Amanita Design の謝罪

Humble Bundle でリリースしたばかりの Botanicula が pay-what-you-want で買えてしまうことが物議を醸しているのはたぶん知っているだろう。Botanicula を Pre-order した人が怒っている件だ。それを受けて、Amanita Design が Botanicula を Pre-order した人への謝罪をブログで書いている。

Apology to Botanicula pre-orderers— Amanita Design Blog

謝罪自体はそこまで大したものでは無くて、「忙しくて間違えちゃったてへぺろー。Pre-order した人に Botanicula の full soundtrack と art book、Machinarium を付けるよ」という事が書かれている。Machinarium なんてもう持っているんじゃ無いかというツッコミは置いておいて、このブログではこの謝罪へのコメントがかなり優しい。

I’m very happy that I’ve made the pre-order on GOG.com. Thanks for the extra contents, but in my specifically case the money that I spent are nothing for the great value that Botanicula has shown!

No worries whatsoever! I bought the incorrect version at Gamersgate because I was desperate to play the game! When the Humble Bundle deal went live, I went ahead and supported you guys with 20 dollars as well!

I am very happy with the game and although I already finished it, it was worth the wait! Hopefully you guys make good money with the Humble Bundle deal to warrant more games and more platforms!

Amanita Design needs more exposure!

などなど。Amanita Design のブログをチェックしている人は基本的には Amanita Design のファンだから、「謝る必要は無い。もっとお金を出すよ」という人ばかり。GOG.com などの人達とは少し違っている。

確かに特別 Amanita Design のファンでは無くて、ただ Botanicula のゲームに惹かれて Pre-order した人は怒るかも知れない。$8.99 ほどで Pre-order したゲームが発売日に Humble Bundle で $0.01 で買えてしまうのだから。でも Amanita Design に心酔している人はとにかくサポートしたいという気持ちでいっぱいなのだろう。こういう人達はお金について気前が良い。これを応用すると AKB 商法へと行けるのだろう。

こういう気前の良い人達を見ていると、あっちの方が安い、こっちの方が安いと比較したり、安く買えるゲームを高く買ってしまったと嘆き怒っている人を見ると多少醜さを感じる。私も Steam のサマーセールなどをニコニコしながら利用しているのでそういう怒りとか比較とかは良く分かる。でも、怒鳴り散らすとまでいくとさすがに醜い。

でもどうして怒っているんだろう

でも今回の事で怒っている人は、何を理由にしているんだろう。単に高く買ってしまったという理由だけだろうか。それを局地的に一つ掘り下げてみようと思う。

ゲームはプレイしないと価値が決められない

私は以前 2D Boy が自分達で作った World of Goo というゲームを pay-what-you-want 形式で販売した時の、ある購入者からのコメントを良く覚えている。pay-what-you-want でこのゲームを購入する際に購入者に質問の欄があって、そのうちの1つは「どうしてその値段を付けたのか」というものだった。

普通の人の回答は $5 くらいかなと思ったから、とか、定価で買ったとかだった。しかし、$0.1 を支払った人のコメントはよく考えられたうまい理屈だった。たぶんただ単に屁理屈っぽく言ってみただけなのだろうけど。それは、「ゲームをプレイしないと価値が分からなくて価格が決められないじゃないか」というコメント。これを見た時私はなるほどな、と感銘を受けた。ドラゴンクエストでいう深く心に刻むボタンを心の中で押していた。

確かに World of Goo というゲームを知らない人が、このゲームを pay-what-you-want でどうぞと言われても価格を付けられない。それではどうするかというと、この購入者は無料に近い価格を支払った。つまりまずは試してみたい、という価格を付けた。それで良かったら後でもう一度買うよ、という考えだ。本当に後で買うかは分からないけれど。

これから分かることはやはり自分にとってのゲームの価値を決めるのはゲームをプレイしてからだということで、未プレイのゲームが含まれる巷の Game Bundle を pay-what-you-want で買ってからプレイしようというのは流れがおかしい。価値が分からず価格が決定できないから。

そのため、こういう Bundle をテキトーに価格を付けて購入した後に「ゲームをプレイしてみたらクソゲーだった。この Bundle に $5 も払ってしまった」となってしまうことがあるわけだ。自分にとっての価値は自分で決めるものだがこの状況ではそれが出来ず、価値が良く分からないものの価格を先に決めているので、自分で決めた価格とプレイ後に決める価値に間違いが発生しやすい。

$0.1 で Bundle を買うのは意外と正しいことなんじゃ無いか

この間違いから開放されるのは、pay-what-you-want の対象になっているゲームをプレイした事があるか、またはそのゲームの Developer を知っていてサポートしたいという気持ちがある時だろう。それか少し変わって Humble Bundle でのように、まずはサポートやチャリティーへの寄付だけを考えて金額を決めて支払い、そのお礼にゲームを貰えるという形なら、援助する価値・価格は自分で決められるのでこれも間違いは発生しないだろう。Humble Bundle でゲームの価値に見合わない価格を支払ってしまったという間違いが発生しても、「ゲームを買ったんじゃ無くて、お金を寄付したんだ」というような思考のすり替えができ、間違いでは無くなる。

pay-what-you-want に関係なく、ゲームの購入はほとんどの場合先払いなので、プレイするまで楽しいか分からない( = 価値が決められない)。この問題を解消するのが Demo の存在。Demo があればゲームをプレイして楽しいかどうかある程度見極めてから購入できるので、間違いが発生し難い。「発生しない」と断定できないのは、Demo で楽しい部分だけをプレイさせる事もあるだろうから。(私は Machinarium をこの例に挙げたい。)

結局 pay-what-you-want 形式の Bundle は本来、ゲームをプレイした事があるか、ある程度そのゲームとその周り(Developer など) を知っている人が価格を決めて購入する Bundle である。ただ Humble Bundle は例外的にうまい。ここをうまく補強するシステムを導入している。それは「後から購入額を追加できる」というシステムを搭載しているからだ。とりあえず Bundle を $0.1 で買っておいて、あとから $10 上乗せするということが出来る。

ゲームの価格を決められないならまずは無料に近い金額を支払っておき、Demo をプレイする感覚で製品版のゲームをプレイする。その後、良かったら金額を追加する、というのは私は結構うまいやり方だと思う。だからこういう考えのもと、$0.1 で Bundle を購入するのは正しい流れではある。

ただ、ここでは良い面だけを書いている。$0.1 で購入する人は心ない人もいるだろう。転売する人やイベント用に Steam アカウントを大量に作る人、海賊版よりいいやとする人。他にも、価値を決定することを忘れ、「楽しいゲームが安く買えた!」と喜んで終わる人などもいるだろう。ゲームを買いたいだけの人はゲームを手に入れられれば満足してしまう。

強制では無いけれど、$0.1 で Bundle を購入してゲームを試しプレイした後、その Bundle の価値をもう一度考えるのは忘れないようにしたい。

価値の決定の不公平に怒っている人もいるのではないか

Botanicula を Pre-order した人が怒っているのは、単にゲームを高く買ってしまったという面もあるだろうけど、価値が分からないものに高く支払ってしまったという部分もあると思う。Botanicula の Pre-order はお金を先に払うので、自分にとってのゲームの価値はその時点では決められない。それに pay-what-you-want では無いので価格は固定だった。

つまり、Pre-order した人と Humble Bundle で購入する人との間に、ゲームの価値の決定に不公平さが生じる。Humble Bundle で購入する人は自分にとってのゲームの価値をプレイ後に決定できるが、Pre-order した人はそうはいかない。ここに怒っている人もいると思う。

ただ最初に書いたように、Amanita Design の熱狂的なファンでは無い人は安く良いゲームを買えればそれで良いので、私の感覚では価値決定の不公平さに怒っている人はあまりいないと思う。それか他の理由で怒っている人もいるだろう。でも大抵は、もっと安く買えるのにゲームを高く購入してしまったという怒りだろう。「騙された」という表現が近いのかも知れない。訪問販売で高く買ってしまった浄水器は、実は他で買うとかなり安いものだった、という状況に近い。(クーリングオフは置いておいて。)

しかし、$9 ほどで Pre-order してしまった人が Botanicula をプレイしてこれに $30 ほどの価値を見いだしたらどうなるだろう。この場合もこれを $0.1 で買えなかったと怒るのだろうか。この状況では自分が決めた価値よりも安くゲームを買ったことになる。満足していてもなお腹を立てるのはさすがに醜さ・貪欲さを感じるが、価値観は人それぞれ違うので、「安く買えなかった、pay-what-you-want を知らされていなかった」と怒る人もいるだろう。

まとめ

Botanicula を Pre-order して現在怒っている人達の怒りの理由の一つを、私は価値の決定の不公平さだと考えた。Botanicula を Pre-order してしまって Amanita Design に対して怒りたい人はこの理由が良いだろう。少なくとも「騙された!」と叫び回るよりは。また、今回怒っているのは熱狂できなファンでは無く、単に Machinarium が好きでその Developer の次回作を買ってみようと思ったり、単に Botanicula を買ってみようとした人達だろう。

Amanita Design のファンにもそのレベルがあるが、心酔的なファンは今回の件に怒っていないだろう。彼らは Amanita Design のブログに書き込みを行っているような人達で、ともかくお金をたくさん払って Amanita Design をサポートしたい人達。彼らにとって Amanita Design のゲームはもの凄く価値があるものなので、Pre-order の金額など少ないものだ。見返りを求めない投資家のようなもの。Amanita Design に取っては嬉しい存在だろう。

ところで、今回の件は Indie Game を予約購入すると危ない(すぐに安くなる) という危険性を決定付けたと思う。一番有名な Bundle 販売の Humble Bundle によって。私も最近は Indie Game を Pre-order するのは控えている。唯一私が Pre-order すると決めているのは Hothead Games の DeathSpank シリーズ。私は今のところ全部 Pre-order している、熱狂的なファンの一人である。

Pay-what-you-want の形式に近い Bundle がたくさん誕生したのもあって今後この形式の販売はどうなっていくのだろうか。Developer をサポートする系統の Bundle は意外と Kickstarter に流れたりして。

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Nomeu

ほとんどのジャンルのゲームが好きです。特に好きなのはRPG。「Xenogears」「クロノトリガー」「ペルソナ3、4」とか。ドラクエは「V」。主人公が「勇者」ではないところが好き。ビジュアルノベルは「STEINS;GATE」「Ever 17」「AIR」が好き。

どこぞの作曲コンクール最優秀賞受賞。好きなゲーム音楽は「愛のテーマ (FF)」「Heartful Cry (ペルソナ)」「夢の卵の孵るところ (Xenogears)」「凍土高原 (Kanon)」「夜の底にて (クロノトリガー)」「Theme of Laura (Silent Hill 2)」「Scarlet (みずいろ)」「bite on the bullet (I've)」など。たくさんありすぎてスペースが足りません。

ゲーム音楽以外だと「Ballet Mecanique (坂本龍一)」「月光 第3楽章 (L.v.Beethoven)」「水のない晴れた海へ (Garnet Crow)」「Angelina (Tommy Emmanuel)」「空へ… ライブ版 (笠原弘子/ロミオの青い空)」「太陽がまた輝くとき (高橋ひろ/幽遊白書)」「スカイレストラン (ハイ・ファイ・セット)」など。

Twitterのアカウントはありますがうまく扱えていません。Twitterでご連絡の際はDMだとメールが来て気付けます。