
以前から気になっていた「レイジングループ」をやっと購入し、プレイしてクリアしました。
このゲームは巷で人気の「人狼ゲーム」に着想を得たヴィジュアルノベルゲーム。私はパニックホラーやデスゲームが好きなので人狼ゲーム関連のゲームとか映画とかは好きです。
「レイジングループ」はSteamでの評価が高く、安くなったら買ってみようと思っていました。これまで割引率が低かったので手を出しにくかったのですが、ちょっと割引率が高くなったのでついに購入。
最後までプレイした感想としては、前半は楽しめたのですが後半が強引すぎてがっかりでした。
死に戻ると「おおかみ」役が変わるのが面白い
「レイジングループ」では12人ほどしかいない貧しい小さな村で人狼ゲームを行います。主人公など、たまたま村を訪れた人がいて、そこにさらに数名加わります。
この村では霧が出ると「黄泉忌みの宴(よみいみのうたげ)」を行うことになっています。これが現代の私たちが言うところの「人狼ゲーム」。
村人は「ひと」役と「おおかみ」役に分かれます。人狼ゲームでおなじみの、「ひと」の「役職」もありますし、昼に集会、夜に殺人があります。
村人はこの村に伝わる神話を信じています。「申奈(しんない)様」という神様がいる、「おおかみ様」も神様である、霧が発生している夜に出歩くと「おおかみ様」から「けがれ」を受ける(=殺される)、「おおかみ様」が人に乗り移る、「おおかみ様」は恨みがあって人を殺すから「おおかみ」役を(縄で)括らねばならない、「かみさま」がいて怖い、「村の外には出られない」など。
「ひと」の役職は「加護者」と呼ばれ、それぞれ「からす」「へび」「さる」「くも」などと呼ばれます。これも神話に基づいています。
主人公は外からたまたま村にやってきた部外者なので、村人たちが信じているものや「黄泉忌みの宴」のルールが奇妙に見え、神話や謎ルールは果たして本当なのだろうかと探っていくのが伝奇ミステリーとして楽しいです。
「レイジングループ」の「ループ」とあるように、主人公は死んでも記憶を保持して最初からやり直せます。色々なことを試して殺され、徐々に謎を解明していきます。
このゲームが面白いのは、死んで戻ると「おおかみ」役が変わっているところです。もう少し詳しく言うと、ルートによって「おおかみ」が変わります。
ループものですから、失敗したところを別の選択肢に変えてみると、別ルートに入って配役が変わりまた新鮮に楽しめます。
再び誰が「おおかみ」なのかを考えながらストーリーを進めていくのが楽しい。そして徐々に「黄泉忌みの宴」のルールや神話の謎が分かっていく過程も楽しいです。
私も実際にその状況になったら試すだろう、本当に村の外に出られないのかと試してみたりするところも良いです。
主人公は人狼ゲームをうまく終わらせて、さらに自分がループしてしまうのも終わらせたい。でも、人狼ゲームが終わったとしてもループが終わらない…。
後半のネタばらしは強引で退屈。最後はなんと「○○○」で何でもあり
ここはネタバレが含まれます。事細かには書きませんが、未プレイの人はご注意を。
何度も色々を試しながら徐々に謎が解けていくのは楽しいのですが、後半のネタばらしというか「解決編」がつまらないのです。
「黄泉忌みの宴」がなぜ行なわれているかなど、全部が村の歴史・神話に基づいて説明されます。現実の話ではなく全部ファンタジーなので退屈なのです。
ちょっとメタな視点でこのゲームのストーリーを見ると、シナリオライターは「黄泉忌みの宴(=人狼ゲーム)」がなぜ存在するのかという理由付けを、空想の村の歴史・神話(民俗学)でこじつけて説明したいのです。
このゲームは「人狼ゲーム」の成り立ちを空想の民俗学的に説明するために作った壮大なゲームとも言えます。
やりたいことは分かるのですが、神話もファンタジー、歴史もファンタジーですので、なんともふわふわした足下の上に構築されたこじつけ説明なのです。古事記など現実にあるものからの引用(援用)もありますが、僅かです。
こじつけ説明が納得できるかというとちょっと説得力が弱いです。本当にそうなのかも、とまでは信じられず、ストーリーに没入できませんでした。
私としてはネタばらしは「実は全部人間がやっていました」「トリックはこうです」という結末の方が好きです。
ストーリーの幕引きも本当に御都合主義的で、「黄泉忌みの宴」を作った人たちが簡単に退いてくれます。
さらに酷いのは、ゲーム終盤とゲームクリア特典のエクストラコンテンツ。
人狼ゲームを空想の村の空想の歴史・神話(民俗学)で説明するのは「ストーリーの舞台設定をよく構成しました。頑張りましたね」と言えるのでまだ良いのですが、ゲーム中で起きる不思議な現象がなんと「超能力」として説明されます。
エクストラコンテンツを見て私は「もう何でもありなのか」と途中で読むのを止めてしまいました。ゲームクリア。超能力は本当に蛇足でした。
主人公は最初から嘘をついていて学生では無く、主人公がフラれたという「彼女」は「教会」「組織」「公安」の一員…。うーん。ものすごい御都合主義。
シナリオライターは何をしたいのだろう…。シリーズものとして続編を作りたいのは感じたのですが…。
人狼ゲーム系・デスゲームのストーリーは面白い。エロゲーの得意分野だったが…
私はそもそも人狼ゲーム系やデスゲームの狂気なストーリーが好きなので「レイジングループ」の前半はとても楽しかったです。クローズドサークル、伝奇というのも好きなジャンルです。
ですが後半は残念。最後は最低の蛇足。
ゲームシステム的にはスマホゲームのUIなのでボタンの反応が悪い。文字が大きすぎ。フローチャートのスクロールが大変。あと、音声が低音質で結構気になります。
キーボードでの操作がうまくできないのも不満です。スペースキーで文字送りさせて欲しかったです。
ゲームクリア後に「暴露オプション」の ON/OFF が切り替えられるようになり、再びゲームをプレイしたときに各キャラクターの心情や裏の行動が追加で補足されるのですが、再プレイが面倒です。メインストーリーに組み込んで欲しかった。
不満点は多いのですが「レイジングループ」のストーリー前半を楽しめたのは良かったです。全体的にはそこそこ楽しめた、という評価です。
後半はシナリオライターが頑張っているとは思います。頑張っているのは分かりますが、面白いストーリーではありませんでした。
私が人狼ゲームを使ったストーリーのゲームで面白かったと記憶しているのはエロゲーの「13人の麗しきケダモノ」です。
今は無き「Mink」という会社(cf. Wikipedia)のゲーム。2014年のリリース。「エロゲー批評空間」のページはこちら。
当時は一般人にも人狼ゲームが認知され出した頃かと思います。
ストーリーをかなり忘れてしまったのですが、私は「13人の麗しきケダモノ」の方がより現実感があるように感じます。
よく分からないゲームに突然参加させられ、「おおかみ」に指定されたとしても、人を殺すのは普通はやりたくないです。
そこを何とかしてやらないと自分が死んでしまう。その葛藤が描かれているのは「13人の麗しきケダモノ」でした。
登場人物が「レイジングループ」より人間っぽいです。「レイジングループ」は殺しが冷静に、簡単に行なわれすぎています。
「13人の麗しきケダモノ」はエロゲーなのでエロが絡んでくるのですが、戦略的に権力者に対して体を使う人が出るのもおかしくなく、死ぬよりは良いという判断しても一理あります。
投票では組織票があるととても強い。なのでむしろ性的なものを取引に使わない方がおかしいかもしれません。ゲームルール以外の法が機能しないのでかなり強力な取引カードです。
デスゲームの無秩序さにはエロゲーが合っています。エロゲーの得意分野です。
無秩序になると人間ってそんなものです。秩序があっても権力構造が固定化されると無秩序になります。
自由民主党・党首・首相の安倍晋三だって裏で隠れて統一教会と取引をして選挙で組織票を差配していました(森友学園問題、東京五輪汚職、裏金脱税問題などの仕組みも作り込んでいます)。
東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の自由民主党・橋本聖子はフィギュアスケートの高橋大輔に対し、権力を利用してパーティ中に皆の前で無理矢理に連続キス。
日本維新の会などの議員も権力を使って性的欲望を満たしていました。近年は学校の教師のセクハラも大量に露呈しています。"プレデター"・ジャニー喜多川もいました。
権力志向の人間に人間性や高潔さを期待してはいけません。
エロゲーの良さがここにあり、エロゲーだとそういう倫理観のないクズがしっかり登場するので楽しいのです。「レイジングループ」は登場人物の人間性が高すぎたかもしれません。もっとクズがいるのが今の日本では普通な気がします。
「レイジングループ」もエロゲーに近いシナリオでした。頑張ってエロゲーにしないようにしていました。エロゲー文化がまだ減衰していなければ「レイジングループ」はエロゲーとして発売されていたことでしょう。
そういえば有名な「euphoria」というエロゲーもデスゲームでした。「人狼ゲーム」ほどルールがしっかりしていませんが。このゲームを作った「CLOCKUP」はまだ会社が存在していました。
全然思い出せませんが、エロゲーにはデスゲームものが結構あったかと思います。今はデスゲームはマンガの方が多いかもしれません。
昔はストーリーが良いゲームというとエロゲーだったのですが、今はそういうエロゲーがほとんどなくなってしまったのが悲しいです。
「レイジングループ」はエロゲーのビジュアルノベル全盛期を少し思い出させてくれました。
このゲームを高評価にしている人はビジュアルノベル(エロゲーを含め)をあまり遊んでこなかった人かと思います。
「人狼ゲーム」自体にも初めて触れる人はこの「レイジングループ」をかなり楽しめると思います。空想の歴史の話が長いのでゲーム後半をどう感じるか分かりませんが、とりあえず前半は楽しめるはずです。