぽいです。
音質が悪い感じがする
高音をうまく鳴らしてくれないため、音質が悪く感じます。そして低音、中音域は聞こえやすいため、ビットレートが低いMP3音源を聞いている感じがしました。
音を一度ラジオに通して聞いている感じです。
高音は音の繊細さ、抜けなどに大きく影響します。このヘッドフォンは高音が弱いため、音質の悪いヘッドフォンだと感じさせられます。
録音した音声のあら探しをするには適している
普段の利用でもこのヘッドフォンを使っている人がいるようですが、私としては普段の利用にはちょっとおすすめしにくいです。
側圧が強めで長時間の使用で痛くなりますし、高音成分が少ないので、音楽を聴く際には物足りないです。最近の音楽は高音がたくさん入っています。
もしかしたらエージングをもっと長時間行わなければならなかったのかもしれませんが、エージングは効果がないという話もあります。
そもそもこのヘッドフォンは業務用のモニターヘッドフォンですから、長時間のエージングが必要だとすると仕事用には使いにくいはずです。
音にこだわりがある人は1つ持っていてもいいでしょう。あとは録音をする人。
中高音までの音、例えば人間の声などを録音した音を聴く際に、あら探しをするには適しています。この使い方の時には音が近く、空間が薄いことが利点となります。
日本ではデファクトスタンダードなヘッドフォンであり、このヘッドフォンが基準になっています。レコーディングスタジオで使われている音はこれなんだと知ることができます。
業界標準の音を知っておかないと会話ができないときもあるかもしれません。
ちなみにプラグは「ステレオ標準プラグ」なので太いです。この太さのプラグを扱える機材がない人は「ステレオミニプラグ」に変換するプラグを一緒に購入するといいでしょう。