
Prime Videoで「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」を最後まで観ました。
Prime Video で配信開始されて内容を知らずたまたまこのドラマを観たのですが、かなりストレスが溜まる展開でした。
このドラマを短く言うと、狂信的なキリスト教原理主義者がアメリカ国内で新興国として作った新しい国「ギレアド」が舞台で、そこでは男尊女卑が徹底され、主人公の女性が捕まってそこでムリヤリ侍女をさせられる話です。女性の抑圧を扱った作品。
このドラマを観る人はそこから反抗して成功するのを期待すると思いますが、思い通りの展開になかなかならず、ストレスがかなり溜まります。
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」は調べてみると元々は 1985年に出版された小説が元になっているとのこと。フェミニスト界隈では有名な作品らしい。著者はカナダの女性作家マーガレット・アトウッド。
1990年に映画も公開されていて、音楽は坂本龍一が担当。
今回 Prime Video で配信された「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」は 2017年に Hulu によって作られたドラマです。Prime Video でも観られるのは有り難いです。
目次
「女性は産む機械」という世界を見事に体現している
↑シーズン2の予告編
↑シーズン5 までを一気に振り返る動画ですがネタバレです
このドラマは自民党の議員、柳澤伯夫(Wikipedia)が発言して問題となった「女性は産む機械」という言葉を見事に体現した世界観です。本当にこの言葉の通りです。
なぜ今このドラマを作ったのかと考えると、アメリカのトランプの男尊女卑的な言動が影響したのかもしれません。
原作の小説は一応SF小説に属するようで、近未来のディストピア(原作が出版された1985年での近未来なのでスマホ以前の世界です)、子供が産まれにくくなったアメリカの話です。
そこで狂信的なキリスト教原理主義者が「ギレアド」という国を作る。女は男に従っていれば良いという男尊女卑の価値観の国です。子供が産める女性は強制的に侍女になります。産めない女性は女中に。
女性で権力が強いのは「司令官」の妻です。「司令官」は男性の政府高官。この司令官の妻になると侍女と女中を意のままに操れますが、やはり司令官レベルの男性には従わなければなりません。
侍女は司令官と排卵期に性交させられ、妊娠させられます。妊娠は神の祝福と考えられており、妊娠をすれば褒め称えられますが、妊娠できないと扱いが酷くなります。妊娠しても産んだら子供とは離されます。
つまり、ギレアドでは司令官の子孫をより多く残すために、侍女が使われます。そしてそれが当然であるという常識があります。
「おば」と呼ばれる役割の女性が侍女の指導員です。「おば」ももちろんキリスト教原理主義者ですから、神の名の下に、自分の意にそぐわないと侍女に鞭を打ったり、目をくり抜いたり、指を切断したりします。
酷い「おば」になると、反抗をした侍女に対し、口をホチキスのようなもので閉じて開かなくします。
反抗をした侍女は石投げの刑にされ(聖書で有名なシーンです)、もっと酷いと首つりの刑です。しかも石を投げたり、首つりにするのは侍女にさせます。
あと、ギレアドでは女性は文字を読み書きしてはいけません。女性の頭が良くなってはいけないので文字を読ませません。文字を読むと手が切断されます。
本当に「女性は産む機械」という世界で、見事にこのままです。
溜飲が下がる場面がほぼ無くストレスが溜まる。自己中な「ホームランド」の主人公に似ている
私は Prime Video を開いたらこのドラマがあり、内容を知らずたまたま観たのですが、かなりストレスが溜まる展開です。
このドラマを観る人は抑圧された状況から反抗して、それが成功するのを期待すると思いますが、思い通りの展開になりません。
主人公の女性ジューン・オズボーンはアメリカからカナダに逃げるときにギレアド兵に捕まり、一緒に逃げていた子供と引き離されます。主人公は強制的に侍女にされます。
ちなみに侍女と女中は名前も変えさせられます。侍女は「オブ・○○」という名前です。これは所有物を表します。主人公の名前は「オブフレッド」となり、司令官フレッドに仕える侍女で、フレッドの所有物。
主人公の子供はどこかの司令官の子供になり、主人公は侍女として使えている司令官にレイプされ、子供を産まされます。
主人公は何とか自分の子供を救おうとしたり、「おば」や司令官、司令官の妻に反抗します。刑罰になる可能性があるので口答えするのは緊張感があります。
そして、「逃げるぞ」という話になるのですが、ここはちょっとネタバレになりますが、主人公は逃げ出しても最後の最後でやっぱり逃げないと言い出します。
自分を抑圧した司令官や妻を殺せる場面でも、最後の最後で殺しません。
「反抗するぞ!」→「服従・隷属」。「逃げるぞ!」→「逃げない」。「殺すぞ!」→「殺さない」。
これが何度も何度も繰り返されます。同じ事を繰り返すドラマです。
私は主人公にがっかりでした。権力者への威勢と暴言は一流なのですが、行動が伴わず、最後に服従を選んでしまいます。
抑圧から解放されるシーンがほとんど無く、ずっと負けて服従という場面が続きます。視聴者の溜飲が下がり、ストレスが発散される場面がほぼありません。
主人公は「○○したら殺してやる!」と威嚇するのですが、銃を手に持っていて司令官とその妻を殺せる状況なのに殺しません。逃げられる状況なのに逃げません。毎回毎回こればっかり。
主人公を逃がすためにたくさんの人が協力してくれるのですが、逃げません。逃がす過程で死んだ人もいますが、主人公は自分が良ければどうでも良い。
主人公の女性がかなり身勝手で、意見もコロコロ変わり、一貫性がありません。ドラマなので話を面白くするためにそうしているという事もあると思いますが、脚本が悪いですね。原作はどうなのか知りませんが。
よく映画やドラマにいる頭の悪いアメリカ人のパターンです(イディオット・プロット)。これが主役なのでストレスが溜まります。
自分が何かをしたいと思ったら、味方にも暴言を吐いて従わせる。こいつと友達になる人はいないだろうなというほどに酷い性格です。
特に親友や助けてくれた人に暴言を吐く姿勢にはうんざりします。
シーズン3では男尊女卑の中なのに、かなり優しい司令官の侍女になるのですが、この優しい司令官に対しても暴言を吐くのは性格が悪すぎますし、戦略的にも正しくありません。
「ホームランド」の女性主人公を思い起こさせます。自分が考えたことが絶対に正しく、他人の事はどうでも良いという姿勢がかなり似ています。サイコパスですね。
ストーリーが動き出すのはシーズン3から
私はこのドラマのシーズン6の最後まで観ました。シーズン6で完結です。
シーズン1~2では反抗しては失敗、毎回騙されるというシーンの連続です。かなりストレスが溜まりました。
シーズン1~2は世界観の説明で、ストーリーが動き出しません。テンポもかなりゆっくり。
観ていてストレスばかりなので、原作を知らない人はここで脱落してしまう人が多いような気がいます。
私はながら見でしたので見続けられました。しっかり観ていたら観るのをやめていたかもしれません。
シーズン3から仕える司令官が変わり、やっとストーリーが動き出します。すごく優しい司令官に仕えることになり、何度も助けてくれるのですが、主人公は敵意むき出しでこの司令官を口で罵ったりします。意味が分かりません。
本当に頭が悪いんだなぁと思ってしまう場面です。この主人公は自分の考えていることが絶対正義ですから。
シーズン2の終盤あたりからやっとカナダが登場します。これまではずっとギレアド国内の話でしたが、ギレアドとその周りの国との関係が描かれ出します。
カナダへの亡命が選択肢に入るようになり、やっとドラマらしくなってきます。
シーズン3からは最初に仕えた司令官フレッドの妻セリーナとの複雑な関係が描かれます。
あまりネタバレになってもいけませんが、セリーナも主人公のジューンと似たような経験をするようになり、心情に変化が生じます。
侍女の指導員リディアおばの心情の変化が味わい深い
個人的に楽しめたのは、侍女の指導員「リディアおば」の心の変化です。
この人も神を崇拝しており、何でもかんでも「神のご意思」「神の祝福を」と言い、侍女に「あなたのためですよ」と言って侍女を罰するのですが、本当に少しずつ、心情が変化していきます。
シーズン5~6はリディアおばがメインと言っても過言では無いです。
シーズン1~2あたりでは主人公のジューンが自分の言葉通りに動くと満足げにニコニコしていたのですが、序盤で妊娠して子供と離されたジャニーン(眼帯をしている侍女)の反抗から徐々に自分の行動に疑いを持ち始めます。
ジャニーンはリディアおばに結構素直に従っていました。ジャニーンが主人公のジューンと逃げて捕まった時も、リディアおばは「ジャニーンは悪いやつ(主人公のジューン)に騙されたのです」と味方していました。
そして司令官の若い妻エスターが反逆を理由に侍女にされた後、レイプされて妊娠したと知ったところから、リディアおばは現実を見始めます。「私がしていたことは本当に正しかったのか」と。
エスターは司令官や警備員の男を殺したいと言って、司令官の妻という立場なのに主人公に協力してくれる人物です。
エスターが侍女にさせられるシーンは観ていて本当に腹立たしい場面です。司令官パットナムが手に持ったチョコレートをエスターに食べさせるシーンがあるのですが、本当に気持ちが悪かった(Season 5 #2)。
私も思わず「きんもっ☆」と言ってしまいました。
エスターはレイプされた後に自殺を図り失敗するのですが、運び込まれた病院での検査でリディアおばもエスターの妊娠を知ることになる(Season 5 #6)。
そこでベッドで動けないように手錠をはめられたエスターが、リディアおばにレイプされたと話し、事なかれ的に対応するリディアおばに対し「出てけー!」と叫びます。
このシーンはエスターにとても感情移入できました。「凄くむかつくよなぁ」と。
これが決定的な事になってリディアおばの心情が変化し、神聖な儀式(子作りの儀式)を汚されたと言ってレイプのことをローレンス司令官に報告し、パットナム司令官に罰を与えて欲しいと頼む。
ローレンス司令官は侍女や主人公のジューンを助ける優しい司令官です。彼はこの件を政治的に利用します。そしてパットナム司令官は頭を打ち抜かれて処刑されます。
私はこのシーンがこのドラマで一番良かったシーンです。溜飲が下がるシーンがほとんど無いこのドラマで、一番溜飲が下がりました。
なお、リディアおばのその後を知りたい人は小説で続編「誓願」があり、リディアおばのことが描かれているとのことです。1985年の小説の続編が 2019年に発売というのも驚きです。長いこと人気です。
現在 Disney+ で続編のドラマ「テスタメント/誓願」が作られているようです。
反抗のための武器を拾わない不思議。主人公のエリザベス・モスは体重がかなり変わる
このドラマですごく不思議なのは、侍女達がこの国から逃げるときに警備の男を何とかして倒す場面があるのですが、その男の銃を奪わないのが不思議すぎます。
警備の男はアサルトライフルを持っているのでかなり強力な武器です。何度も銃を拾えるシーンが出てくるのですが、いつも拾いません。どうやっても銃を持っていた方が良いです。
権力者達を殺すための道具を渇望しているのにどうして銃を拾わないのか不思議でたまりません。
あと、主人公の女性ジューン(役者はエリザベス・モス)はシーズン後半、顔がパンパンの場面が結構あります。シーズン後半では顔や体型が丸くなっていきます。
「あれ、こんなに顔が丸かったっけ?」とよく感じていました。太りやすい体質なのかもしれません。
主人公はシーズン1のころから肩幅が広くて体格が良いのですが、どんどん重そうになっていき、強そうです。
お勧め度は ☆2~3 /5
「ボッシュ」「リーチャー」とかが好きな私にとっては、「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」は海外ドラマとしては結構珍しいテーマのドラマで新鮮でした。
このドラマをこれから観ようかどうか迷っている人に向けて、お勧め度は5点満点中 2~3 です。
マイナスポイントは、特にシーズン1~2はストーリー展開のテンポが遅いこと、抑圧されていてストレスを感じること、溜飲が下がる場面がないこと、主人公の行動に一貫性が無くて身勝手なこと。
真面目に観ていると禿げる…とまでは言いませんが、結構イライラする場面が多いです。抑圧されている場面はもちろんのこと、主人公の行動に一貫性が無いところもイライラさせられます。
シーズンの終盤にならないと反抗が成功しませんので、スッキリ気持ち良くなりたくて観るドラマではありません。シーズン1~2は本当にずっと抑圧されます。
良いところは、映像が綺麗で世界観・舞台・小道具の作り込みが良いこと。リディアおばに最初はイライラしますが、だんだんと味のあるキャラクターに思えてくること。
撮影美術は良く出来ていて、重厚感があります。特徴的な赤い服装、白い帽子、ショッピングモールも良いですね。ショッピングモールはとても未来的なデザインです。
このドラマと日本のドラマを比較すると、日本のドラマの陳腐さに泣けてきます。ほぼ同時に Prime Video で配信開始された「VIVANT」を観てみたら、何もかも本当に陳腐で愕然としました。
過去に話題になったドラマですが、私は1話の序盤で観ていられませんでした。続編も話題ですが私は観ることは無いでしょう。
あと、テーマが女性の抑圧ですので、フェミニズムとかその手の話が嫌いな人には合わないでしょう。似非フェミニズムでは無いのですが。日本人は意外と男尊女卑の人が多いようで驚きます。
女性向きのドラマではあると思いますので、女性の方がこのドラマを高評価するのかもしれません。
テーマは私にとっては新鮮でしたが、ドラマとしては抑圧ばかりでストレスが溜まり、そのストレスを発散する場面がほぼ無くて、そこまで面白いと言えない、お勧めも微妙なラインという、そんな作品です。

























