2K Gamesのゲーム全体でMOD禁止となりました。スパイウェアとまで呼ばれるデータ収集も追加。クラウド・ゲーミングもダメかも

人気のトレジャーハントFPS「Borderlands」シリーズのセールが始まり、その中で「Borderlands 2」が無料配布されています。

The Ultimate Vault Hunter’s Upgrade lets you get the most out of the Borderlands 2 experience.

2012年リリース。通常価格 6,080円。Steamのレビュースコアは 92%(295,349 件中)で「非常に好評」。MetaScore 89。

配布の期限は「太平洋時間6月8日(日)午前10時」まで。欲しい人はこちらからもらっておきましょう

なお、このゲームのパブリッシャーである Take-Two Interactive / 2K Games は最近 EULA(End-User License Agreement / ソフトウェア使用許諾契約)をアップデートし、これがかなり不評です。

「Borderlands 2」だけでなく、この会社のゲーム全体の EULA が更新されました。

この会社のゲーム全体でレビューボムというくらいにコメントが投稿されています。ただ悪いレビューボムではないし、Steamがいうトピックずれでもありません。情報として価値があります。

ゲームの起動時に同意を求められる EULA は下のように変わったようです。興味がある人は実際にインストールして EULA や利用規約を表示してみて下さい。

• Mods are a bannable offense
• Display of Cheats/Exploits is bannable
• Forced arbitration clause and a waiver of class action and jury trial rights for all users residing in the United States and any other territory other than Australia, Switzerland, The United Kingdom, or The Territories of The European Economic Area
• You can be banned for using a VPN while connecting to online servers
• Cannot access game content on a Virtual PC

Collected Data Types:

• Identifiers / Contact Information: Name, user name, gamertag, postal and email address, phone number, unique IDs, mobile device ID, platform ID, gaming service ID, advertising ID (IDFA, Android ID) and IP address
• Protected Characteristics: Age and gender
• Commercial Information: Purchase and usage history and preferences, including gameplay information
• Billing Information: Payment information (credit / debit card information) and shipping address
• Internet / Electronic Activity: Web / app browsing and gameplay information related to the Services; information about your online interaction(s) with the Services or our advertising; and details about the games and platforms you use and other information related to installed applications
• Device and Usage Data: Device type, software and hardware details, language settings, browser type and version, operating system, and information about how users use and interact with the Services (e.g., content viewed, pages visited, clicks, scrolls)
• Profile Inferences: Inferences made from your information and web activity to help create a personalized profile so we can identify goods and services that may be of interest
• Audio / Visual Information: Account photos, images, and avatars, audio information via chat features and functionality, and gameplay recordings and video footage (such as when you participate in playtesting)
• Sensitive Information: Precise location information (if you allow the Services to collect your location), account credentials (user name and password), and contents of communications via chat features and functionality.

簡単に訳しておきます。括弧「(…)」の中は私の補足です。

  • MOD を使うとBAN対象
  • チートや Exploit(←バグやグリッチを利用する行為)を見せるのもBAN対象
  • 強制仲裁条項、集団訴訟の放棄(←これは他のサービスでも多いです。Steamもそうです。変更ではなく以前からあったかも)
  • VPN での接続はダメ
  • バーチャルPC上のゲームコンテンツにアクセス不可能

ゲームを利用することで収集される情報はこちら。「スパイウェアだ」とまで言われています。

  • 名前、ユーザーネーム・ゲームタグ・ID、メールアドレス、住所、電話番号、IPアドレス、デバイスのIDなど
  • 年齢と性別は除外(←嘘だという人も。下の「ユーザーの利用履歴から推測される情報」としては収集されるでしょう)
  • 購入履歴、利用履歴や設定、ゲームプレイ情報
  • 支払い情報
  • インターネットでの活動: このサービスや広告に関わるブラウジング・通信情報、インストールされたアプリケーションなど
  • デバイスと利用履歴: ブラウザのタイプやOSなども
  • ユーザーの利用履歴から推測される情報
  • 音声や映像の情報: チャットやゲームプレイの録画も
  • 正確な所在地、チャット機能履歴

他の多くのサービスでも収集される情報です。日本の通信会社(ドコモとか)、Tポイント(Vポイント)のCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)はもっと多くのデータを集めています。Meta/Facebook はクレジットスコアとか性癖とかも収集しています。

Google や Meta/Facebook は規約に書かれていないものまで密かに情報収集をすることで有名ですし、多くのサービスでユーザーが考えているよりも多くのデータが収集されています。

Take-Two Interactive / 2K Games が収集した個人情報は第三者に提供されます。

なお、この EULA の変更へ不満を言う人に対して冷笑的に「大丈夫だよ、そう書かれているけど実際は収集されたデータは使われないよ」と言っている人もいます。

これは日本でもよく使われる文言なのですが注意して下さい。

懸念を表明する人に対し、「そう書かれているけど実際にはあなたの心配事は起こらないよ」。緊急事態条項、通信傍受、憲法改正などでよく言われています。

今回の件では、収集されるデータが使われないかはユーザーには分かりません。でも確実に情報収集の権利が拡大されています。

そもそも収集したデータを使わないのであれば EULA・利用規約にデータを収集するという文言を含めなければ良いのですが、権利を拡大したいので文言の削除をしません。つまり、実際には収集したいのでしょう。

擁護している人が次に言う台詞は「君は情報収集されて困ることでもしているのかい?」ですね。

そういうことじゃないんだよ、と。

Steamのレビューコメントで日本人が全く騒いでいないのを見ても、日本人は収集される個人情報にものすごく鈍感か、知識が無くて付いていけていません。

それに日本ではそういう細かい事を言うと空気読めないやつと言われる心配(空気)がありますが、ゲームのプレイ前に「同意」しなければならないので知っておいた方が良い話です。

今回の件では MOD の禁止は大きい変更です。「オフラインでMODを使えば大丈夫だ」と言っている人もいましたが、2K Games のゲームはソロプレイでもサーバーと通信をするので、「完全にオフラインでのプレイ」というのがたぶんできないのではないでしょうか。

「Borderlands」シリーズはゲームのシステム上、ソロプレイで作ったキャラクターがマルチプレイで使えますから、MODを禁止するなら全面禁止にするしかないでしょう。

つまり、ソロプレイでも MOD を使うと BAN される可能性があり、BAN されればゲームがプレイ不可能になります。ソロプレイのみの MOD 利用で、マルチプレイでは MOD を使わずに他人に迷惑を掛けない場合でも BAN です。

この場合、ゲームは返品できるのでしょうか? BANになった後だと契約違反ですから無理かもしれません。プレイ前なら EULA に同意できないのを理由にして返品は可能ですが。

あと、「バーチャルPC上のゲームコンテンツにアクセスできない」というのはクラウド・ゲーミング(ストリーミング・プレイ)ができなくなるということでしょうか? クラウド上のPC(リソース)を使うので、たぶんここで言われているバーチャルPCに含まれます。

今回の件でEULA・利用規約の問題が顕在化されたのは良いことです。EULAとか利用規約とかは長すぎてほとんどの人が読んでいないと思いますので、こうやって誰かがチェックしてくれるのは有り難いです。

議論されてより成熟されたものになるのを期待しています。みんながちょっと過剰反応している部分もあるかと思いますが、ユーザー側の利益になるように着地すれば嬉しいです。

Nomeu / のめう
PCゲーマー

ゲームに没頭している時間は幸せ。

レビューとか良さげなセール情報とかを書いていきます。

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