かたわ少女: サイゾーによる開発チームへのインタビュー
日刊サイゾーにてかたわ少女の開発チームへのインタビューを読める。部分的にちょっと興味を惹かれた箇所を取り上げる。
そもそもサイゾーがこのゲームを取り上げたことに驚き。何らかの要望があったのかもしれない。私はこのゲームが日本でどれほど知られているのか分からないのだけど結構有名だったりするのだろうか。日本でコミックマーケットにも参加しているらしいのである程度の知名度はもしかしたらあるのかもしれない。ともかく、データは取っていないが公式サイトからの「かたわ少女」のダウンロード数は結構多いらしい。(日本人によるダウンロード数という意味では無い。)
――開発にあたって参考になった日本のゲームなどはありますか?
開 どの開発者も作業のやり方には外部からいろんな影響を受けています。プロジェクト全体にとって最も影響の大きかった2つの作品を上げると、「To Heart2」と「narcissu」だと思います。前者はイラストに、後者はテキストに影響を受けました。
絵描き集団がプロジェクトに加わったとき、最初に決めたことの1つがゲーム中の絵柄でした。各人がそれぞれの流儀を持った絵描き集団ですから、なんらかの共通の基準を決める必要がありました。いくらかの議論を経て、甘露樹(leafのイラストレーター)氏の作品を彷彿とさせる絵柄に落ち着きました。絵描きたち全員がとてもリスペクトしている作家です。「To Heart2」に似た絵柄はどの絵描きも描けるし、「かたわ少女」にも合うと全員が考えました。氏の絵柄はかわいらしく快活ですが、落ち着いていてどこか現実味のあるものでした。
「narcissu」はゲーム中の感情の使い方が、ライター陣の多くに影響を与えました。ゲーム全体が中心的なプロットを軸に、とても注意深く組み立てられています。そしてプレイヤー自身の気持ちをうまく利用することで、メロドラマ風に陥ったり、テンションを上げすぎたりすることなく、プレイヤーの関心をかき立て、感情を揺り動かすことができていました。
「narcissu」って何だろう。「なるきっす」と思いきや「なるきっそす」と読むらしい。「ナルキッソス」はペルソナで出てきたので単語は知ってはいる。Wikipedia では「ナルキッソス(Νάρκισσος Narcissus)は、ギリシア神話に登場する美少年の名。」とある。まあ綴りが違うのは置いておいて、「narcissu」とは「ステージなな」という同人サークルによるゲームらしい。「ナルキッソス」と読み仮名が振られている。
このゲームはWeb版は無料で公開しているようだ。「narcissu」に強く影響されているなら、無料公開という考え方もこれに影響された可能性はある。このゲームは感情の描き方がうまいらしい。
そして絵柄は To Heart 2 に影響されているらしい。
( (C) Aquaplus / 公式サイトより )
私もかたわ少女は少しプレイしたのだけど、これには全く気が付かなかった。絵柄は似てるのだろうか。ただ無料公開しているゲームにしては良く描けた絵だとは感じた。
――システムが日本人にもなじみ深いビジュアルノベルの形式で違和感なくゲームを楽しむことができました。これまでも日本のゲームはプレイしたことはありましたか? また、海外では日本のゲームはどのような形で流通しているのですか?
開 すべての開発スタッフはビジュアルノベルをプレイしています。人によっては1、2本しかやっていませんし、たくさんプレイしている人もいます。お気に入りのブランドのウェブサイトや、「TECH GIAN」「G'sマガジン」などでビジュアルノベルの新作を常にチェックしている人もいます。ほとんどの場合、ゲームはインターネット経由で入手しています。そして英語・日本語の両方を話すファンによる翻訳パッチを使用しています。私自身のお気に入りはリトルウィッチの「Quartett! 」です。一部のスタッフの期待の作品は、天狐の「英雄*戦姫」です。
(赤は私による強調)
はは、あまり突っ込まないでおこう。
――ビジュアルノベル形式を選んだ理由は?
開 最初にプロジェクトの案が出たとき、多数の人の目を集めた要素の1つが、自分たち自身が大好きなジャンルのゲームを作る機会が得られる、ということでした。とても早い段階で、「かたわ少女」はビジュアルノベルの形で制作するという決定がなされました。以来、それを変えようという試みは一度もありませんでした。
――物語の舞台を日本にした理由を教えてください。
開 たくさんの人にとって、多くの作品で使われる日本という舞台設定はビジュアルノベルの魅力の1つなのです。異国情緒があって関心を抱かせる程度には物珍しさがありますが、珍しすぎてほとんどのプレイヤーになじみがない、というほどではありません。開発が進む中で、「現代日本の高校を舞台にしたビジュアルノベルは山ほどあるのだから、舞台設定を変えないか」という意見が一部のメンバーから出ましたが、変更するには時すでに遅しでした。
この部分がこのインタビューで一番重要なところ。私はかたわ少女を、「異文化のシナリオ・舞台でビジュアルノベルを作るとどうなるんだろう」と考えながらプレイし、その結果落胆してしまった。日本のゲームを模倣する形だったので興味が一気に失せた。「生徒会に入らないか」なんて言われても…。
このインタビューを読むと、開発チームは日本のビジュアルノベルをプレイしてそれに感銘を受けたので、ビジュアルノベルという形でこのゲームを作ったと分かる。そして感銘を受けたゲームの舞台である日本に憧れがあったと。インタビューでは「たくさんの人にとって」として語っているのだけど、おそらく開発チームも日本の舞台を魅力的と考えている。
この考え方は分からなくも無いのだけど、実は「日本人にとっては魅力が無い」と言える。インタビューにあるように、日本の高校を舞台にしたゲームはたくさんありすぎる。(エロを含むゲームは規制により「高校」と言ってはいけないのかも。学園?) それに、実際にこのかたわ少女をプレイをすると分かるのだけど、建物や空間はどこか整いすぎていて現実味が無く親近感を抱けないし、日本だということさえ感じられない。
なので、私はいっそ舞台をアメリカとかヨーロッパにして欲しかった。日本が舞台の良いゲームもたくさんあるけれども、日本の価値観に囚われていないゲームをかたわ少女に期待していた。「これぞツンデレ」なんていうキャラクターはいらないし、「涼宮ハルヒ」チックな元気が良くうるさいキャラクターもいらない。(いや、もしかしたら「涼宮ハルヒ」を登場させようとするのは海外的な考え方かも知れない。)
私は海外でビジュアルノベルを作るとどんな違ったシナリオになるんだろうと期待してプレイしてしまったのでゲームを途中で投げ出してしまったけど、シナリオ自体はなかなか良いらしい。しかし、障がい者を前面に押し出すことでゲームへの掴みを成功させてはいるのだろうけど、私はその障がい者に現実味が無いと感じている。キャラクター達が綺麗すぎる。日本のこういったゲームは現実の汚い部分を消すことで外見的に理想的な女の子を描き出している。これはこれで良いと思うのだけど、障がい者を語る時には現実味を持たせた方が良かったと思う。
かたわ少女は現在日本語翻訳が進められているらしい。私は日本語版が登場したらもう一度プレイをしてみようと思う。私には英語の表現の機微は理解できないし、もっと高速で読みたいので。