『Chrono Cross』レビュー - 今更クリア

2019/06/06 2012/05/05

今更ながら Chrono Cross(クロノ・クロス) をプレイしてクリア。ずっと前からストーリーを知りたいと思っていたので、ちょうどプレイする PC ゲームが無い今やってしまおうとプレイした。

ストーリー

ストーリーが盛り上がるのはゲーム後半

ストーリーはなかなか面白かった。Chrono Trigger ほど没入感は無いけど、後半から盛り上がってきて良かった。私が盛り上がったのは以下のシーン。

  • パラレルワールドに初めて行った時 [序盤]
  • ヤマネコとセルジュ(プレイヤーが操るキャラクター) が入れ替わった時 [中盤]
  • パラレルワールドがそのワールドでは死んでしまったセルジュを取り戻した事により次元の揺らぎが消え、姿がヤマネコであるプレイヤーがパラレルワールドに行けなくなってしまった時
  • グランドリオンが存在すると分かった時
  • マールディアの鐘がある場所で、過去に未来を救った少年達が現れた時
  • 未来都市に到着した時 [後半]
  • その未来都市は天才ルッカ博士の理論が生み出したと分かった時
  • 未来都市のコアに入る際の照合で「お帰りなさい、クロノ・トリガー」と呼ばれた時
  • ヤマネコが実は「 (^^)」だった時
  • 燃やされたルッカハウスに行けた時
  • 終盤の怒濤の新情報

Chrono Cross のストーリーは幾つかのパラレルワールドとタイムトラベルを組み合わせたストーリー。Chrono Trigger でタイムトラベルをやってしまったので、Chrono Cross ではパラレルワールドをメインにしたのだろう。でもこれは後半に差し掛かるまでの話。後半はしっかり過去-現在-未来の話が加わってくる。

Chrono Cross の問題点は、本当にストーリーが盛り上がるのがゲーム後半という事。Chrono Trigger ほどうまくはゲームの序盤からストーリーに没入させてはくれなかった。ゲームを始めたばかりの時、どうしてパラレルワールドが存在するのか、ヤマネコって何だろうかと分からない事が多い。それらが語られるのが終盤なので、それまではヤマネコを追う普通の RPG という感じだった。

その終盤に辿り着くまでの一つの盛り上がりは、悪っぽい存在であるヤマネコと自分が入れ替わってしまう場面。その時ヤマネコはプレイヤーの姿でパラレルワールドを暴れ回る。プレイヤーはヤマネコの姿なので、ヤマネコがこれまでにしてきたことによって周りから疎まれる。ただヤマネコは各国の軍の指導者的な立場の人と行動を共にしていたので、そちらの方面には顔が利くのは便利。

この体の交換が中盤の出来事である。興味を惹かれるシーンではあるけど、私としてはこのストーリーにそこまで盛り上がれなかった。この体の入れ替わりの場面で、「どうして対象がセルジュだったのか」という疑問を頭に浮かべられればもっとゲームを楽しめたのだろう。でも私にはそこまで出来なかった。

中盤からは前作を知っている人は盛り上がれる。この辺りからラヴォスを倒した少年達が登場し出す。グランドリオンなども出てくる。やっと Chrono Trigger と世界が繋がっていると分かる。私は前作をプレイしているのでここで盛り上がれるけれど、前作をプレイしていない人はたぶん盛り上がれないだろう。

そのような人にとっては姿がヤマネコの主人公が自分の姿を取り戻すストーリーをただ追うだけになってしまう。もったいない。そのストーリーは全体のストーリーから見ると表面の部分であり、裏側を読み取れないと面白くない。

後半から世界の全容を知れる

後半からは良かった。やっと世界の全容を少しずつ知れる。それは世界の観測者がいる場所に到着したからである。観測者の話を盗み聴くことで世界に対する理解が深まっていく。

観測者がいること自体にはそこまで驚かなかった。観測者が登場するストーリーを幾つか知っているので私としてはそこまで新しい概念では無い。しかし、Chrono Trigger の世界でそれをやるかという驚きはあった。確かにそういう人達が未来に存在する可能性の方が高い。ただ彼らはまだ時間を制御できていないらしい。

「時のたまご」をまだ手に入れていない様子。

そして終盤には怒濤の世界説明。知りたかったのでこれは有り難くはあったけど、一気に説明されるので理解が追いつかない。最後の戦闘の前にラヴォスを倒した少年達が語る言葉の方がうまくまとまっていて分かり易い。結局キッドとはこういう存在だったのか、オープニングのキッドの意味はこういう意味だったのか、と分かる。ただそれぞれが本当に一言の台詞だった。さらりとしすぎている感はある。

Chrono Cross のオープニング映像

ちなみに上の動画のコメントには「Chrono Cross の続編が Radical Dreamers である」、「いやそうではない」、「Chrono Cross のストーリーはそこまで悪くは無いんだけど…」とか色々と書かれていて面白い。日本人よりも詳しいかも知れない。

私も一言言うと、おそらく Radical Dreamers は続編ではありつつも、Chrono Cross にそれは吸収されている(と Ultimania に開発者の言葉として書いてある)。なので Chrono Cross が続編だと言ってしまっても良いと思う。

ストーリーの複雑さと攻略本

Chrono Cross のストーリーは結構複雑だ。プレイヤーに特に理解を促そうとしないので、しっかりと話を聞いて記憶し、辻褄を自分で考えていかないとストーリーに置いて行かれてしまう。

私は「魔法王国ジール」関連の事を忘れていたので危なかった。「サラが…」と話された時、「サラって重要人物らしいけど誰だ? 出てきたっけ」と考えていた。「そう、私がガッシュだ」と言われても、「えーっと…」という感じで記憶に無かった。

ボッシュ、ガッシュ、ハッシュの三賢者とサラ王女。彼らは Chrono Trigger で過去に行った時に出会った人達。賢者達からは時のたまごや黒鳥号などを授かった。…と攻略本に書いてある。忘れていた。この本が無かったら危なかった。

余談だけど、この ULTIMANIA(アルティマニア)という攻略本は良く出来ている。私は攻略本に縛られながらのプレイはあまり好きでは無いのでマップなどの細かい部分は見ないようにしていたのだけど、大まかなストーリーの流れが書いてある部分はかなり参考になった。

ストーリーの分岐も自分の行きたい方に行けた。キッドを助けるルート。そして、さらに Chrono シリーズの年表や Chrono Trigger での出来事とのリンクが書かれている箇所は有り難かった。ドリストーンやマザーブレイン、プロメテウスの事はすっかり忘れていた。

Chrono Cross におけるプロメテウスの話し方は Chrono Trigger のプロメテウスのものだった。「ロボ」のコードネーム。このプロメテウスはロボでは無いけれど。これに気づけないとストーリーを楽しめない。

話を戻そう。ストーリーに関する重要な事柄はさらりと語られる。例えば下の場面。

「おひめさまじゃんか?」

これはキッドというキャラクターを見て、「グランとリオン」のグランが言った言葉。この言葉の意味はエンディング手前で分かる。でも私はこの時はさらりとした言葉だったのでさらりと聞き流してしまっていた。この場面はスクリーンショットを撮っていたから後で見返して分かっただけで、スクリーンショットが無かったら思い起こすことさえ無かっただろう。

Chrono Cross のプレイはストーリーを自分で読み解く楽しさがあった。洋ゲーにはこういう楽しさはあまり無いし、そもそも洋ゲーはストーリーが練られたゲームがあまり思い浮かばない。

Chrono Cross はストーリー自体が子供向けでは無いと思う。恋愛要素もあまり無いし、登場するキャラクターがよくある日本のゲームのように子供ばかりというわけでも無い。しっかりと Chrono シリーズの出来事を整頓してストーリーを追わないと理解できないので、ストーリーがちょっと難しいゲームと言える。

Chrono Trigger の方がストーリーの伝え方や盛り上げ方はうまかったように思う。しっかりとストーリーを追っていかないと分からなくなると感じた事は無かったし、退廃した未来を見た時は心が痛んだ。過去や未来に行くだけでワクワクした。時間を行き来する時も各時代に特徴があって、ごちゃごちゃして分からなくなったという事も無かった。

Chrono Cross はパラレルワールドなのでごちゃごちゃしやすい。でもそのごちゃごちゃした紐を解いたときの充実感はあった。

戦闘のイライラと仲間が多すぎること

戦闘はシステム的に楽しくはあるが、私としてはストレスが溜まる部分もあった。それは敵から攻撃を割り込まれてしまうことと、攻撃の命中率がおかしいこと。

94% の命中率の攻撃を敵が3連続で避けた時にはさすがにイラッときてしまった。どうやって命中率を計算しているのか分からないのだけど、表示されている命中率は本当の命中率では無く、おかしい。90% ほどの命中率でもよく外れる。体感としては7~8割ほどの命中率。表示が 80% あたりは6~7割くらいしか当たらないんじゃないだろうか。

命中率は攻撃を当てると上がっていく。なので戦闘時はまずは弱攻撃をして命中率を上げてから強攻撃をするというような戦法になる。しかしこうやって命中率を上げている時に敵に攻撃を割り込まれると、せっかく上げた命中率が初期状態に戻ってしまう事がある。これにも少々イラッとさせられた。

他には、仲間が多すぎる事。仲間は全部で40人以上いる。彼ら一人一人にある程度ストーリーがあるのだけど、それぞれのストーリーをそこまで深く掘り下げられてはいないため、もっと人数を少なくしても良かったと思う。重要キャラクター10人くらいで良かったはず。「カブ夫」とか忘れそうだった。そういえば龍の子とかいうのもいたような…。龍の子って何だったのだろう。

まとめ

今更ながら Play Station のゲームをプレイした。映像は低ポリゴンと低解像度テクスチャによりちょっとごちゃごちゃしていて見難い。でもそこまで気にならなかった。戦闘はもう少しテンポが良ければもっと楽しかったと思う。

実はプレイする前は戦闘にはあまり期待していなくて、とにかくストーリーを知りたいと思っていた。実際にプレイしてみると戦闘はつまらなくは無い。むしろフィールドの属性を常に考えて戦う戦闘は面白かった。ただ戦闘にカードゲームのトラップ的要素の導入は要らなかったと思う。

グッドエンドを迎えた。グッドエンドへ行く方法は分かりにくい。そもそも "クロノクロス" を手に入れる為の情報も薄い。

Chrono Cross のストーリーは Chrono Trigger のストーリーを知っている人なら楽しめるだろう。もっと言うと、おそらく Chrono Trigger をプレイしていないと楽しめない。Chrono Trigger をプレイせずにいきなりこのゲームをプレイした人はあまりいないだろうけど、その人はたぶんあまり楽しめなかったと思う。

A.D. 1000 にガルディア王国の千年祭が行われた。ここから始まるのが前作。そして A.D. 1003 にセルジュが誕生したらしい。Chrono Cross は Chrono Trigger のすぐ後の話だ。ただ Chrono Cross に登場するラヴォスを倒した少年達はセルジュ達と同じ時間軸にはいないらしく、どういうことなのかは良く分からない。パラレルワールドが一つでは無いことはゲーム中で示唆されているので、そういう事だろうか。

ストーリーが盛り上がるのが後半というのが残念ではあるけど、全体としてはなかなか満足できたストーリーだった。近年プレイした洋ゲーRPGのストーリーは優に超えている。

ちなみに、このゲームのメッセージ性は強い。エンディングで「生きる生命全てに意味がある」と伝えられる。ストーリーから見ればちょっと異質なメッセージではあったが、これは開発者がゲームをプレイした人に伝えたいことだったのだろう。

ところで Chrono Cross の続編はおそらく出ないだろう。Chrono Cross は Chrono Trigger から続くストーリーとしてはなかなか良く出来ていると思うし、前作の考え方が拡張されている。タイムトラベル、パラレルワールド、観測者と来て、続編を作るとしてこの次はどうしたら良いのだろう。大体のことはやり尽くされた感がある。それにもう発売からかなり時間が経っているので「Chrono シリーズ」というわけにもいかず、タイトルに "Chrono" を冠せずに新しいゲームとして出した方が良いだろう。

またいつか Chrono Trigger をやってみたい。タイミング良くリメイクされたりすると良いのだけど。3D にせずとも高解像度の 2D で良いので何とかして欲しい。

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About

Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。