
Valveは「Counter-Strike 2」で Razer のゲーミングキーボードなどで使われている「スナップタップ」のような自動入力機能や、スクリプトを使っているユーザーを BAN すると発表しました。
Counter-Strike 2-サイドステッピングスキル-Steamニュース
Counter-Strike は常に進化し続けています。 アートを初めとして、マップ、クリエイティブなプレイ、プレイヤーのインプットまで、CS コミュニティの皆様が 本作を作り上げてきたのです。
プレイヤーのコマンドのスクリプト化や自動化に関しては、意見が分かれるところでした。しかし、時を経てジャンプスローなどのスクリプトは許容されつつあります。そのような動作は、他の方法では不可能であるためです。 実際、ゲームをプレイするうえで、ジャンプスローは重要な要素。特別なスクリプトやバインドなしでも(ジャンプ直後にグレネードを投擲すれば)きちんと行えるように工夫してきました。
Counter-Strike をマスターするためには、動作や反応速度に関するスキルを磨くことが特に重要です。
先頃から、一部のハードウェア機能により、手動と自動の入力の区別が曖昧になる状況が生まれています。そのため、Counter-Strike として何を許容して何を許容しないのかを明確に定義することにしました。
基本的なスキルを不要とするような自動化(スクリプト化やハードウェアによるもの)は、許可しないこととします。今後は、(初期の段階では、Valve の公式サーバーで)単一のゲーム入力から複数のプレイヤーアクションを自動化していると疑われるプレイヤーは、試合から追放される可能性があります。
また、想定外の違反を防ぐために、複数の動きや攻撃アクションを含むゲーム内バインドは、今後機能しなくなります(例:null バインド、ジャンプスローバインド)。
自動入力機能(例:スナップタップモード)を備えたキーボードを使用する場合は、試合に参加する前にその機能を無効にしてください。そうしなければ、試合が中断される可能性があります。
誤解がないように一応書いておきますと、試合からの追放(= BAN)で、Steamアカウントの BAN ではありません。
キーボードの自動入力機能としては Razer の一部のゲーミングキーボードに搭載されている「スナップタップ」が例として挙げられています。
「スナップタップ」については Razer 公式サイトに説明があります。下の画像が分かりやすいです。
Valve のゲームでの独特な移動システム
「スナップタップ」に言及する前に、Valve のゲームの独特な移動システムについて軽く説明しておきます。
「Counter-Strike」などに使われている Valve の Source Engine のゲームでは、キーボードで左に行こうとして「A」を押し、直後に右に行こうと「D」を押す場面で、「A」と「D」の入力が重なっている場合は動きが硬直してしまいます(=加速度0で滑る)。
Valve のゲームをプレイしてたことがある人は分かるかと思いますが、「キーを離す」というのが意外と難しいです。
左に行って右にすぐさま切り替えたいとき、「A」を押す → 「A」を離す → 「D」を押すという手順になります。やってみると難しいのが分かるかと思います。
一応正確に書いておきますと、「A」を押す → 「D」を押す → 「A」を離す、でも右に行けます。この場合は「A」と「D」が両方押されている状態が中間にありますので、キャラクターの動作としては、「左移動」→「硬直」→「右移動」となります。
Valve の Source Engine では移動キーが移動の加速として捉えられていて、小さな足場から小さな足場へをジャンプして移動する場合、「W」を押しながら前にジャンプして、着地したら速度を落としてキャラクターを停止させるために「W」を離し「D」を押して移動速度を下げて停止させるという繊細なキーボード入力が必要になります。
ちなみに、上の場面でジャンプ後に「W」を離しても「D」を押さない場合は足場で前方向に滑ります。着地面との摩擦で徐々に移動速度が遅くなりますが、小さな足場の場合は完全に停止する前に前方向に移動して落ちてしまいます。
Valve のゲームをプレイしたことが無い人は、マリオとかの氷の足場に似ていると考えてもらうと分かりやすいかもしれません。マリオの氷の足場よりは滑りにくいのですが、進行方向と逆方向に移動キーを入力して停止させる感覚です。
逆方向を入力して移動を停止させるのは「Counter Strafe」と呼ばれているプレイヤースキルです。
Valve はこのキーボード入力がプレイヤースキルであり、ハードウェアやスクリプトで再現して欲しくないと言っているということです。
Razerの「スナップタップ」とは
Razer の「スナップタップ / Snap Tap」を見てみましょう。
先ほど説明したとおり、「スナップタップ モード」がオフの場合、つまり通常では、素早く「キーを離す」というスキルが無い人ですと、左に行こうとして「A」を押し、右に行こうとして「D」を押す場合、「A」と「D」の入力が重なってしまう時間があります。
「A」と「D」が重なると硬直です。「Counter-Strike 2」では正確には加速度0ですが、Razer のサイトでは分かりやすく「停止」と表現しています。
「スナップタップ モード」をオンにすると、「A」が押されている状態でも、「D」を押したら「A」のキーを離したと判断するという事です。
便利な機能です。
繰り返しとなりますが、「キーを離す」のは本当に難しいです。特に焦っている場面では力んでしまい、意識的にキーを離すのが難しいです。また、最近は反応位置・リリースポイントが浅いキーボードも多いです。
私はこの「スナップタップ」自体は、使えば人間にとってより直感的な入力になると思います。
結構良い機能だなと思っていたのですが、Valve としては使って欲しくないと。
「スナップタップ」を使うと、実際のゲームでどのような動きになるのかを見ると、確かにチートっぽいなと感じます。
上の動画で映っているゲームの1つは「Overwatch」で、「Counter-Strike 2」と移動システムが違います。加速では無く、方向キーを押すとすぐに速度MAXで移動できるので「A」「D」を繰り返し押せば左右にちょこちょこ動けます。これは制限されても仕方が無い動きです。
後半に言及されるゲーム「Valorant」は「Counter-Strike 2」と移動システムが似てはいますが、「Counter Strafe」の効果が弱く設定されており、動画の投稿者もそんなに便利じゃないよと言っているとおり、そこまで影響が出ていません。
とても分かりやすくて良い動画でした。
Razer のキーボードでは「スナップ・タップ / Snap Tap」、Wooting のキーボードでは「ラッピー・タッピー / Rappy Tappy」と呼ばれているこの機能は、一般に「Simultaneous Opposing Cardinal Directions (SOCD)」と呼ばれています。
この機能をハードウェアでは無く、ゲーム内のスクリプトで何とかしようというのが「null バインド」です。
なお、Razer の「スナップタップ」は今のところ「Huntsman V3 Pro」シリーズに搭載されています。
それよりもまずはチーター対策をしろという意見が多い
今回 Valve の発表では「自動入力機能(例:スナップタップモード)を備えたキーボードを使用する場合は、試合に参加する前にその機能を無効にしてください。そうしなければ、試合が中断される可能性があります。」とありますので、ゲーミングキーボードにはよく付いているマクロ機能もBANの対象になる書き方です。
「Counter-Strike 2」でのオートメーションではゲーム内スクリプトはそこそこ許されてきたのですが、「複数の動きや攻撃アクションを含むゲーム内バインドは、今後機能しなくなります(例:null バインド、ジャンプスローバインド)」とありますので、ゲーム内スクリプトもほとんどが使えなくなります。
今後使えなくなるのは、下の通り。
- 基本的なスキルを不要とするような自動化(スクリプト化やハードウェアによるもの)
- 単一のゲーム入力から複数のプレイヤーアクションの自動化
- 複数の動きや攻撃アクションを含むゲーム内バインド(例:null バインド、ジャンプスローバインド)
- 自動入力機能(例:スナップタップモード)を備えたキーボード
「基本的なスキル」って何だろうという考えてしまいますが、複数の動きがダメとのことで、ゲームの "bind" スクリプトがほぼ機能しなくなります。キーの入れ替えぐらいしか使えなくなりそう。
今回のアップデート・方針そのものに対しては歓迎する声がやや多いでしょうか。
- 「ジャンプスロー」が使えなくなるのか?マジで?
- チーターは BAN しないのか?
- Valve はゲームを改善せずに BAN だけするのか
- スキルの無い初心者をフィルターできるぜ
- 高リフレッシュレートのモニターを使っているプレイヤーも BAN しろ
- Big W
- Big L
「このアップデートよりもまずはチーター対策をしろ」という意見が多いです。
Valve はチーターを排除するのが苦手で、Valve のゲームではチーター対策がほとんど行なわれません。そこへの不満を持っているプレイヤーが多いです。
Valve のゲームは他社のゲームよりもチーターが多い気がします。かなり昔は VAC (= Valve Anti Cheat) が結構機能していたのですが…。
Steam はかなり儲かっていてチーター対策に回せる資金が大量にあると思うのですが全然しません。
Steamを運営する「Valve」の従業員は2021年時点でわずか336人と少数精鋭で平均年収は2億円に上るとの試算 - GIGAZINE
私は Valve はもうゲーム開発に力を入れていないと考えています。Steamで儲けられるのでわざわざゲームを開発する必要がありません。
今回の発表では、Valve はプレイヤースキルを重視して、ハードウェアとかスクリプトでプレイヤースキルを再現するものを排除する方針が分かりました。
「高リフレッシュレートのモニターを使っているプレイヤーも BAN しろ」は意外と良い意見ではないでしょうか。モニターもハードウェアですし、高性能で高リフレッシュレートのモニターの方がゲームで有利です。
モニターを制限しなくても、ゲームのシステムでリフレッシュレートを固定することは可能です。例えば 320Hz のモニターを使っている人でもゲームの映像のリフレッシュレートが 60Hz なら、モニターの性能差があってもあまり有利になりません。
PCのオンラインの対戦ゲームではリフレッシュレートの上限を決めた方が良いかもしれません。
実はPCのオンライン対戦ゲームはハードウェアで Pay-To-Win の面が強く、高性能なPC、高性能なモニター、高性能なキーボード・マウスを持っている人の方が有利です。
さらに言うとサーバーからの距離も影響します。サーバーとのデータのやりとりの遅延が少ない方が有利です。実際のところPCのオンライン対戦って平等・公正さがあまりないです。
だからゲーム大会の会場で家庭用ゲーム機を使って、同性能のモニター画面上で対戦する方法の方が公正です。同じ性能のハードウェアで揃えられています。
格闘ゲームの大会とかはそうなっていて、コントローラーは好きなものが使えると思いますが、PCのオンライン対戦よりも遙かに公正な戦いです。
ハードウェアの性能差で勝ち負けが決まるのはつまらないですが、現実的にはPCのオンライン対戦ゲームはハードウェアで勝敗が決まることが多いです。
なお、「Big W」とか「Big L」とか何だろうと思って調べたところ、Big Win / Big Loss の省略とのこと。ヒップホップカルチャー(Jay Z)から生まれた言葉らしいです。この言葉を使っている人が多くて驚きました。